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「ひとまず、願いを9つにしてくれ」「オッケー!」  作者: ラボアジA
第五章 メガネにさよなら

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「存分に取り立ててください」

 日も大分落ちてきたころ、僕は川科真子の家の近くにある公園で、真子に電話を掛けた。


「もしもし真子さん! 今、大丈夫ですか!?」

『は、はい、大丈夫です!』


 焦ったように呼び掛けると、真子も焦った口調で返事をした。


『あの、何かあったんですか』

「ええ、あったなんてモンじゃありません……。マズイですよ、眠ってた人達が、続々と起きてるらしいです!」

『えっ!?』

「さっき病院前を通りかかったら、やたら騒がしかったんでちょっと聞いてみたら、患者さん達が起き出したとのことで。多分今は、100人ほど起きてるんじゃないですか」

『ひゃ、ひゃくにん……!』


 電話越しでも、呆然とした真子の表情が手に取るように分かる。


「すぐに対策を練りましょう。僕も急いでそっちに向かいます」

『は、はい』


 さて、これで真子に伝えた。僕は電話を切ると、じんわりと額を伝う汗を拭った。

 真子には三分の一が起きたと伝えたから、「ターゲットにした連中全員が寝ている」とは絶対に思わない。そんな楽観的な少女ではない。

 僕は、控えていた20人ほどの悪魔達のほうを振り向いた。


「皆さん、お待たせしました。エヴェレットの奴から、存分に取り立ててください」


 各々が怒号とともに、素早く川科家へと飛んでいく。

 再度真子へ電話を掛けた。今度はすぐに出る。


「僕は病院から走ってます! そっちの様子はどうですか!?」

『あの、悪魔さんが……』

『おお、大輔殿! おヌシも真子殿を説得してやってくれ』

「と、言いますと?」

『実はのお、こうなった以上、眠り病から続々と起きてしまうから、早く災害を起こしたほうが良いと思うわけじゃ。じゃから、真子殿にそれを願って欲しいのじゃよ』

「ちょ、ちょっと待ってください! 僕らが市内にいるんですよ!?」


 僕は慌てたような声を上げる。


「認めるわけないじゃないですか!」

『大丈夫じゃ! おヌシと真子殿は不死がある!』

「家族はどうなるんですか!?」

『それは……、な、なんじゃおヌシら!?』


 電話越しに、さっき指図をした悪魔達の罵声が聞こえてきた。アミエルの直接の顔なじみではなく、いわば「顔なじみの顔なじみ」なので、関係性はすぐには見破られないだろうとはトフォリの言だ。

 エヴェレットが悪魔達にかかりきりになったため、再び真子が電話に出た。


『あの……本当に、起きたんですか?』

「ええ。今、すごい勢いで悪魔達が向かってましたけど、それって眠らせてた悪魔達ですよね!?」

『あぁ……』


 僕が駄目押しをすると、真子の、落胆とも溜め息ともつかない声が漏れ聞こえた。

 電話越しに、エヴェレットの『払うわい、払ってやるわい! あとでもう一度参加したいと言っても入れぬからな!』という捨て台詞も聞こえてきた。それとともに、悪魔達の声が小さくなっていく。

 ――頃合いか。

 ぞろぞろと悪魔達が外に出てきたのを見て、僕は気を引き締めた。


「あ、今近くの公園まで来ました! 出てこられますか!?」

『は、はい』


 しばらくして、小走りでやってきた真子は、顔面蒼白だった。


「ありがとうございます、真子さん。――そして、エヴェレットさん?」


 僕が見据えると、エヴェレットは、真子とは対照的に、顔を真っ赤にして睨み返してきた。


「あのですね、エヴェレットさん。これは酷いんじゃないですか? 次々眠らせるどころか、起きてるじゃないですか」

「大輔、アミエル……。おヌシら、謀ったな……?」

「何おかしな事言ってるんですか。眠らせるよう指示してたのはエヴェレットさんでしょ」

「そーそー、大輔の言う通りだぜ」


 アミエルも追従した。


「言い掛かりも甚だしいよな」

「貴様らぁっ!」


 怒声とともにエネルギーを放出したエヴェレットは、マントを大きくはためかせつつ、僕とアミエルを忌々しげに睨み付けた。


「さっき来た悪魔達が、『証拠がある』とか抜かしておったわ! 貴様らまさか、さっきの会話を録音して、都合のいいように聞かせおったな!?」


 ――ああ、そりゃ気付くよな。もっとも、その真相をさっきの悪魔達に言ったところで、言い訳にしか聞こえないのが怖い所だがね。

 僕はやれやれという風に頭を振った。


「そんなえげつない方法を思いつくのは、そういう恐ろしいことを常日頃考えているからですよ、悪魔さん」

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