18.過去へ2
今頃こういうの書くの?と思われるかもですが、残酷な描写があります。
「え、」
私はセンのまさかの行動に呆然とする。
そこに居た周りの人達もそうだ。
センともう1人を除いては。
「上手くいったようだな。」
剣を収めた男は平然と言い放った。
「あぁ、まさかこんなにも上手く行くなんてな。」
センはそう言うと、ナイフについた血を振り払った。
そうか。この2人。グルだったのか。
しかもこんなに堂々と殺しをするなんて…王からの指令っていうのも嘘か。
私がそう思っていると、
「あ、あ、あぁっ!!」
神父の奥さんは、あまりの衝撃的な光景で涙を流すが、上手く言葉が出ない様子だった。
「ママ? どうしたの?」
と影で母に守られていた子供が顔を出す。
そこには事切れて目と口が半開き、首から大量の血を出している父が横たわっていた。
「…っ! うわぁーん!!?」
子供はそれを見て一瞬ビクッとすると、大きな声で泣き出す。
「ちっ!うるせぇな!!」
とセンは近くにあった長椅子を蹴り上げる。
それでも子供は泣く事をやめない。
「はぁ。子供はいらねぇか?」
センが騎士に聞くと、
「いらねぇだろ。こんなに泣いてたら面倒だ。」
「だよなぁ。」
センはニヤリと笑いそう言うと、子供の顔を目掛けてナイフを投げる。
危ない! そう思った私はその子供の前に立つ、がナイフは私の身体をすり抜け、子供に、
当たらなかった。
その代わり、奥さんが子供の身代わりになってお腹を貫かれた。
奥さんは子供の前に横たわると、
「ソ、ソーマ。ごめんね、不甲斐ないママで。」
そう言った後に、眠る様にして息を引き取った。
「マ、ママ?」
子供は母親の身体を揺すった。
「外してんじゃねぇーよ。バーカ。」
「うっせ! しょうがねぇだろ!」
男達は笑う。
「ママ。ねぇ。起きてよ。」
子供は揺らすのをやめない。
「うっせぇな! ガキ!」
センは子供を蹴り飛ばす。
「うっ…。」
子供は祭壇の近くまで飛ばされる。
「はははっ!! って、おい! バカ野郎!!」
騎士は何かに気づいた様に走り出す。
「あぁ?」
センは首を傾げる。
あれは…!
子供の目の前には、ドス黒い宝玉があった。
「パパ…。ママ…。…もういい……全部…無くなれ!!」
子供が目から涙を流し、顔に悪魔の顔を宿した様な顔で混沌の宝玉に触れる。
「クソっ!!」
騎士は子供を斬ろうとした。その瞬間、黒い波動が教会中に広がる。
1番近くにいた騎士は剣や鎧などと言った身に付けてる物が消えた。そして、肉が無くなった。
「っ!!」
これを避けることが出来たのは、教会の扉近くにいた1人の住人。そしていち早く危険を察したセンだけだった。
「なんだよ! これ!!」
しかしセンの指は、黒い波動に少し触れた為に身体の一部が少しずつではあるが、崩れていく。
「ぐっ!」
センはまだ隠し持っていたナイフで、指を切る。
「あ、あぁ!!」
逃れた住民は自分の崩れた身体を眺め、発狂して何処かに行ってしまった。
あの人がメモを残した人かな…。
私はポケットに入れたメモを取り出す。
"あの裏切り者を絶対に許すな!! アイツのせいで俺達は…もう時間がない。誰でもいい…街を救ってくれ"
こんな感じで書かれてたのかな。
私はポケットから出したメモを、もう1度しまう。あの人がこのメモを残してくれた人か…。あんな状態でも書いてくれたのか…ありがとう。
「チッ!混沌の宝玉は今回は諦めるか…。」
センはそう言うと街から出て行った。
そして街は謎の霧に包まれた。霧に包まれた直後、ドンドン木が黒く染まる。
混沌の宝玉から出た霧は、街の人々を徐々に蝕んでいった。肉が少しずつ溶け、街から出ようとすると身体を灰にした。
その霧は人々をゆっくりと死に追いやった。
最後の1人が死んだ瞬間、空間が歪んだ。
目を開けると、私達は現実の霧の街へ居た。
私の前で黒いモヤが明滅する。
「…貴方は私に何でこれを見せたの…?」
私は黒いモヤに手を伸ばす。
(僕の過去を見て欲しかった。)
「今のは、貴方?」
(そう。僕は混沌の宝玉であって混沌の宝玉ではない者。)
「何を言ってるの?」
(僕は一時の怒りで、街の未来まで消してしまったバカな奴だ。お願い。…僕を止めて。)
黒いモヤが大きく膨張する。
「「「ゔぉぉぉー!!」」」
その声は、幾人もの悲鳴が重なった様な鳴き声をあげた。決して大きくはないその鳴き声は、空間に響き渡った。
それは教会の周りの壁を吹き飛ばし、私達に襲いかかった。
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