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第76話

 ペラ・モンターナ大陸、使用されている言語は地球で言うところのスペイン語、なので文化もスペイン風の物が広がっている。


「夕食を食べに行こうか?」


「うん!」


「ピー!」


 宿屋を見つけ、部屋を借りることが出来た俊輔と京子と、俊輔の従魔のネグロは、時間も時間なので夕食を取りに町に出ることにした。


 スペインと聞いて日本人はまず何を思い浮かべるか。


「モンターナ大陸には確かパエリアってお米料理があるんだよね?」


 京子は、日本人がスペイン料理と聞いて最初に思い付きやすい料理を言ってきた。


「……そうだな」


 モンターナがスペインに似ているとは言っても、全て一緒だとは思わなかったので、俊輔は軽く返事を返した。

 と言うのも、確かにパエリアはスペインの料理だが、スペイン人はそれほどパエリアを食べることはない。

 それに日本人や、この世界の日向の国のように主食という概念は存在しない。

 なのでパエリアも、ある意味おかずの一種として扱われているらしい。


「ここでいいかな?」


 町を歩いていると、良い香りがしてきたのでそちらに向かっていくと、酒場やレストランなどが並んだ道にたどり着き、その内の1つの店に入ることにした。


「いらっしゃいませ!」


 中に入ると店員に案内され、俊輔達はボックス席に座った。


「ん~……、メニュー見てもどんなのか分かんないよ!」


 メニューには色々かいてあるが、写真が付いていない為京子にはどんなものだか分からなかった。


「じゃあ、俺が頼むのと同じで良いか?」


「うん!」


 と言っても、俊輔もそれほど良く分からない料理があるので、書いてある中で知っている料理を頼む事にした。


 まずはガスパチョ、トマトを使った冷たいスープで、トマト、きゅうり、パプリカ、たまねぎなどにんにく、オリーブオイルと一緒にミキサーにかけてつくる料理のはずだ。

 もちろんミキサーなど無い世界なので、手作業で混ぜて作るのだろう。


「サッパリしていて美味しいね!」


「うん!」


 京子の言ったように、冷たくサッパリしていてとても美味しかった。


 次に頼んでいたマッシュルームの鉄板焼きが出てきた。

 マッシュルームの笠に、刻んだニンニクとパセリ、チョリソーを詰め、鉄板で焼いた料理である。

 ちなみにチョリソーとは、細かく刻んだ豚肉に塩を混ぜ、ニンニクやパプリカなどの香辛料を加えて腸に詰め、干して作るソーセージの事である。


「あふっ! 熱々で美味しいね!」


「うん。旨味が広がる」


 熱々を頬張り、これまた美味しかった。


 次に若鳥のチリンドロンソース煮、ピーマン、パプリカ、玉ねぎ、トマトなどの野菜を煮込んだチリンドロンソースで鶏肉を煮込んだ料理だ。


 どうやらこの店は当たりだったようで、2人とも出てくる料理は全て口にあった。


「ピー♪」


 特にネグロはこの料理が気に入ったらしく、俊輔は多目に分けてあげた。


『鳥肉なんだけどな……』


 丸烏のネグロが嬉しそうに鶏肉を食べていることに、俊輔は若干思うところがあった。


「へ~、これがパエリアか~……」


 最後に頼んでいたパエリアが出てきた。

 頼むべきか少し悩んだが、やっぱりメニューに見ていたら試してみたいと思い頼んでしまった。


「うん。美味しい!」


「そうだね! 日向のお米とはちょっと違うけど、色んな具材の味が染みて美味しいね!」


 海老や貝の魚介類が沢山乗り、ちょっと水分が少ないお米が具材の味を吸い込み、とても良い味を出していた。


「あ~、お腹一杯!」


「ピー!」


「良い店だったな!」


 支払いを済ませ外に出ると、京子とネグロも俊輔同様満足したのか、笑顔で声を上げた。


「じゃあ、宿屋に帰ろうか?」


「うん!」


「ピー!」


 美味しい料理に満足して、皆笑顔で宿屋に帰っていった。



◆◆◆◆◆


 昔俊輔達が住んでいた官林村を襲撃したホセ、日向の天皇後継争いを操ったトマス、そして俊輔を地獄のダンジョンに送り込んだ張本人のエステと呼ばれる男が、ある城の廊下を歩いていた。


「おい! エステ!」


「ん? 何? オエステ!」


 エステが振り返ると、そこには筋骨隆々のあからさまに武闘派と言った感じの男が立っていた。


「聞いたぜ……!」


「? 何を……?」


 オエステの言っている事が分からず、エステは首を傾げた。


「お前の管轄の迷宮が突破されたらしいな?」


 エステを見下すような表情で、オエステは問いかけた。


「うん。そうなんだよ。すごいのがいるよね?」


 言われたエステは、そんな事お構い無しといった態度で返事を返した。


「テメエ! 何だその態度は!? 俺達の計画に支障が出たらどうするつもりだ!?」


 エステの態度に、一気に沸点に達したオエステは、エステの胸元を掴もうと手を伸ばした。


「……触るな! 薄汚い!」


 エステは、オエステの伸びてきた手を払い、ゴミを見る目で呟いた。


「テメエ!!!」


 怒りで顔を真っ赤にし、オエステはエステに殴りかかった。


「…………」


 丸太のような腕から繰り出される攻撃は、風を巻き起こす程の威力があるが、エステは何て事無いように軽やかに躱す。


「前からテメエは気に入らなかったんだ!! 今日この場でぶち殺してやる!!」


 完全にキレたオエステは魔力を吹き出し、エステを殺しにかかろうとした。


「止めんか!!!」


「!!? セントロ……!!?」


 オエステの背後から白髪で白髭の老人が現れた。


「オエステその辺にしておけ! 仲間で争っていては計画に遅れを生むだけだ!」


「…………チッ! 分かったよ!」


 セントロと呼ばれた老人の言葉に冷静になったオエステは、舌打ちをした後廊下を、エステとは反対方向に向かって歩いていった。


「相変わらず怒りんぼだなぁ~……」


 やれやれといった感じで、エステは肩をすくめた。


「エステ! オエステの言うことも一理ある。迷宮が攻略されたことで、またその分養分を送り込まねばならなくなったのだ!」


「大丈夫だよ。その気になったらあっという間に成長させるから……」


 そう言ってエステは、ほのかに邪悪な雰囲気を放った。


「……お前なら確かに出来るだろうが、手駒を減らすのは控えろよ!」


「はい、はい……」


 あまり真剣に受け止めた様子無く、エステは軽く返事を返してその場から去って行った。


「……やれやれ、本気を出せばすぐに目標分は達成出来るだろうに……」


 去って行くエステの後ろ姿を眺めつつ、セントロはため息をついた。

有名なスペイン料理を書きたくてこのような話になりました。ネットや本で調べたのもあるので、合っているか分かりません。間違っていたらご指摘ください。

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