表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/117

100 入場

 部屋に入った瞬間、オレは二つの宝石を見つけてしまった。まるで満天の星空を切り取ったようなドレスに身を包んだアリスと、燃えるような情熱的なドレスを着たコレットの二人。


「二人とも、綺麗だ……!」

「ジル様、ありがとうございます!」

「おう、あんがとな!」

「なあ、マヌーケもそう思うだろ?」


 オレは隣に立つ男子に話を振る。コレットのパートナーとなったクラスメイトの少年だ。とても興味なさそうな顔をしている。


「ん? ああ、そうだな……」


 コレットには目もくれず、適当に呟くマヌーケ。なってないなぁ。


 噂では、マヌーケはジャンケンに負けてコレットのパートナーになったらしい。散々周囲に自分は不幸だと嘆いていたようだ。


 まぁ、今のコレットを庇ったりしたら、お前もコレット派なのかといじめの標的になりかねないからね。マヌーケ君も辛い立場かもしれないが、こんな奴の隣にコレットを置いておけない。アリスとダンスをしたら、即コレットをダンスに誘って、そのままマヌーケの隣には返さないようにしよう。


 マヌーケ君は一人寂しく舞踏会を楽しんでくれたまえ。マヌーケ君はコレットを嫌っているから、きっと感謝してくれるだろう。


「アリスはいつでもかわいいけど、今日のアリスはとってもセクシーだね。見違えちゃったよ」

「もう、ジル様ったら。恥ずかしいです」


 アリスとじゃれ合いながら、オレたちはそのまま部屋で順番が呼ばれるのを待っていた。貴族の舞踏会だからね。会場に入る順番も厳密に決まっているのだ。


 オレとアリスは仲良く会話しているが、コレットとマヌーケ君は無言で時を過ごしていた。なんだかギスギスしているね。


 その後、比較的早い順番でコレットたちが呼ばれ、部屋を出て行く。


「じゃあ、また後でな」

「おう!」

「コレット、いつものように大股で歩いてはいけませんよ。テストはもう始まっているのです」

「わぁーってるよ」


 しずしずと歩き出したコレットの姿にマヌーケ君がギョッとしていた。だが、コレットの実力はこんなものじゃないぞ? 存分に驚くといい。


「コレット、大丈夫でしょうか……」

「まぁ、なるようになるさ」



 ◇



「ジルベール様、アリス様、出番でございます」


 その後、呼びに来たメイドに従って部屋を後にする。


「ジルベール・フォートレル男爵。並びにその婚約者、アリス様のご入場です!」


 バリトンボイスの司会役の声と共に舞踏会の会場へと入ると、そこにはたくさんの生徒たちが既に集まっていた。オレとアリスの出番は、思ったよりも最後の方だったようだ。


 まぁ、オレは現役の男爵だからね。オレより身分の高い者はそういない。聞きかじった話だが、貴族の子どもたちは、親の貴族位よりも二つ下の貴族位を持つと見做されるらしい。例えば伯爵家の息子だったら、二つ下の男爵位相当として扱われるようだ。


 いつもなら気にしないような序列だが、こと舞踏会は序列にうるさい。序列によって行動も変わってくるから要注意だ。


 しかも、先ほどアリスの言葉にもあったように、この舞踏会こそが礼儀作法のテストという側面がある。会場では、先生たちが生徒たちの礼儀作法に間違いがないか目を光らせているのだ。


「アリス、行こうか」

「はい!」


 多くの人々に見られて、一瞬の緊張が走る。だが、オレは己を奮い立たせるようにアリスをエスコートしながら会場に入場した。いつもは質実剛健なイメージの会場なのだが、今日ばかりはかなり豪華に飾り付けられている。


 たぶん魔法の明かりなのだろう。蝋燭のように揺れたりしない確かな明るさと、頭上でキラキラ輝くいくつものシャンデリア。大きな会場のそこかしこは布で飾られて、観葉植物まで飾られている。なんだかとても優雅なおしゃれ空間になっていた。


「すごい人数ですね……」

「今日は上級生も一緒だからね」


 アリスと一緒に壁の傍に立つと、侯爵の子どもや公爵の子ども、そして王族であるエグランティーヌとエドゥアールが入場する。


 エグランティーヌのパートナーは、クラスメイトたちの満場一致でコルネリウスに決まった。コルネリウスは人当たりもいいし、武術の腕も立つ。それにエグランティーヌの騎士だ。彼以外にエグランティーヌを任せられる相手はいない。それがクラスメイトたちの総意だった。


 視線の先で、コルネリウスが優雅にエグランティーヌをエスコートしている。さすがはコルネリウスだな。こんなに多くの人々に見られているのに、いつも通り緊張していないようだ。すごいね。


「パラディール王国第三十六代国王陛下の入場です!」


 その瞬間、これまで拍手で入場者を迎えていた会場のみんなが一斉に跪いた。


 さすがに王様は拍手で迎えるのは失礼になるのでは? ということらしい。面倒だけど仕方ないね。


「皆、頭を上げてくれ」


 よく通る渋い声が会場に響き渡る。王様の声だ。だが、誰も身動き一つしない。


「皆、頭を上げてくれ」


 再度、王様が声をあげる。しかし、誰も動かない。


 決して王様を無視しているわけじゃないし、いじめているわけじゃない。これも礼儀作法の一環なのだ。オレにはよくわからないけど、頭を下げ続けることによって、敬意を表しているらしい。


「皆、頭を上げてくれ」


 三回目になり、会場のみんながバッと顔を上げる。


「お許しください、陛下。皆、陛下のご威光に心を打たれていたのです」

「許そう。今宵は王国の繁栄を祝う式典だ。皆、楽しむがいい」


 バリトンボイスの司会の言葉に王様がそう返す。


 なんだかやらせ感が否めないが、これがこの国の礼儀作法だ。

お読みいただき、ありがとうございます!

よろしければ評価、ブックマークして頂けると嬉しいです。

下の☆☆☆☆☆をポチッとするだけです。

☆1つでも構いません。

どうかあなたの評価を教えてください。


本作は3月24日に発売予定です。

よろしくね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