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エピローグその1 わけあってTSした少年 2年生になってもバレーボールを続ける?

 4月某日早朝。今日は始業式があり、書類上では4月1日かららしいのだが、気分の上では今日から高校2年生となる。

 

 そして俺個人としては1ヶ月超ぶりに自宅(シャバ)で迎える朝でもある。

 

 やはり同じ睡眠時間でも自宅の寝慣れた場所の方が熟睡できる。

 

「すぅ……すぅ……」


 ……まあその『寝慣れた場所』が俺の部屋の俺のベッドではなく、(陽菜)の部屋の(陽菜)のベッドでおまけに隣には無防備に(陽菜)が寝ていて、自分は(陽菜)と色とサイズが違うだけの寝間着を着ているということに疑問を覚えないわけでもないが……

 

 ちなみに陽菜のベッドで寝ることは別に珍しいことじゃないどころか、残念なことに慣れたレベルで日常になっている。

 

 が、別に毎日一緒に寝ているわけでもない。精々週5日、少ない時は週3日くらいだ。もっとも陽菜と一緒に寝てない時は自分のベッドで寝ているのかと言われればそうではなく、長姉(涼ねえ)のベッドで長姉(涼ねえ)と色とサイズだけが違う格好をして長姉(涼ねえ)と一緒に寝ているというか、一緒に寝ましょうという誘いという名の脅迫を受けているというか……

 

 俺の記憶が確かならもう半年以上、俺は自分の部屋のベッドで1人で寝ていない。

 

 なお、なんで俺にお揃いの格好をさせて一緒に寝たがるのか2人に聞けば『可愛いから』と返され、俺というか男と寝ることに忌避感とか危機感とか恐怖感はないのかと聞けば『なんで?』と返される始末。もはや涼ねえも陽菜も俺を完全に『女』、もっと言えば『手のかかる末妹』だと思って生活している節がある。……『手のかかる末妹』であって『着せ替え人形』ではないと信じたい。



 さて、自分の置かれている悲しい生活環境はひとまず横に置き、顔を洗って着替えて学校に行かなくては。なんせ今日は1ヶ月以上ぶりにバレー部の部活動に参加できるのだ。

 

 

===========


 なぜ俺が1ヶ月以上自宅で朝を迎えられなかったか。

 

 それは3月上旬のとあるマラソン大会で人類最速記録を出した(やらかした)ため、1ヶ月間よくわからん研究施設?に監禁されていたからだ。


 なんでマラソン大会に出ることになったかと言えば、それは春高が終わった1月までさかのぼる必要がある。

 

 3ヶ月前の1月上旬、俺達は高校バレーボールの一大イベント、全日本バレーボール高等学校選手権大会、通称春高バレーで幾多の幸運に恵まれ準優勝という結果を残した。

 

 これは本当に偶然の産物でしかなく、例えば抽選会からやり直してもう一度決勝まで勝ち残れるか、と言われればNOといえるくらい奇跡の結果だ。

 

 が、周りはそんなことを思っておらず、部員全員が1年生だったこともあり、

 

「夏のインターハイこそ全国優勝」


 という勝手な期待もされている節がある。

 

 この期待は凄まじいものがあり、3学期に入ると同時に老朽化した第2体育館を俺達バレー部のために改修する工事が始まったくらいだ。工期は3ヶ月で新学期、新入生を迎えると同時に使えるようになるらしい。

 

 だが、そんな周囲の期待とは裏腹に、松原女子高校バレーボール部は3学期の始業式を迎えた日に再び部員割れの危機となった。

 

 理由は単純。バスケ部の助っ人3人のうち、未来と歌織が再びバスケ部に戻ってしまったのだ。

 

 まあこれは仕方あるまい。もとよりウィンターカップ、もしくは春高までというルールで合併したのだ。

 

 未来は当然として、歌織は「離れてわかった。私は自分でも思っている以上にバスケが好きみたい」なんて言ってバスケ部に戻った。中身はめっちゃ乙女なくせしてイケメンなセリフだ。

 

 ちなみに愛菜は「どっちのスポーツにしても強いこだわりはないけど、全国で後一歩のところまでだったのよ?悔しいじゃない?」なんて大義名分で残ったが、正直、俺の身体目当ての様な気がしてならない。

 

