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第58話

 島に着いて1ヶ月がたった。


「あった……」


 最近では、魔物を相手にしても1対1なら平気な位の強さを俊輔は手に入れていた。

 魔物の魔石を使って、錬金術で主力武器の木刀も強化しているので、今までの戦術で戦えるようになったのも大きい。

 そのおかげで、注意しながらであれば、島を自由に動き回れるようになった。

 そして島を動き回って、遺跡のような物が建っている場所を見つけることが出来た。

 その遺跡には緩やかな下り坂があり、地下に向かって伸びている。


「もしかして、ここから魔物が上がって来てるのか?」


 その下り坂の道は、縦横共に幅が広くギガンテスでも通れそうな大きさだった。


「探知魔術でも、かなり深くまで続いているのが分かるだけだな……」


「ピー!」


「そうだな……、行ってみるか?」


 頭に乗せた丸烏のネグロに急かされて、俊輔は奥に進んで行くことにした。


「よっ!」


“ポッ!”


 道は左に緩やかにカーブしていて暗くなっているので、俊輔は魔法で光の球を作り進んで行った。



「……ん!?」


 5分程歩いて行くと明かりが見えてきた。

 どうやら最初の階に着いたみたいだ。


「先ずは入り口から探知しとくか?」


 安全を期す為、探知魔術で入り口から中を調べてみることにした。


「……うそんっ!?」


 調べてみたら、外で良く見たのと同じ魔物なのだが、数が違った。

 外で良く見たのは巨大鹿、巨大猪、巨大カブトムシ、巨大蟻がいたのだが、それらの魔物が群れを作って住んでいるようだ。

 ギガンテスは、島に来て最初の日以来見なかったが、この階には結構な数がいるみたいだ。


「はぐれ者が外に出て来ていたんだな……?」


「ピー……」


 1対1ならどうにかなるようになったのだが、さすがに群れを相手に戦うのは無茶が過ぎる。


「!!?」


 巨大蟻の群れを探知魔術で見ていた俊輔に反応した個体がいた。


「まずいっ!!」


 反応した個体の指示によって、俊輔がいる方向に向かって群れが動き出した。

 その事に気付いた俊輔は、脱兎のごとく外に向かって逃げ出した。


「くそっ! 探知できる蟻が混じってるのかよ!」


 俊輔は愚痴りながら通路をかけ上がった。


「ん!? 待てよ……」


 俊輔は通路の途中で立ち止まり、巨大蟻が向かって来るのを確認した。


「ピー!?」


 立ち止まった俊輔にネグロは疑問の声をあげた。


「この通路だと列にならないと追って来れないだろ?」


 蟻の大きさを考えた俊輔は、その事に気が付いた。


「そうと決まったら……」


“ボッ!”


「おりゃーーー!!!」


 俊輔は外で巨大猪を狩った時のように、巨大鹿の角から造った槍を魔法の袋から取りだし、魔闘術を使って通路の先に投げつけた。


「「「ギーーー!!!」」」


 槍を投げて少しして、3匹の蟻の鳴き声が聞こえて来た。


「お次はこれだ!!」


“ザバッ!”


 俊輔は魔法で大量の水を作り通路に流した。


「「「ギ・ギッ」」」


 大量の水の勢いに負けず、蟻達はその場に踏み止まった。


「そんでもって・・・、これだ!!」


“バリバリバリッ!!”


「「「「「ギギッ!!」」」」」


 流した水を通り道にして、俊輔は魔法で強力な電気を流し、5匹の蟻を葬り去った。


「くそっ! 2匹も残っちまった。」


 追ってきたのは全部で10匹、槍で3匹、電撃で5匹倒したので、俊輔は残り2匹を相手に戦う事になった。


「「ギーーー!!!」」


 仲間を殺られて腹をたてたのか、ものすごい勢いで、2匹の蟻は俊輔に襲いかかった。


「ピー!」


“ドカッ!”


「良くやったネグ!」


 襲いかかった蟻の片方に、ネグロが放った魔力球がぶつかり吹き飛んだ。

 それによって俊輔は1対1の状況になり、魔法の袋から取りだした2刀の木刀で、もう片方の蟻を倒しに行った。


「ギーー!!」


「おっと……」


“ドカッ!”


 蟻の前足での攻撃を躱し、俊輔は蟻の横に回り込んだ。


「ダリャーーー!!!」


 がら空きの蟻の横っ腹に、2刀の木刀に纏った魔力を斬撃にして飛ばした。


“ブシャッ!”


「ギーーー!!!」


 斬撃によって蟻は真っ二つになった。


「よしっ! 後1匹……」


「ピー!」


“ザクザクッ!”


 俊輔が残りの1匹に目を向けると同時に、頭の上のネグロが、蟻に向かって風魔法を放った。

 その魔法によって、蟻の前足の2本を切り飛ばした。


「ギシャー!」


“ドサッ!”


 蟻は前足を無くし、バランスを崩した。


「おりゃーーー!!!」


 俊輔はその隙に数発の斬撃を飛ばし、最後の蟻を切り刻んだ。


「フー……!」


 突然群れと戦う事になり、どうにか倒せたことに、俊輔は座り込んで一息着いた。


「おっと! 休んでる場合じゃない! 魔石を取りだして置かないと……」


 島全体がダンジョンになっているここでは、生物が死んで15分経つと、吸収され消え去ってしまう。

 しかし、素材や魔石は魔法の袋に入れておけば消えることはない。

 なので、魔石は錬金術で武器の強化や物を造る時に必要になるので、なるべく取り出して魔法の袋に入れて取って置いている。


「ネグ、気を付けろよ……、昆虫系はしぶといからな……」


「ピ~♪」


 俊輔は、魔石取りを手伝うネグロに声をかける。

 ネグロはその言葉を聞いて、元気に返事した。

 俊輔が言ったように、昆虫系は頭だけでも攻撃をしてくる場合があるので、注意が必要である。


「フー! ネグ! 今日は一旦拠点に戻ろう。」


「ピー!」


 あの階層を突破する為に、色々作戦を考える必要を感じ、俊輔はネグロを連れて拠点に帰って考えることにした。

 ようやく島全体がダンジョンの攻略開始になりました。

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