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第93話

 魔族3人組を気絶させた俊輔達は、3人を連れてまたルナグランデの町に戻り始めた。

 また3人にグダグダとされては面倒なので、俊輔は魔法の袋から工作道具を色々と取り出して荷車を作り、魔力の糸でグルグル巻きにした3人を荷車に縛り付けてグレミオの建物の入り口前まで連れて行った。

 京子とネグロに荷車の3人を見ていてもらい、俊輔はグレミオの受付に行って、そこにいた職員らしき女性に話しかけた。


「すいません……」


「はい、いらっしゃいませ」


 俊輔が話しかけた女性は、前回来た時に対応してくれた女性で、話しかけた俊輔に前回同様営業スマイルで挨拶を返して来た。


「あら? あなたは先日魔族の調査に向かった方でしたよね?」


 どうやらこの女性も俊輔の事を覚えていたようで、すぐに俊輔が受注した依頼の事を思い出したようだ。


「どうなさいました? 他の冒険者の方はまだ帰って来ていませんが……」


 俊輔達が受けた依頼は、魔族と魔物の存在確認と調査、場合によっては魔族の殺害、捕縛と言う話だったのだが、俊輔達は他の冒険者達が魔族出現地に着いている頃に受注したので、帰って来たとしても先に出発した冒険者達が調査報告した後に来るのが普通である。

 しかし、かなり多くの冒険者達が調査に向かったのにも関わらず、いまだ一人も戻ってきてはいない。


「もしかして、他の方が戻って来ているの確認して依頼の中止を希望ですか?」


 その職員の予想としては、目的地と調査などの日数から、そろそろ他の冒険者達が帰って来る頃だと思っていた。

 俊輔達は遅くに向かったので、目的地に着く途中で他の冒険者達が帰って来たのを見て引き返してきたのだと思った。


「依頼の中止をお望みでしたら、他の冒険者の方達が依頼を達成した後に来て頂ければ違約金は支払わなくても良くなりますよ」


 どうやら職員の中で俊輔は依頼の中止に来たのだと半ば確定しているようで、親切に依頼中止をしても違約金の支払いをしなくてもいい条件を教えてくれた。


「いや、そうじゃなくて……」


 俊輔もその職員が親切で言ってくれていると分かっていたので黙って聞いていたが、他の冒険者の結末を伝えるのを若干躊躇した。


「他の冒険者は全滅してました…………」


 しかし、事実は変えられないので俊輔は意を決してその事を伝えたのだった。


「……………………えっ?」


 職員の女性は、俊輔の報告にかなりの間をあけて反応した。


「そんな! 15組程のパーティーが向かったのですよ! 中にはAランクの冒険者のパーティーまでいたって言うのに……」


 報告の内容を受け入れられない女性は、大きな声で俊輔に詰め寄った。


「ん~……、そう言われても事実なんだけど……」


 内容が内容なだけに信じられないのは分かるのだが、俊輔からしたらそう言われてもどうしようもないので困ってしまった。


「あっ!? マエストロ!」


 そこに丁度ここのグレミオのマエストロが入って来たようで、職員の女性はマエストロに声をかけた。


「ん? どうしたの?」


 ここのマエストロは女性のマエストロのようで、茶髪茶眼の170cm位の俊輔よりも少し大きい位の身長をしている。

 肉体は上半身がかなり鍛えられているらしく、革のベストから出ている腕はそこいらの男性よりも太い40代後半の年齢と言った感じである。

 そんなマエストロに、職員の女性は俊輔が言った報告をそのまま伝えたのだった。


「なるほど…………、俊輔とか言ったね? あたしはここのマエストロのバネッサって言うもんだ」


「はぁ……」


 職員から説明を受けたマエストロが、終わるまで側に立っていた俊輔に対して話しかけて来た。

 マエストロのバネッサの自己紹介に、俊輔は軽い返事をした。


「他の冒険者が全滅したって?」


「ええ……」


「……で、さっき入って来る時見たが、外の荷車に積んである奴らは何だ?」


「冒険者達を殺した、もしくは魔物を操って殺させた魔族の連中だ」


 バネッサが質問をして、それを俊輔が答える格好になった。

 その質問に、俊輔は端的に答えて言った。


「…………そうか、かなりの数の冒険者を殺した相手を倒すなんて随分と強いんだな? お前は……」


「……おいおい、あんたも実力を試させろとか言うなよ?」 


 話の流れとバネッサの雰囲気から、アリバカンポの町のマエストロであるエクトルに似た感覚を感じたので、先んじて断りの言葉を投げかけた。


「へぇー……、あたしの他にも同じ事を言う人間がいたのかい?」


「アリバカンポのマエストロに言われたよ」


“ピクッ!”


 俊輔の答えを聞いて、バネッサは少し表情が変わった。

 これまで冷静に話していたのだが、怒りの表情に変わっていった。


「あのハゲ……」


 バネッサは拳を握り、プルプルと震えながら呟いた。

 その様子はエクトルと何かあったようである事が想像できた。


「……どういう事?」


 2人の関係性が気になった俊輔は、バネッサの様子を見て苦笑している様子から、答えを知っていると思われる職員の女性に尋ねた。


「実は……」


 恐らくエクトルとの間に起きた昔の事を思い出しているであろうバネッサに聞かれないように、密かに話してくれた。






「2人は……元夫婦なんです」


「!? あのハゲ結婚してたの?」


 脳筋の筋肉ハゲの印象しかなかった俊輔は、ここ最近で一番の驚きだった。

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