 い、いやせっかく残ってくれた愛菜を悪く言うのは止めよう。愛菜が残ってくれたおかげで最悪ユキをリベロでなく通常の選手として使えばギリギリ6人となり試合ができる。ユキの低身長ではスパイクとブロックは絶望的な感じだが……

 


 

 なお、余談ではあるが、復活したバスケ部は未来と歌織の2人だけではなく、1学期の中間・期末テストで壊滅的点数を叩き出してしまった2年生の朝岡先輩も加わり3人でのリスタートとなっている。その朝岡先輩は2学期では全教科平均点以上という成績を残したことで親から部活動禁止令を解いてもらったようだ。

 

 さらに余談だが、うちの部長(どっかのバカ)が「それじゃバスケ部じゃなくて3ON3部じゃない!」と発言して未来と盛大な大喧嘩(ガールズトーク)を始めたりしている。

 


 で、そんなわけで新・バレー部、バスケ部は新たに活動を始めたんだが、練習を重ね始めた1月の中旬にその事件は起きた。

 

 俺の地元は決して豪雪地方なんかではない。そりゃ一冬あたり1~2回降ることはあるが、精々1回あたり数cm積もれば凄い方。ところが今冬はドカンと降った。しかも2週連続。

 

 この『2週』連続というのがポイントだ。

 

 最初に降った雪が溶け切らず、体積を減らして中途半端に氷の塊になりつつあるところに2週目にどっかりと降ったのだ。そうなると雪と氷の塊になったそれはとても重くなったのだろう。んでその重さに耐えきれなくなった松原女子高校の第1体育館の天井が一部崩落した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 いや驚いたね。

 


 公共交通機関は全部動いていたとはいえ、俺達の地元にしては大雪が降る中、「センター試験日にこんな大雪なんてエリ先輩達は運が悪い」なんて言いながらいつも通りの時間に集合し、いつも通りに練習をした土曜日。


 「おいおい2週連続で土曜日に雪が降ると大物の洗濯物が干せないじゃないか」と家で陽菜と愚痴りながらやっぱりいつも通りに練習をした次の週の土曜日。

 

 間に部活ができない日曜日を挟み、翌週の月曜日に朝練のために第1体育館に入ると天井の一部が抜けていた。

 

 言っちゃ悪いが崩落したのが誰もいない日曜日でよかった。これが授業で体育館を使っている最中だったら大事故の可能性があった。

 


 

 

 

 で、そうなると第1体育館も使えない。すぐに見積もりを取って修理を依頼するも、何とか4月の入学式には間に合うというレベルだった。

 

 当然、体育館を使った部活はできず、その練習内容は大きく制限されることになった。春高での活躍と体育館の惨事を聞いた松原市からは善意で近くの市営体育館を予約の入っていない時間帯に限り無料開放してしてもらったが、どうしても移動に時間がかかる上に毎日使えるわけでもない。市営体育館だって他の利用者がいるしな。

 

 

 

 

 そんなわけもあって、もとより体幹トレーニングや筋トレを重視していた俺達は4月まで『筋トレ部』と思われかねない程、屋外での体力強化のメニューを中心に取り組むことになった。

 

 ……誤解されない様に言っておくが本当にボールに触らない日が出るわけではない。特にレシーブは散々春高で課題だと痛感させられたから対面レシーブ練習をするしな。

 

 ただ、どうしても屋外だとフライングレシーブなんかはできないし、風でボールの軌道が変わるのは練習ではいいかもしれないが体育館ではありえないから活きたボールという意味では微妙ではある。

 

 が、真正面からでも全国クラスの強打をまともにレシーブ出来るのがユキ1人という悲惨な状況である我が松原女子高校バレーボール部ではまずは正面ならちゃんとレシーブできるというレベルに引き上げなくてはいけない。まあそれでも走り込みとかの量が増えてはいるんだが……

 

 

 

 

 

「優莉君は何か不満があるのかい?」

 

 確かあれは1月の最終日曜日だったか。いつものように高額日給につられて山下さんのところでバイトをしている最中、バレー部の現状を嘆いたらそんなことを言われた。

 

「不満というか目標が無くなったんですよね。本当は2月中旬に新人戦があってそれに向けて練習してたんですけど、体育館が満足に使えないからそれも出れなくなっちゃって……」


「?2月に新人戦???あぁ。バレーボールは1月まで3年生が残る場合もあるから新人戦が2月にずれ込むのか」

 

