第70話
今回から木曜日の午前中に投稿するようにしました。これからも読んで頂けたら嬉しいです。
「よし! 行くか?」
「ピー!」
今日から11層の攻略を始める事にした俊輔と従魔の丸烏のネグロは、俊輔の転移魔法で11層の廊下に転移した。
「ネグ! 念の為に慎重に行くぞ!」
「ピー!」
11層の入り口手前で中の様子を見る前に、俊輔はネグロに注意をし、ネグロも了承の返事を返した。
「行くぞ! せーの! …………森?」
ネグロとタイミングを合わせて中の様子を見た俊輔は、目の前に写った景色に思わず呟いた。
入り口に立つ俊輔達の目の前には、木々が立ち並び、植物が生い茂っていた。
「先ずは探知を……」
“シュルルル……!!”
中に数m入り、俊輔が探知術を発動しようとした時、植物の蔓が高速で俊輔に向かって伸びてきた。
「!!?」
“バッ!”
その事に気付いた俊輔は、その場から飛び退いた。
「いきなりだな……」
「ゲギャギャッ!」
伸びて来た蔓の方角を見ると、そこには木に顔がついた魔物がいた。
「確か人面樹って奴か?」
俊輔は昔見た魔物図鑑に、そのような名前で書かれていたことを思い出した。
「ゲギャッ!」
“シュルルル……!!”
人面樹の体の枝が伸び、俊輔を攻撃してきた。
「おっと……」
その攻撃はかなりの速さだが、今の俊輔にはそれ程苦もない速さの為、余裕をもって躱せた。
「ピー!」
“ボウッ!”
俊輔が人面樹の攻撃を躱していると、ネグロが火の玉を噴いて人面樹に攻撃した。
「ゲギャッ!?」
ネグロの火の玉を喰らった人面樹は、身体中の枝に火が燃え移り、苦しそうに暴れ出した。
「今だ!」
“ズバズバッ!”“ズバズバッ!”
俊輔は、身体が燃えることに慌てていて隙だらけの人面樹に向かって行き、手に入れた魔石を使って錬金術で強化に強化を重ねた2刀の木刀で切り刻んだ。
“ゴトッ!”“ゴトッ!”“ゴトッ!”
刻まれた人面樹は、切り株の山になって動かなくなり、着いていた火が全体に行き渡り焚き火になった。
「……これ森全体に燃え移ったら、戦わなくっても魔物全滅じゃね?」
などと少々物騒な事を思いついたが、すぐに燃え尽き鎮火した。
そして、燃え尽きた灰の中から魔石が出てきた。
「解体の手間が省けて良いな」
いつもなら魔物を倒した後は解体に時間がかかるが、今回は魔石を拾うだけで良いので楽である。
「ワァチャッ!!」
しかし、俊輔が出てきた魔石を拾った瞬間、あまりの熱さに大声をあげて魔石を放り投げてしまった。
火が消えたばかりだったので当然である。
「あっ!?」
「ピッ!?」
“ガサガサッ!”
そして気付いたら、俊輔の大声に反応したのか数多くの色々な植物の魔物が、俊輔達の周りに集まって来た。
「まずッ! ネグ、逃げるぞ!」
「ピー!」
俊輔が決断した瞬間、心得たと言わんばかりの速さでネグロが俊輔の頭に乗っかった。
“ドンッ!”“ドカッ!”“バリッ!”
「うぉーー…………!!」
背後で、植物達の攻撃による様々な破砕音が響く中、頭にネグロを乗せた俊輔は猛ダッシュで逃げていったのだった。




