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第74話

「いい眺めだ……」


「……そうだね」


「ピー!」


 現在俊輔と京子、それと従魔の丸烏のネグロは船に乗っていた。

 5年振りに、俊輔は大陸へと向かう船に乗り、船首から見える景色を眺めていた。






◆◆◆◆◆


 5年振りに帰った京子は、実家に帰り家族に挨拶をしに行った。

 村長である祖父と父も元気で、京子の帰りを嬉しそうに喜んでいた。

 京子の母は、京子の3つ下の弟の健太(けんた)を生んですぐに亡くなっている。


「姉ちゃん!?」


 京子が久々の実家で仏壇の母にお線香をあげていると、外で遊んでいた健太が帰ってきて、姉の京子を見つけて驚きの声をあげた。


「健太!? 大きくなったわね……」


 驚いたのは京子も同じで、身長が伸びて少し大人びた弟の姿に目を大きくしていた。


「……所で今日はどうしたのじゃ? 戦姫隊の仕事はどうしたのじゃ?」


 家族4人が囲炉裏を囲んで座り、この5年1度も帰って来なかった京子に、突然帰郷したことに村長は当然の疑問を投げかけた。


「…………その事なんだけど、…………隊を脱隊してきた!」


「「「!!? 何だって!!?」」」


京子の言葉を聞いて、3人は驚いて大きな声をあげた。


「……あの、……その、俊ちゃんに付いて行こうと思って……」


 驚きの表情をしている3人に、京子はモジモジと顔を赤くしつつ、言い難い様子で呟いた。


「こんちは! 村長話が……」


 タイミング悪く、そこに俊輔が現れた。

 俊輔は挨拶をして顔を出したら、京子以外の3人が固まっていることに首を傾げた。


「…………俊輔!! そこに座って説明しろ!!」


 混乱からか、村長は怒りが湧いてきて丁度原因の俊輔が現れたので、怒鳴り指示した。


「……っ!? はい、分かりました!」


 突然の圧力に俊輔は素直に従い、京子の隣に正座した。

 そして、京子が自分と一緒に大陸に行くために脱隊してきた事を説明し、その許可を貰いたいと頭を下げた。


「…………ふー、全く昔からこの問題児が……」


 話を聞いて少しだけ落ち着いた村長は、事の成り行きを聞いて理解した。


「……つまり京子を嫁にくれと言っているのじゃな?」


「………………えっ?」


 村長の発言に俊輔は何を言っているのか分からなくなり、頭が真っ白になった。

 俊輔はただ、大陸に一緒に旅行に行く許可を貰いに来ただけなのに、何故そうなるのか理解できずにいた。


「元服の年齢に達した男女が、共に旅行をするなどそう言う事じゃろが?」


「……………………あぁ、なるほど……」


 事ここに至って、俊輔はようやく自分が重大なことを言っていると理解した。


「…………でも、京子は……」


 そう言って京子の顔を見ると、顔を赤くしてずっとうつむいている事に気付いた。


「………………あぁ、そっか……」


 その態度を見て、京子は自分との結婚を受け入れているから、大陸旅行に付いていくと言っているのだと理解した。


「……どうなんじゃ?」


 自分の問いかけにオロオロとしている俊輔に対して、村長は再度問いかけた。


「えっ? あの、その……」


 村長に答えを返せず考え込んでいると、俊輔は京子の様子をまた見て答えが決まった。


「……お願いします! 京子を嫁にください!」


 小さい頃から一緒にいた為、そういった対象に思っていなかった俊輔だったが、女性である京子が覚悟をしているのに自分がそれに応えない事は男が廃ると感じ、京子との結婚を決意した。


「いつかこんなことになるとは思っていたがの……、のう和哉?」


「うん……、私もそう思ってました」


 村長と、京子の父の和哉はそう呟いた。


「俊輔!」


「はい!」


 少しの沈黙が起きた後、村長は大きな声を出し、俊輔も慌てたように返事を返した。


「京子を幸せにすると誓えるか!?」


「誓います!!」


「……じゃあ頼むぞい」


 こうして、俊輔と京子は婚約をすることになった。

 その後、俊輔は京子と2人で俊輔の実家に行き、俊輔の両親と兄たちに婚約するに至った事を告げた。

 突然出ていき、5年経って突然帰ってきて、突然京子との婚約を告げられた俊輔の家族は、しばらく固まったのち、笑顔と笑いに包まれたのだった。


 俊輔と京子の結婚はすぐに村中に知れ渡り、村人総出で祝いの祭りが盛大に開かれ、2人は夫婦として認められたのだった。

 そして2人は家族や村人に挨拶をした後、大陸旅行に向かって村を後にしたのだった。



◆◆◆◆◆


 そして今、2人は大陸行きの船に乗っている。


「……所で、俊ちゃんは大陸行って何がしたいの?」


 穏やかな風を受けつつ、京子は俊輔に質問をしてきた。


「……ん~、何でも! 料理も文化も何もかも、見て、感じて、味わって、思いっきり楽しみたい!」


「……そうだね。きっと日向では見たことも聞いたことも無いような事や、物が沢山あるだろうね!」


「あぁ、楽しいぞ! きっと……」


「うん。そうだね!」


 2人はまだ見ぬ世界に、夢一杯な話をしあっていた。


「京子も一緒だし……」


「っ!? ……もぅ、何よ急に……」


 俊輔の不意打ちの言葉に、京子は顔を赤くして恥じらっていた。


「ピー!」


 そこで俊輔の頭に乗ったネグロが、自分を忘れるなと言わんばかりの声をあげた。


「そうだな。ネグも一緒だ!」


「そうだね!」


 こうして、3人(2人と1羽)は楽しそうに船旅を過ごしたのだった。


 

ようやく大陸に向かう事になりました。若干爆発しろ的な感じになってしまいましたが、大陸旅行の始まりです。

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