 あ、そっか。

 普通 (?)の競技は大抵3年生は夏に引退で、新人戦は秋に行われる。が、バレーボールはチームによっては1月まで3年生が残り、俺達の県では高校バレーボールの新人戦は2月に行われる。

 

「まあそれはさておき、目標がなくなった、か。う~ん。僕個人としては体育館が使えなくなったことをプラスに考えて基礎体力の向上に当てるのは間違ってないというか、むしろ正解だと思うよ。

 君達の練習メニューは僕が考えて教えたのを基にしているから当然僕も知っている。そこから察するに、君達の単純な身体能力は優莉君とあと一人、村井君だっけ?彼女もオマケしよう。

 その2人を除いたら『全国レベル』ではあっても『全国トップレベル』の身体能力とはいえない。マスコミの反響もあるから4月に新部員が1人も入ってこない、なんてありえない。それを考えるとなまじ今のメンバーで連携を強化するより、正しく戦えるメンバーでチームプレイは強化したほうが効果的だし、本気で夏のインターハイを制する気があるなら基礎体力はもっと向上させないとダメだよ」

 


 おうふ……

 

 結構みんな追い込んでると思うんだが、まだまだだったのか……

 

 まあそれならそれで仕方ないとしても、だ。

 

「せっかくの目標がなくって、次の公式戦は6月。後半年近くあるんですよ。なんというかこう、テンションが……」


 我儘と言わないでほしい。つい最近まで春高という明確な目標があって、その後に『バスケ部の力を借りなくてもどこまで戦えるか』を試す新人戦という目標があった中でこれなのだ。正直、ただ走り込んでもつまらない。

 

 

「う~ん。だったら何か目標があればいいんだね。だったら、これに出てみる?」


 そうして差し出されたのは1枚のチラシ。なになに『都内観光マラソン』?

 

「東京都内の主だった観光名所をぐるりと巡るマラソンだよ。国際的にも認められた大会で世界トップランナーも出るけど一般参加も認められている。タイムも公式記録として扱われる由緒ある大会だね。

 キー局で放送もされるくらいものすごい人気のあるレースで、本来一般参加者は13倍以上の倍率で当選しないと出場できないんだけど、ここの組織権力を使えば1人くらいは押し込んで出場できる」



「……ただ走るだけですよね?なんか盛り上がりません」

 

 別にマラソンを馬鹿にするつもりはないし、ただ走るだけというのも嫌いではないが、大昔に死にかけながら走りまわった記憶があるのでどうにもテンションが上がらない。上がらないのだが……

 

「そうか。じゃああまり良くないけど、もので釣ろうか?この前連れて行ったホテルの中華ビュッフェ、随分気に入ったみたいだから、マラソン大会で3時間半以内で走ってくれたら1回、2時間半以内なら2回。優勝したら3回、世界記録を打ち立てたら5回好きな時に連れて行ってあげるよ。これでどう?」

 

 

 いやいや。いくらなんでもそんな餌に釣られ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちゃった。てへ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なお、後日俺がこの『都内観光マラソン』に出るといった時の松原女子高校の体育教師、田島先生の嬉しそうな顔ったら……

 

 ついでに走る服装を決めていないといったら型落ちして今は使われない昔の松原女子高校陸上部のユニフォームをくれた。型落ちしたといっても4年程前までは使われていたもので悪いものではないんだが、如何せん胸元に松原『女子』と書かれているのが……

 

 下着はもう慣れたし、トイレも普通に青ではなく赤い表示のされている方に入れるようなったし、スカートもだいぶ慣れたが、こう直に『女子』って言われるのは未だに慣れん……

 

 

 そう、俺は『女子』というくくり扱いされることに慣れていないのだ。だから都内観光マラソンを走る際に山下さんがやれ優勝だの、世界新だの言われた際に、当然男子で、と考えるのは仕方ないことなのである。

 

 

 

 

 ついでにこの『都内観光マラソン』は3万人以上が走るモンスターイベントであり、如何に山下さんの国家権力(パワー)をもってしても無名の女子高生がいきなりスタートライン付近に立てるわけではなかった。

 

 当日はマラソン初参加の無名状態というわりにはそれなりに前の方に配置されたが、それでも前には数千人、スタートラインまで100m以上離れている。だからかスタートの号砲が鳴ってからスタートラインにたどり着くまでにゆうに5分はかかった。

 

 

 ……知らなかったんだよ!確かに走る前に靴にICチップが組み込まれたタグを仕込んださ。で、これで各地点の通過タイムを計測できるって聞いてはいたさ。でも、タイムもスタートラインを通過してから計測されるなんて知らなかったんだよ!

