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第79話

 昨日登録したばかりなのに、グレミオからの呼び出しを喰らったので、京子と一緒にグレミオのマエストロの部屋に到着した。


「何で呼ばれたんすか?」


 今日は特にやる事がなかったので、店巡りをして食べ歩こうと考えていた。

 予定が潰されて、俊輔は若干不機嫌なトーンの声でマエストロに話しかけた。


「そんな不機嫌な声を出すなよ。今日はちょっと頼みたい依頼があってな……」


 呼び出したマエストロも、昨日の今日で頼み事をする事に苦笑しつつ話始めた。


「昨日の夕方入った情報なんだが、この町の冒険者達が結構な頻度である魔物を北の森で見たと言っていてな……」


 マエストロはある書類を取りだし、俊輔達の前に配りながら説明を続けた。


「……ある魔物?」


「あぁ、赤いバッタ(サルタモンテス・ロホ)と呼ばれる魔物だ」


 書類を見ると、マエストロが言った名前の魔物の特徴が記されていた。


・赤いバッタ

 1匹での魔物ランクはB。

 猫程の大きさのバッタで赤い色をしているのが特徴。

 通常数匹で群れを作っているのだが、時おり数十匹の群れを作ったりする。

 数年~数十年に1度大量発生をする場合がある。

 肉食で人を襲う場合がある。

 大量発生時のランクは、数によりS~SSランクに相当する。


 このような事が書かれており、文の下には絵で全体の姿を記されていた。


「赤いバッタね~……」


 俊輔はあまり関心無さそうに、その資料を眺めていた。


「これから魔物の討伐の為に町の冒険者に召集をかける。その前にタルヘタにも記載されない程の実力を持ったお前に、詳しく調査をして貰いたくてな……」


 赤いバッタの大量発生は、場合によっては1つの町に壊滅的な損害を及ぼす事もある。

 早い段階で討伐しておく事に越したことはない。

 しかし、赤いバッタの魔物ランクはBと結構なレベルである。

 魔物ランクがBなら、Bランク冒険者パーティー1つが討伐出来るレベルに設定されている。

 この町にはBランクの冒険者は結構な数いる。

 俊輔の調査次第で召集をかける事にしたのである。


「まだこの町のうまい店巡りが済んでいないんだ。店巡りの為にもさっさと依頼をこなしに行くか……」


「そうだね!」


「ピー!」


 俊輔が依頼をこなしに立ち上がると、京子と俊輔の頭に乗っている従魔のネグロも返事を返した。


「おい! その嬢ちゃんと丸烏も連れて行くのかい?」


 マエストロは、俊輔と一緒に行こうとしている京子とネグロに制止の声をあげた。


「おっさん! 京子は多分あんたと同等、いや、チョイ上の強さだぞ。ネグロもあんたより強いぞ」


「なっ!?」


 マエストロは、俊輔の発言が信じられず驚きで目を見開いた。


「分かったらおっさんは報告を待ってくれ!」


 そう言って、俊輔は部屋から出ていこうとした。


「おい! 俺の名前はエクトルだ! おっさんはよせ!」


「分かったよ! おっさん!」


 このようなやり取りをして、俊輔は部屋から出ていったのだった。



◆◆◆◆◆


 俊輔達は、マエストロのエクトルが言っていた北の森に向かい、赤いバッタを探し始めた。


「ねぇ、俊ちゃん……」


「んっ?」


 しかし俊輔達は、森に少し入った所で立ち止まった。

 目の前の光景に止めざるをえなかったからである。


「…………すんげえな、ビッシリじゃん」


 俊輔も目の前の光景が珍しかったので、軽く引いていた。

 辺り一面が真っ赤に染まった状態になっていたからである。

 地面にもビッシリ、木々にもビッシリと赤いバッタがウジャウジャ溢れていたからである。


「ジキジキジキジキジキジキジキジキ…………」


 バッタは、聞いていると何だか不快な鳴き声をあげて俊輔達の事を一斉に見つめた。


「…………もしかして狙われてる?」


 俊輔のこの呟きと同時に、赤い軍団が一斉に飛びかかり出した。


「京子! ネグ!」


「うん!」「ピー!」


 俊輔は腰に差していた木刀を構え、京子とネグロに戦闘体勢に入るように名前を呼んだ。

 2人共(1人と1羽)、分かっていたかのように名前を呼ばれたと同時に戦闘体勢に入った。


「ハッ!」


 俊輔は、次から次へと襲いかかるバッタ達を、紙を切るようにスパスパと斬り殺し遺体の山を築いていった。


「ウエッ! やっぱりちょっとキモい!」


 京子も持ち前の俊足を利用して、木刀で斬り殺していった。

 寄ってくる虫の顔をアップで見ると、やはり女子としては気分が悪い。

 とは言え、愚痴をこぼしつつも油断なく斬っていく姿はさすがである。


「ピー!」


 ネグロは、バッタ達の攻撃が届かない上空から魔法をぶっ放して、バッタを塵に変えていっていた。


「ネグ! 森が燃えちまうから火系統の魔法は止めとけよ!」


「ピー!」


 俊輔の指示に、分かったと言わんばかりに返事をしたネグロは、空中で氷の針を無数に作り出し、一気にバッタ達に向かって放出していった。


「…ギッ………ギッ……」


 氷の矢によって、数十匹のバッタが地面に縫い付けられた。

 3人(2人と1羽)の圧倒的な討伐にも関わらず、中々数が減らず赤い森のままである。


「大量発生何てレベルじゃねえだろ!」


 想像以上の数に愚痴りながら俊輔は斬っていたのだが、


「……アー!! 面倒くせー!!」


 チマチマ倒すことに我慢の限界が来た俊輔は、キレて怒りの声をあげた。


「ネグ! 森なんてどうでもいいや! ぶっ放せ!」


 最初の内は、自然破壊は良くないとネグに抑えるように言っていたのが、きりの無いバッタ達に腹が立ち、ネグロに範囲魔法の許可を出した。


「ちょっと、俊ちゃん!」


「ピー!」


 京子も気色悪いのを我慢して倒しているのに、先にキレた俊輔に制止の声をかけた。

 しかし、その声と時間差なく、ネグロは魔法の発射用意が出来ていた。

 そしてネグロの火災旋風が巻き起こり、木々も一緒にバッタ達を巻き込み燃やし尽くしていった。


「…………ネグちゃん! やり過ぎ!」


「ピー……」


 火災旋風が治まった後の森は、燃えつき、数百m程の範囲が焼け野原と化していた。

 バッタもほとんど焼け死に、炭のようになった状態で山になっていた。


「よくやった、ネグ! 後は残り30匹位だ! やっちまおうぜ、ヒャッハー!」


 本来は偵察に来ただけだったのだが、テンションの上がった俊輔は探知魔術のレーダーに引っ掛かったバッタを1匹も逃さず消していったのであった。


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