第69話
10層守護者のゴブリンと戦って、自身の実力不足を感じた俊輔は、1層~9層の魔物相手に剣術や魔法等の訓練を従魔の丸烏のネグロとしていた。
「オリャー……!!」
“ドムッ!”
俊輔は、掛け声と共に腹を素手で殴り、ギガンテスの動きを止める。
「どっせい!!」
“ドカンッ!”
腹を押さえ蹲るギガンテスの顔面を、魔力を纏った拳で打ち抜いた。
“ズーンッ!”
殴られたギガンテスは、大きな音を立てて巨体を地面に打ちつけた。
「…………」
俊輔はファイティングポーズをとったまま、ギガンテスの様子を伺った。
「……よし」
ギガンテスが全く動かない事を確認した俊輔は、構えを解いて、倒れているギガンテスの素材を剥ぎに向かった。
「いや~、もう一桁階層の魔物は余裕だな」
ギガンテスの魔石を取り出しつつ、俊輔は呟いた。
その呟きの通り、一桁階層の魔物を相手に最近は木刀を使うことなく、素手で相手をしても倒せるようになっていた。
「ピー……!」
「んっ?、どうした?、ネグ……」
解体中の俊輔のもとに、遠くで飛び回っていたネグロが近寄ってきた。
素材の回収を終えた俊輔は、付いて来てと言わんばかりに飛び回る、ネグロの案内に付いていった。
「…………こりゃまた、ずいぶんな数を……」
ネグロの案内に付いていくと、巨大蟻の死骸が山積みにされていた。
「ピ~♪」
ネグロは褒めてと言わんばかりに、嬉しそうに俊輔の周りを飛び回った。
「あ~、よしよし……」
俊輔の胸に飛び込んで来たネグロを、少し雑に撫でて褒めた。
「さっさと魔石を取り出さないとな……」
この島の生物は、死亡すると15分で島に吸収されるシステムになっている。
なので、吸収されるされる前に、利用できる魔石や素材を解体して魔法の袋に入れて置く必要がある。
魔法の袋に入れた魔石や素材は島に吸収される事はなく、色んな事に利用できるので、なるべく解体するようにしている。
「ふ~……、終わった」
猛スピードで魔物から魔石を取り出し、どうにか全部取り出せた。
「……そろそろ11層行くか?」
俊輔同様、ネグロも魔法が上達してきていた。
元々ネグロは、見た目はアフロのカツラのような存在だが鳥である。
その為、近接戦闘が得意でないので、小さい頃から俊輔が魔法を教えて来たのだが、それの威力と範囲はかなりの物になってきていた。
直接打撃の届かない上空から、広範囲に強力な魔法を連射する様は、俊輔自身引いてしまう時がある。
「ピー!」
俊輔の問いに、ネグロも同意の返事を返した。
「じゃあ、今日は拠点に帰って武器強化するか……」
11層の魔物がどんなものか分からないが、今の2人(正確には1人と1羽)の実力なら対処できるとは思うが、念の為錬金術で武器強化をすることにした。
「ピ~……」
「分かった、分かった。帰ったらすぐ肉を焼いてやるよ」
動き回ったネグロは、それよりもお腹が空いたと俊輔に擦り付いて来たので、俊輔はしょうがないなと言う風な顔で、ネグロのモコモコの毛を撫でた。
「プエルタ!」
どこで〇ドア、もとい転移魔法を放って、俊輔達は拠点に帰って行った。