 

 

 だからスタートラインにたどり着いた時点で5分以上経過していたことで

 

“世界トップランナー相手に5分以上先行かせてからのスタートでここから優勝しろとか無理じゃん。山下さん俺に中華おごる気ないな。ふざけやがって。それが勘違いだって証明してやる”


 と勘違いしてキレた俺のどこが悪い?

 

 この後、半分キレたまま人の山をかき分けて進み、ある程度以上、人とあたらなくなったくらい進んだところから加速。1位のランナーを追うことになった。

 

 

 

 

 で、結論を言おう。最終的には42キロ過ぎで先頭にようやく追いつき、最後の最後は追い抜いて勝った。俺的にゴールタイムは2時間5分くらいのはずだったんだが、公式タイムはスタートラインを通過するまでに6分23秒あっただとかで1時間58分という記録を出してしまった。

 

 

 ちなみに後日陽菜に聞いたところだと、TVでアナウンサーが「松原女子と書かれたユニフォームを着ている少女は何者なんでしょうか!凄まじい速度でついにトップ集団を――」とか困惑しながら阿鼻叫喚の実況をしていたらしい。

 

 

 

 アナウンサーが混乱するくらいの珍妙な記録を全国放送されるレースで出してしまったからさあ大変。その日、その場から1ヶ月間よくわからん研究施設に監禁刑となってしまった。

 

 

 不幸中の幸いともいうべきことに俺の生体データは8月から半年近く山下さん達が取っていたのでドーピングの疑いはすぐになくなったが、代わりに『ドーピングをしていない人体として異常』ということで一ヶ月間、色々検査を受けることになった。

 

 勘違いする奴がいると困るので言っておくが、全て合法的で健康的、かつ身体を害するようなものはなかったといっておく。

 

 

 遺伝子だなんだの調査は8月からやっているので一ヶ月間は主に「どこまで負荷をかけられるのか」が中心だった。要するに修行の日々ですよ。毎日アホみたいに走ったり、跳んだり、重たいものを持ち上げたり……

 

 

 ……あれ?健康的?普通だったら拷問レベルの強度だった気が……

 

 

 

 い、いやこうして五体満足なんだから気にしたら負けだ!

 

 

 その間、学校も休むことになったんだが、そこは配慮して(?)別途各教科の個別授業を受けれた。

 

 3学期の期末テストは受けれなかったが、全教科で俺に忖度した成績をつけてくれた様だ。具体的には全教科で評価上は陽菜に勝った。ざまぁ。

 

 いや、実力でも勝てるが勝負を仕掛けるまでもないということだ。うん。実に素晴らしい。

 

 

 

 

 一方で問題もあった。あの施設での一ヶ月は碌な娯楽もなく、なんか変な器具をつけたり、撮影されながらひたすら運動、もしくは個別につけてくれた教師とのマンツーマン授業の2択。数少ない娯楽は食べることと寝ることというまさに缶詰状態だったわけだ。

 

 俺が解放されたのは「とりあえず緊急に調べたいことは調べられたし、明日から新学期だから学校生活を満喫してほしい」という理由だったりする。非公式とはいえ、100m走で9秒台の記録を達成した辺りで「あ、こいつはアカン奴だ」と匙を投げられたようなだけな気もするが……

 

 

 なお、これからも月に1回程度は丸1日をかけて検査をされるらしく、学校が長期休暇に入ればそれはそれで泊まりで検査をされるらしい。一応任意ではあるが、バイト代も出るのでなるべく参加することとしよう。

 

=================



「ふっ!ぬっ!」


 始業式の早朝。俺はさっそく久々のバレー部の朝練に参加すべく着替えをしている最中。なお場所は陽菜の部屋。

  

 ……深い意味はない。下着も制服も練習着も俺の着替えは全部陽菜の部屋にあるんだから仕方ない。

 

 俺の部屋にある着替えと言えばどう見ても家庭用洗濯機では洗濯できないだろうという衣服とは呼べない衣装か、あるいは季節外れの夏・秋・冬物の衣類かである。なお、季節外れの衣類については陽菜のもあったりする。俺の部屋は物置じゃないんだけどなあ。



 まあそれはさておき、ブラウスのボタンが!

