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第81話

 俊輔達がアリバカンポの町に着いて1ヶ月程経ち、様々なグルメや観光を楽しんだので、俊輔達はそろそろ次の町に向かう事にした。


「ねぇ、俊ちゃん次はどこに向かうの?」


 京子は別に俊輔と旅行出来れば良いので、どこに行こうと興味はないが、気になったので取りあえず行き先だけでも聞いておこうと思い、歩きながら俊輔に尋ねた。


「それを決めるためにグレミオに向かってるんだ」


「どう言うこと?」


 俊輔もまだ行き先を決めていない。

 しかし、気になる事があったので、それをマエストロのエクトルに聞くためにグレミオに向かう事にした。

 京子はその理由が分からないため、首を傾げつつ俊輔に付いていくのだった。


「こんちは」「こんにちは」


「こんにちは俊輔さん、京子さん。今日はどのような御用でしょうか?」


 俊輔達はグレミオに着くとそのまま受付に向かい、受付の女性に挨拶をした。

 受付の女性は挨拶を返し、用向きを尋ねてきた。


「マエストロって今会えますか?」


「マエストロですか? 少々お待ち下さい。」


 俊輔が用件を言うと受付の女性は席を立ち、奥にあるマエストロの部屋に向かって行った。


「大丈夫だそうですよ。どうぞ奥へお入り下さい」


 少し待っていると女性は戻ってきて、俊輔達を奥のマエストロの部屋へ案内した。


「おぉ、いらっしゃい。今日はどんな用だい?」


 女性に案内され室内に入ると、マエストロのエクトルが書類を書いている途中だった手を止めて挨拶をして来た。


「まぁ、座ってくれ」


 エクトルに促され、俊輔達は応接用のソファーに腰かけた。


「書類を書いていた途中じゃないのか?」


「大丈夫だ。一段落ついたところだ」


 そう言って、エクトルは俊輔達が座った対面に腰かけた。


「今日来たのはそろそろこの町を去ろうと思ってな」


 俊輔は、単刀直入に話を切り出した。


「そうか……そいつは残念だな。お前達なら面倒な依頼もあっさりこなしてくれて助かっていたのだが……」


 この1ヶ月、俊輔達は塩漬け状態の依頼をよくやっていた。

 採取系の依頼が多く、かなり見付けにくい魔物の素材だとか、結構な崖に咲く花など、確かに報酬の割りには面倒臭い依頼をこなしたのだった。

 他の冒険者には面倒な依頼だが、俊輔達からしたらそれほど大した事ないように思っていた。


「そんな訳でおっさん。ここから近場で、前言ってた魔族の噂があった町について教えてくれないか?」


「魔族!? 俊ちゃん……」


 子供の頃と日向での内乱時、それにこの町に来ても会った魔族の事を俊輔が聞き始めたので、京子は少し慌てた。

 後で説明するからと言う俊輔の目の合図を見て、京子はそれ以上聞くことをやめた。


「構わんが……あくまで噂だぞ?」


「あぁ、全然構わない」


 エクトルは前置きをした上で、噂のあった町の事を話し始めた。


「ここから西に500km位の位置に、ルナグランデって言う町がある。そこの近くの村が魔族によって滅んだって話だ。さっきも言ったようにあくまで噂だがな……」


「そうか……じゃあ、次はその町に行ってみるか……」


 昔から魔族には迷惑を受けてきた。

 今回はいつの間にか倒していたが、俊輔達がいなかったらこの町も潰れていただろう。

 俊輔とネグロを、無人島ダンジョンに送り込んだ奴も魔族のようだったし、なんか腹がたっていた。

 魔族が何を考えているのか分からないが、旅のついでに潰して行こうと俊輔は考えた。

 その為、エクトルに話を聞きに来たのだ。


「じゃあなおっさん」


 話も聞いた事だし、早速俊輔達はルナグランデの町に向かう事にした。


「おっさん言うな! ……2人とも元気でやれよ!」


 この1ヶ月でお決まりになっていたやり取りをした後、エクトルは笑顔で俊輔達に別れの言葉を告げた。


「ピー!」


 その時、俊輔の頭に乗っているネグロが、自分を忘れるなと言わんばかりに声をあげた。


「ハハッ、お前も元気でな!」


 それに気付いたエクトルは、苦笑しつつネグロの事も労ったのだった。



◆◆◆◆◆


 一方、その頃ある場所では……


「えっ!? ホルディと連絡が取れない?」


 昔俊輔とネグロを無人島ダンジョンに送り込んだ魔族のエステが、部下の魔族と話していた。

 エステは部下からの報告に、少し慌てたように聞き直した。


「は、はい。もうすぐアリバカンポの町に襲撃を行うはずだったのですが……」


 部下の男も理解出来ていないのか、慌てながらエステに説明をしていた。


「どうなってるんだろ……?」


 ここ最近やたらと自分には不都合が生じている。

 自分が担当の、東の無人島ダンジョンも突破されるし、日向を狙うことは諦めてアリバカンポの町を狙う事にしたのだが、またしてもその策が潰れた事に訳が分からなくなっていた。


「そうだ! 集めた魔物はどうなったの?」


「集めたバッタも1匹残らず消えたそうです……」


 エステの問いに、部下の男は沈痛な面持ちで答えを返した。


「あらら……参ったな。しょうがない、アリバカンポは諦めて次のターゲットに移ろうか?」


「畏まりました」


 集めた魔物までいなくなってしまい、エステはあっさりとアリバカンポの襲撃を諦めたのだった。

 そして、エステの指示を受けた男は、その場から消えるように去っていったのだった。



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