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第59話

 巨大蟻を倒した俊輔とネグロは、拠点にしている洞窟に一旦帰ってダンジョン攻略の対策を考えていた。


「やっぱり地道にコツコツ強くなるしかないのかな?」


 この世界でも前世の異世界物同様に魔物を倒せば強くなるようで、島に着いた当初より強くなっているのはなんとなく分かっている。

 しかし、まだまだ多数の魔物を相手に戦うのは危険すぎる。


「今回の事で思ったんだけど、とっさに逃げられる方法がないとまずいな……」


 今回は、魔物が1列で向かって来ていたから何とかなったけれど、もしも魔物に囲まれそうになったとき、逃げられる手段がないとあっという間に魔物の餌だ。


「……ここはやっぱり瞬間移動かな?」


「ピー?」


 前世の記憶から最初に思いついたのは、またしてもドラゴ〇ボールの技だった。

 ネグロは俊輔が言っている事に首を傾げていた。


「……って言っても、どうすりゃ良いんだ?」


 あの場合、相手の気を感じて移動するみたいな感じだけど、そうなるとネグロを拠点に置いていかなくてはいけなくなる。

 今回の戦闘でもネグロのフォローがあった為、危なげなく倒すことが出来たのも事実である。

 その為、ネグロを置いていくのはあり得ない。


「そうなると……、あれだな!」


 異世界で転移魔法と言って、次に思いついたのは……


「どこでもド〇ー!」


 あの有名作品のヤツである。

 行きたい地点を思い浮かべて、目の前の空間とつなげる扉を作るイメージで魔力を放出する。


「おっ!? 出来た」


 まずは手のひらサイズの扉を作ってみたのだが、思っていたよりも簡単に作ることが出来た。

 魔力も、錬金術や肉体再生に比べたら少ない魔力で出来たのも予想外だった。

 魔法の名前も、どこでもド〇では何かと良くないと思い、大陸語(スペイン語)で扉や門といった意味のプエルタという名前にした。


「良し! 今度はここの外と繋げてみるか?」


 俊輔はプエルタの練習で、洞窟のすぐ外に出れる1人分の大きさのプエルタ()を作ってみた。


「ハッ!」


 さっきの手のひらサイズの時より多く魔力を放出し、プエルタを俊輔が通れるほどの大きさに広げていった。


「ん~……、良し! 出来た!」


「ピー♪」


「あっ! ネグ!」


 出来たプエルタを通ろうとした俊輔より早く、ネグロが元気に通り抜けた。

 せっかく初めて作ったプエルタだったのに、ネグロに先を越されて俊輔は何となくがっかりした。


「まぁ、いっか……」


 思えばちゃんと通れるかどうか分からなかったので、ネグロが通れた事で安心して俊輔も通り抜けた。


「結構あっさり出来たな? でも人が通れる程の大きさのプエルタが出来るまでの時間が遅すぎるな……」


 俊輔が呟いたように、初めて作った為か数十秒かかっていた。

 これではプエルタを作っている間に、魔物に襲われてしまうのが落ちだ。


「もっと練習して、一瞬で作れるくらいにしないと……」


 そしてその日俊輔は、1日プエルタの練習を魔力が無くなるまで続けた。


 ちなみに、この魔法でこの島から外に移動しようとしたのだが、どれだけ魔力を使っても、プエルタが出来ることは無かった。


「結局、あの階層を突破して行かないとダメみたいだな……」


 あの強力な魔物達を倒して行かないといけない事に、想像しただけでうんざりする俊輔だった。

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