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第88話

 翌朝俊輔達は、捕まえた魔族を連れてルナグランデの町に向かって歩き始めた。


「おい! お前らしっかり歩けよ!」


「うるせえ!」


 縛られている3人は、嫌そうな顔でダラダラと歩いていた。

 このペースでは、ルナグランデに着くのは夜になってしまうと思った俊輔が文句を言うが、口答えをするだけで直そうとしないでいた。


「馬車で来れば良かったな……」


 結構な数の冒険者がこの3人を倒す為に来ていたとグレミオで聞いていたので、出遅れた俊輔達はのんびり歩いて来た。

 まさかこの3人に冒険者達が全滅させられていたとは思わなかった為、予定外の状況である。


「お前ら確か本性蜘蛛系の魔族だろ? そのでかいケツから糸出すのか?」


 魔族とは、人型に変化が出来るようになった知能の高い魔物の事をそう呼んでいる。

 元々魔物である為、他の魔物を大量に操る事が出来るようである。

 本人自体も、人間の姿を解いて本性の状態で戦えばかなりの実力である。

 この3人は人化が上手く無いのか、完全な人化が出来ていなく、3人とも尻の部分が蜘蛛のように膨らんでいる状態である。


「何故それを!?」


 殺した冒険者から奪ったのか、3人はローブで全身を覆っているので、その尻尾は外からは見えてはいない。

 それなのに俊輔に蜘蛛型の魔族だとばれた事に、3人は焦っていた。


「いや、だって魔族って自分の本性の系統と同じ魔物を扱う傾向にあるだろ?」


 初めて官林村で会った魔族のホセは、色々な種類の魔物を操り攻めて来たが、ゴブリンやオーク等の人型に近い魔物が多かった。

 ホセ自体の本性も鬼のような本性だったのでそうだったのだろう。

 少し前、アリバカンポでバッタの群れを倒したとき、ネグロの魔法で跡形もなく消し飛んだ魔族もバッタのような顔をしていた。(一瞬で消し飛んだが、俊輔はちゃんと探知していた。)


「お前ら蜘蛛ばっかり操っていたから……そうなんだろ?」


 何となくそう言う物だと思ったので、俊輔はこいつらの本性も蜘蛛なのだろうと考えていた。


「大体、探知魔術で見ればローブで隠していても、魔力の流れで分かるって……」


 3人を気絶させた時に探知していたのもあり、俊輔はこの3人が蜘蛛型の本性をした魔族なのだと思っていた。

 なので、当然だろうという感じで俊輔は話したのだった。


「チッ! 化け物が……」


 自分達がやる事全てを完全に見抜いてくる俊輔に、蜘蛛の魔族の3人の1人は舌打ちを打って呟いた。


「その化け物に殺されたくなかったらさっさと歩けっての……」


「へいへい……」


 今日何度目かになるやり取りが交わされたが、結局3人はダラダラしたままであった。


“プチッ!”


「次グダグタ言ったらぶち殺すわよ……」


「京子…………さん?」


 どうやらこのやり取りに、俊輔より先に我慢の限界が来たのは京子のようだった。

 キレた時の京子は、俊輔も引く程恐ろしい。

 なので俊輔は思わず敬語になってしまった。


「ピー……」


 従魔のネグロは、俊輔の頭の上でプルプルと震えていた。


「あんたら別に死体でも構わないのよ。死にたくなかったら黙ってチャッチャと歩きなさいよ!」


「「「………………はい」」」


 京子の冷静に怒る口調がなおのこと恐ろしさを増幅していて、まともにその怒りの矛先が向いた3人の魔族は、顔を青くして顔を縦に振ったのだった。

 それから魔族達は京子に言われた通り、大人しくキビキビと歩き出したのだった。


『…………京子の方こそこの5年何があったんだ?』


 小さい頃から活発だったが、怒るとこんなに恐ろしいタイプだとは思ってもいなかった。

 怒った時に芯に響くような恐ろしさは、母の静江以上なんじゃないかと、俊輔とネグロは密かに思うのだった。


「ん? どうしたの俊ちゃん?」


「いや、何でもない……」


 3人が言うことを聞いて真面目に歩き出したせいか、京子の怒りは収まったようで、いつもの京子に戻った感じである。

 その事に一安心した俊輔は、何故か3人と同じようにキビキビと歩いていった。



◆◆◆◆◆


 ルナグランデの町へ向けて3人の魔族を連れて歩く俊輔達を、離れた場所から見る男がいた。


「エステ様の指示を出しに来たら……」


 昔、俊輔とネグロを無人島ダンジョンに送り込んだ張本人のエステ、その部下の男が蜘蛛の魔族3人に次のターゲットを指示をしに来たら、3人が居なくなっていた。

 どこに行ったのかと思って探してみたら、3人は討伐に来た人間にやられたのか、縛られて歩かされていた。


「何をやっているのだあいつらは……ヘマでもしたのか?」


 3人は蜘蛛の魔族のため、糸の振動で言葉を交換し、連携攻撃が得意な戦闘力の高い連中である。

 人間がまともに戦って勝てる連中とは思えない。

 罠に嵌める事が好きな3人だからこそ、自分達が罠にかからないと思っているように感じていた伝達係の男は、逆に罠に嵌まったのだと結論付けた。


「ん?」


 男が遠くから俊輔一行を眺めていると、どうやら3人を縛っている紐には魔力を封じる効果もあるせいか、3人は本性を現す事が出来ないでいるようである。


「どうやって捕まったか分からないが、あの紐さえ切ればあの人間達等には負けないだろう……」


 伝達係のこの男は戦闘に自信が無い。

 しかし、あの3人はルナグランデを攻め滅ぼす重要な戦力である。

 なので、男は縛られた紐を解くべく行動を開始した。


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