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溺愛されるよう仕向けるはずが、早々に陥落させてたなんて聞いてない!  作者: いか人参


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28.想いよ届け!



気まずい沈黙の中、アレナは繋がれた手が震えていることに気付いた。それはジュリアスから伝わったものだった。


(もしかして私の気持ちが伝わってない…?)


ようやく状況を理解したアレナは震える彼の手を両手で強く握りしめた。驚いて目線を上げたアイスブルーの瞳が彼女を捉える。


(……彼にもらうばかりで、自分の気持ちを言葉にしていなかったわ。ちゃんと伝えなきゃ。)


アレナは大きく息を吸い込んだ。ありったけの想いを今度はきちんと言葉にするために。恥ずかしい気持ちを気合いで押し留めて、彼の瞳を真正面から見返す。



「わ、私もジュリアス様のことが好きですわ。」


「………………う…そ」


彼女の渾身の告白は宙を舞い、ジュリアスの心まで届いてくれない。アレナはめげずにいつも彼がしてくれているように、精一杯の愛しさを込めた瞳で見つめる。



「こんなに格好良くて素敵で優しくて一途に想ってくれて…ずっと隣にいてほしいって思う大切なお方です。私にとって、ジュリアス様以上の方などいませんわ。」

「……………こんなこと、夢みたいだ。どうしよう…凄く嬉しい。」


半分泣いて半分笑って、目元を赤く染めたジュリアスがまだ信じられないような顔をしている。でもその瞳にはもう絶望の色はなかった。

彼はアレナの手を上から握り直し、それを自分の額に押し付ける。



「幸せ過ぎて俺、今絶対情けない顔になってる。少しの間目を瞑っといて。……ちょっと見られたくない。」

「そんなこと」


否定しかけたところでジュリアスの手のひらで瞼を撫でられてしまい、仕方なくそのまま目を閉じた。

その瞬間、アレナの唇に柔らかな感触が降って来た。



「…………っ」


突然の甘やかな感触に驚き過ぎて薄ら目を開けてしまったところに、また美麗な顔が迫っていて慌てて瞳を閉じる。



「!!」


今度は深く口付けられた。優しくて甘くて溶けてしまいそうになる。必死に受け入れながらも、それが心地よいと思っている自分が恥ずかしくて顔に熱が集まった。


何度も何度も繰り返し訪れる幸福に、アレナは卒倒しそうになる気持ちを堪えて必死に応え続ける。酸素不足と羞恥心で頭がクラクラしてきた頃、ようやくジュリアスが離れてくれた。


少しだけ距離を開け、口付けで濡れた唇で綺麗な弧を描き自信たっぷりに微笑む。



「ああ可愛い」

「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

(もうっ!情けない顔なんて嘘じゃない!)


その去り際、アレナの首に軽く触れる感覚があった。

首元を見ると、そこには一粒ダイヤのネックレスが付けられていた。大粒のダイヤモンドはブルーダイヤの一種で、一見透明に見えるのに光に当てると淡い水色に光輝く。それはジュリアスの瞳の色に酷似していた。



「ジュリアス様の瞳の色みたいで綺麗…」


思わず指でつまんで光を当てながら感想を述べると、ジュリアスが嬉しそうに微笑んだ。



「遅くなってすまないが、婚約の証に贈らせて欲しい。」


「嬉しい…ありがとうございます。とてもとても嬉しいです。大事にしますわ。私もお返しをさせて頂きたいです。何か欲しいものありませんか?」


感極まって瞼に溜まった涙を指で拭いながらアレナが尋ねた。

ジュリアスが口元に手を当て逡巡する素振りを見せる。しばらくして遠慮がちに口を開いた。



「もし手間でなければ、また神様を作ってもらえないだろうか?」


「カミサマ…?」


「間違えた。以前君が作ってくれたクッキーのことだ。あれをまた食べたい。」


「そんなことでよければ、喜んで!一緒に住んだら毎日作ってあげられますわ。」


『一緒に住んだら』その甘美な響きにジュリアスがうっとりとした表情になる。もうすぐ訪れる未来に想いを馳せた。



「はぁ…待ち遠しいな。それまで耐えられるかな。」


「結婚式まで本当にもうすぐですわ。」


「俺は今すぐにでも式を挙げたい。」


無茶苦茶なことを言い出すジュリアスにアレナが声を上げて笑った。つられて彼も微笑む。



「式までの間、毎日アレナに会いに行くよ。朝と晩と顔を見せて欲しい。」


「それは…忙しいのに申し訳ないですわ。」


「いいんだ。そうしないと俺が仕事に集中出来ないから。」


アレナは両手を振って遠慮したが、最後は謎理論で押し切られてしまった。



「では、お菓子を作ってお待ちしてますね。」


「ああ。楽しみだな。でも無理はしないで。」


「ふふふ、それはこちらの台詞ですわ。」


互いに笑った後、二人は馬車に戻って帰路についた。


サンクシュア家に到着後、玄関先で「また明日」とアレナの頬にキスをしたジュリアスは、彼女が邸の中に入るのを見届けてから馬車の中に戻って行ったのだった。



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