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第96話

 ここ、ルナグランデの町からピトゴルペスへ向かう事にした俊輔達一行は、今回得た資金で自分達の馬車を買いに町外れにある牧場に向かった。

 今回も高速移動で向かうのではなく、景色を眺めながらのんびりと向かう予定である。

 ここに来た時と同じように、ピトゴルペスへ向かう商人の護衛で付いて行くという事も考えたのだが、これからも色々な町に移動するのだから、この町で手に入れて行く事にした。

 牧場に着き、辺りを見渡していたら、馬だけでなくダチョウまでが飼われていた。


「何だ? こいつら?」


「こいつはアペストルースって魔物の一種だ。冒険者の場合魔物と戦う事が多いから、幌馬車を引くのを馬の代わりにこいつに引かせる事があるんだ」


 俊輔の疑問に思って呟くと、牧場の管理をしているおっちゃんが説明をしてくれた。

 どうやらこの世界ではダチョウは魔物の一種のようだ。

 アペストルースはスペイン語でダチョウ、そのまんまと言った感じである。

 前世の世界との違いは一回り体が大きく、足がぶっとい感じだ。


『ふ~ん……、確かに普通の動物より魔力が高いかな?』


 ダチョウが魔物だと言われて、俊輔は鑑定術で確認してみたら、確かに魔力が高いように感じた。

 魔力を使って脚力を強化し、場合によってはその強靭な脚や嘴で攻撃をして他の魔物と戦う事が出来るらしい。


「ただの馬を手に入れるより、多少は戦えるこいつらの方が良いかもな?」


「そうだね。ここに来る時もそうだったように魔物はいつ出て来るか分からないし、ちょっとくらい戦えた方が良いもんね」


 俊輔達であれば魔物が接近してきたら気付くので、不意打ちに会う事は限りなく少ないとは思うが、いちいち守りながら戦うよりも気が楽に感じた為、俊輔達は馬ではなくダチョウを買う事にした。


「じゃあ、好きな奴を選んでくれや」


 牧場のおっちゃんに言われた俊輔と京子は、ダチョウが囲われている柵の中に入り、一羽一羽を見て行った。

 飼われているせいかあまり人に警戒していない様で、ダチョウ達は大人しく餌である草を食べていた。


「……ん?」


 ここの牧場では20羽程のダチョウがいて、全部のダチョウを一通り見た俊輔は、1羽のダチョウが気になった。

 そのダチョウは、他のダチョウに比べて少々ガタイが小さく、群れから少し外れた所で俊輔を見つめていた。

 他のダチョウが黒い目をしているのに、そのダチョウは目の色が青い色をしていた。


「あぁ、そいつは何か目が青くて体が小さいせいか、他のダチョウにのけ者にされているみたいなんだ」


 俊輔がそのダチョウに近付き見つめていると、おっちゃんが説明をしてくれた。 


「こいつにするか?」


「え? この子?」


 俊輔に聞かれた京子は、この弱そうなダチョウが幌馬車を引けるのかが気になり若干躊躇した。


「そいつで良いのかい? まあこっちとしてはありがたいが……」


 どうやら牧場としても売れそうにないらしく、他よりも値段を安くしてくれると言ってくれた。


「京子、こいつにしよう!」


 このダチョウと見つめ合っていたら、俊輔はその青い目に何か感じたのか、気に入ってしまい思わず声を上げた。


「うん、そうだね。何かこの子だけ特別な感じがして良いかもね」


 俊輔同様京子もそのダチョウが段々気に入り、了承の言葉を出した。


「そうだ! 名前を付けないとな……」


 このダチョウを購入する事にした俊輔は、早速名前を付ける事にした。


「お前はそうだな…………目が青いからアスルだ!」


“バッサ! バッサ!”


 ダチョウは鳴かないって聞いていた通り、アスルは鳴かない代わりに態度で示して来た。


“スリスリッ!”


 名前が気に入ったのか、アスルは嬉しそうに羽をバタつかせた後、俊輔の脚に顔を擦り付けて来た。


「おぉ、気に入ったか?」


 その様子がなんか可愛く思えた俊輔は、優しく頭を撫でてあげた。


「ん? 私も?」


“スリスリッ!”


 俊輔に撫でられた後、今度は隣に立つ京子の脚にも同じように擦り付けて来た。


「何か懐っこい子だね?」


 京子にも撫でられたアスルは、最後に俊輔の頭に座るネグロを見つめた。


「ピー!」


「「あっ!?」」


 見つめられたネグロは、一声上げると俊輔の頭からアスルの背中に乗り移った。


「ピー!」


“バッサ!”


「おっ!?」「わっ!?」


 ネグロの声に反応したアスルは、勢いよく走り始めた。

 その中々の速度に、俊輔と京子は少し驚きの言葉を上げた。


「おぉ、結構な速さだな?」


「そうだね」


 ネグロを乗せて柵の中を走るアスルを、俊輔と京子は笑顔で見ていた。


「ピー!」


「「えっ?」」


 直線的にしか進んでいなかったアスルが、ネグロの声に反応して左右へカーブを描いて走るように変わった。

 その動きに俊輔と京子は驚きの声を上げた。

 その後少しの間走り続けると、アスルは忠実にネグロの指示に従って走るようになっていった。


「……もしかしてネグちゃんが操縦するつもりなのかな?」


「……かもしれないな」


 ターンをして俊輔達の下へ戻って来るアスルの上で、ネグロは俊輔達に対してドヤ顔をしていた。


「ハハ……」


 どうやら御者は任せてくれと言った感じのネグロに、思わず苦笑した俊輔だった。


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