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第73話

「ハッ!」


「危ねっ!」


 俊輔の魔闘術による攻撃を受けても無傷の20層守護者のアカマツ型人面樹は、俊輔に向かってまた針の葉による攻撃を開始した。

 俊輔はその攻撃を躱し、少しずつ後退させられていった。

 最初と違って、アカマツは高速針を連射して自分に近付けないようにしていた。

 俊輔の得物が木刀の二刀流の為、アカマツは俊輔に得意の近接戦闘をさせないようにしているようだった。


「……俺が遠距離攻撃出来ないと思ってんのか?」


 俊輔の魔闘術による攻撃を受けても無傷だったアカマツだけれども、俊輔の近付いての攻撃が一番危険だと考えて近付けさせないのだと俊輔は思った。

 そして近距離攻撃しか、俊輔が出来ないとも考えているのだろう。


「ダリャッ!」


 そう考えて俊輔は、木刀に纏った魔力を斬撃として飛ばし、アカマツに向かって攻撃した。


「フッ!」


 俊輔の魔力斬撃が迫り来るなか、アカマツはそれを鼻で笑うように受け止めた。


「全く効いてない!?」


 直接攻撃も効かない、遠距離攻撃も通用しない。

 それを見て俊輔は驚き、アカマツの攻撃を躱しながら内心かなり焦っていた。


『ヤバい! 手がない……』


 近距離では木刀攻撃、遠距離では魔力の斬撃で、今まで通用しなかった相手はいなかった。

 その為、他に通用する攻撃手段が思い付かないでいた。


「ピー!」


 アカマツの攻撃を躱しながら、考えを巡らしている俊輔を援護するように、俊輔の従魔である丸烏のネグロが上空から魔法攻撃をし出した。


「動きだけならあのゴブリン並みだな……」


 ネグロの魔法攻撃を、アカマツは根を上手く使って素早く動いて躱していた。

 それを見て、俊輔は思わず呟いていた。


「ヤッ!!」


 ネグロの攻撃を躱し、反撃で高速針を飛ばしネグロを牽制する。


「ハッ!!」


 ネグロの攻撃が止んだアカマツは、悩み続ける俊輔に対して今度は松ぼっくりを飛ばして来た。


「おわっ!? 危ね……」


 速度は針と同じ位なので、俊輔は難なく躱したが、飛んできた松ぼっくりが俊輔の近場の地面に落ちると、爆発を起こして欠片が俊輔を襲った。

 予測できなかった攻撃に、俊輔は慌てつつ木刀で弾いて攻撃を防いだ。


「ピー!」


 俊輔に意識が行ったアカマツに、ネグロはまた魔法攻撃を放って俊輔を援護した。

 しかしそれもアカマツは躱して、針をネグロに飛ばした。


「ん!? 俺の攻撃は受けるのに、ネグの攻撃は躱すのか?」


 ループする好守のやり取りの中で、俊輔はふとその事に気付いた。


「…………もしかして」


 そして俊輔は、試しに人指し指からネグロもよくやる光魔法のレーザー光線を、アカマツに向かって放ってみた。


「!!?」


 その攻撃を、アカマツは受けずに躱して目付きを変えた。


「……やっぱり!」


 それを見てとった俊輔は、ようやく突破口を見つけられて微笑んだ。

 俊輔が見つけた突破口とは、アカマツは魔力そのままの攻撃は効かないが、魔力を変化させて攻撃する属性魔法は

ダメージを受けるのだろうと言うことである。


「そうと分かれば、ハァァアー……」


 防御用に小太刀の木刀を残して、もう一本の木刀を魔法の袋にしまい、右手の掌をアカマツに向けて開いて、魔力を溜め始めた。


「なっ!!?」


 とんでもない量の魔力を俊輔が集め始めたのを見て、アカマツは慌てた。

 ネグロに魔法を教えたのは俊輔、勿論俊輔も魔法は使える。

 しかし、俊輔は魔法の細かいコントロールが苦手、と言うより面倒臭いと思っていたので、練習不足である。

 なので魔法は弱く撃つか、おもいっきり撃つかしか出来ない。

 つまり俊輔は範囲が広く、威力が強い魔法をイメージして、アカマツに向けてぶっ放した。


「ハァァアー!!!」


「グッ! ギャーーー!!」


 俊輔がぶっ放した爆炎弾を、アカマツは躱す事が出来ず、直撃してそのまま爆炎弾と共にこの部屋の壁まで飛んでいき、壁にぶつかると同時に大爆発を起こした。


「……ピッ、……ピー」


 あまりの攻撃の威力に、ネグロはかなり引いた目をしていた。


「ギ、ギギッ……」


 爆発して巻き起こった土煙が晴れてくると、アカマツは生えていた枝や葉が燃えて吹き飛び、ボロボロの状態で立っていた。


「おいおい、あれ喰らってまだ生きてんのかよ!?」


 8割近くの魔力を使った大魔法を喰らっても生きているアカマツを見て、俊輔はその頑丈さに呆れたような声を出した。


「ピー!」


 ダメージでふらつき、動けないでいるアカマツを見てとったネグロは、容赦なく魔法で火炎放射を放って弱りきったアカマツを燃やし尽くした。


「……ネグ、お前良いとこ取って行きやがって……」


「ピー?」


「…………まぁ、いっか」


 止めの部分を持っていかれた俊輔は、少し責めるような口調でネグロに話しかけた。

 しかし、自分もネグロも多少苦戦したが、10層の時とは違い怪我無く勝利を収めた事に安堵の溜め息が出たのだった。

 そして俊輔は、ネグロが燃やしたアカマツの灰に水をかけ、冷やした後に魔石を拾って、守護者を倒したことによって出現した次の階への入り口に入り、廊下を進んでいったのだった。






――――――――――――――――――――


「………………ってな感じで、俺とネグは20層を突破したんだよ!」


「ピー!」


「……へ~、そうなんだ?」


 奥電から官林村へ向かう道中、俊輔はネグロを頭に乗せつつ歩きながら、京子に昔の話をしていたのだった。


「おっ!? 見えてきた……、続きはまた今度な!」


「うん!」


 長い道中ダンジョン島の20層まで話して、ようやく官林村の入り口が見えてきた。

 そこで俊輔は続きを話すのを止めて、少し足早に、京子と共に入り口に向かって歩いていったのだった。



3章を書き始めたら思いの外長くなってしまいました。

ダンジョン攻略は途中ですが、先に進ませたいと思います。

ダンジョン攻略の続きは4章が終わって、5章辺りで書けたら良いなと思います。

攻略を期待していた方には申し訳ありません。

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