 

 いつものように上からボタンを留めていこうとすると、第1ボタンは問題なかったんだが……

 気合の声と共に何度かチャレンジして無理やり第2、第3ボタンは留められた。が、限界感は半端ない。絶対にサイズがあってない。そんなバカな。このブラウス、少なくとも3月頭までは普通に……まあ去年の4月頃とかと比べるとだいぶぱっつり感はあったが……着れたんだぞ?

 

 たった一ヶ月でそうそう……

 

 ……

 

 

 そーいやこの一ヶ月間、拉致監禁状態でストレスがあったせいか、それとも運動量が半端じゃなかったせいか割とすげぇ食ってたな……

 

 ぶっちゃけ毎食玲子クラスかそれ以上……

 


 

 ひょっとして太った??

 

 

 いやいや。お腹周りとかむしろこの一ヶ月で腹筋もやりすぎたくらいでふっくら柔らかめのお腹がちょっと筋張り細くなっているくらいだぞ?

 

 

 

 

 

 ……

 

 

 

 はぁぁ……

 

 

 

 

 バカらしい

 

 

 

 年頃の乙女じゃあるまいし、大人しく太ったという事実を受け入れよう。食ったら太る。当然だ。

 

 

 下着とか衣類とかは施設で拉致監禁されていた時は支給品を身に着けていて、自分で買ったり選んだりしたものじゃないからわからんかったが、そうか食い過ぎて太ったか……


 

 

 だいたい、あそこで支給してもらった下着は米国製の最新スポーツ下着とやららしいんだがサイズ感が日本と違い過ぎてわからん。だから肥えたことに気が付かんかった……

 

 まあ、いつもつけている高性能なはずのスポーツブラよりさらに性能がいいことは動いて実感しているがネットで調べるとブラ一枚でお値段140ドル……

 

 

 何枚かパク――もとい譲ってもらって本当に良かった。あんなもん学生がポンポン買えるような代物ではあるまい。

 


 さて、ブラウスどうするかな?何とか無理やりボタンを留めたが、生地に全く余裕がない。

 

 他に適当なブラウスを見繕うという作戦に出たいが、松女指定のブラウスは一見ただのブラウスに見えるが袖に刺繍がしてある。つまりその辺のブラウスでは代用が出来ないのである。

 

 

 

 気合を入れて無理やりボタンを留めて、上からベストを羽織ればイケるか?

 

 

「優ちゃん、何やってんの?早く着替えて練習に行こうよ」



 俺がどうするか考えていると、俺より遅く起きて、俺と入れ替わりに顔を洗っていた陽菜が戻ってきた。

 

 

 

「実はこの一ヶ月で太っちゃってブラウスがぱっつんぱっつん」

 


 

 

 ごまかしても仕方ないので正直に言う。

 

 

 

 すると陽菜は深いため息をついて一言。

 

 

 

「まあ昨日一緒にお風呂に入った時からそうだろうとは思ったけど……優ちゃん。今から万歳して」



 ????

 

 まあとりあえず言われた通りに万歳をしてみる。


 

 すると陽菜が俺の背後から俺の人並み以上ではあるが、陽菜と比べると残念なくらい小ぶりな塊を鷲掴み……

 

 

 

 

 

 

 あれ?おかしいぞ?

 

 

 

 今までなら陽菜の手のひらに収まるはずなのに今日はこぼれてる?

 

 

 

 そのまま鷲掴みしたまま陽菜が衝撃の一言を呆れながら放つ。

 




 

「あのさ。こんなでっかい塊を二つもぶら下げてSサイズのブラウスのボタンが留まるって本気で思ってるの?」

 

 

 

 

 

 本作はこのお話を含めて後3話で終了予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 今日(9月25日のニュースで)ベルリンマラソンで2時間1分9秒!優ちゃんが2時間切っているのはね)そもそも女子マラソンは2時間17分ちょいれ!どれだけぶっ壊れてんやろ!
[一言] 転生ではなくて物理的に性転換した作品で(ミスタークリス)というのがありましたね。これは脳以外事故で損傷した日本の情報機関のエージェントの脳を脳死した美女に移植したのが主人公です。この作品では…
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