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第56話

 拠点を得た俊輔だったが、これからの事を考え悩んでいた。


「外の魔物が強すぎるんだよなあ~……」


 先程見た巨大鹿やギガンテスは、まともに戦って勝てる相手ではない。

 それに他にどんな魔物がいるのかも分からない。


「まずは武器でも作るか?」


 先程手に入れた鹿の角を取りだし、錬金術で武器に変える事を考えた。


「ハッ!」


“パアーー!!”


 俊輔は鹿の角の特徴を考えて、錬金術で槍を作ってみた。


「なんかスゲー刺さりそうだな?」


 槍は2メートル位の刺突特化の武器が出来た。

 その先っぽは鋭く尖り刺したらなんでも貫きそうである。


「試しに……」


 俊輔は近場にあった小さめの石を、槍で刺してみた。


“ザシュッ!”


「えっ?」


 俊輔が突いた石には、綺麗に槍の太さに比例した穴が空いた。

 それほど力を入れていないにも関わらず穴が空いた事に、俊輔は思わず声が洩れた。


「なんかスゲーのが出来たな」


 俊輔は取りあえず、この槍を使って戦う事にした。


「武器はこれで良いとして、次はネグの翼だ!」


「ピ~……」


 丸烏のネグロは、なくなった左の翼の部分を見て、悲しげな声をあげた。


「再生できれば良いんだろ? あっ!」


 肉体の再生を考えていたら、真っ先に思い付いたのはピ〇コロである。


「ネグ! ピ〇コロだ! ズバッと翼が生えるような想像をするんだ!」


「ピ~……?」


 変なテンションがあがった俊輔が、大雑把に説明するが、ネグロは首を傾げるだけだった。


「ん~……、やっぱ無理か?」


 いきなりピ〇コロと言われても、当然分かるわけない。


「ネグ自身が生やすんじゃなくて、俺が魔法で再生させる方が良いのかな?」


「ハッ!」


 魔力を手に集め、ネグロのなくなった翼の部分に手を添えて、ピ〇コロの腕が再生する映像を思い浮かべる。

 しかし、いくら経っても変化は起きない。


「ん~……、ピ〇コロじゃ駄目みたいだな?」


 ピ〇コロの腕再生のイメージでは、所詮アニメの話なのだから成功するのは無理な話である。


「もっと現実的に……、ん!?」


 そして、1つの方法が思い浮かんだ。


「別に1発で直そうとするのが間違いか?」


 思い浮かんだのは、トカゲの尻尾である。

 尻尾を切り離したトカゲは、少しずつ再生させてまたもとに戻る。


「取りあえずやってみるか……?」


 俊輔はネグロの翼が少しだけ再生するイメージで魔力を手に集め、ネグロのなくなった翼の部分に手を添えた。


「ぐおっ!!?」


 今度は成功したらしく、ネグロの翼がほんの少しだけ再生した。

 元々魔力の量には自信があった俊輔だが、錬金術で60%の魔力を使い、残りの40%がほんの少し再生させる事だけに、一気に持っていかれた。


「ピー♪」


「う~……、駄目だ。だるい。」


 ほんの少しだが翼が治った事にネグロは喜んだが、俊輔は魔力の枯渇によってそのまま眠ってしまった。





――――――――――――――――――――


 翌日目が覚めた俊輔は、懐にネグロを入れて、洞窟周辺の探索に出かけた。


「まずはここら辺の植物を調べるか?」


 洞窟のすぐ近くは、森になっている。

 俊輔は魔物がいないか注意しつつ、薬草や食べられる野草を探した。


「あっ! あった」


 森の中を探索していると、薬草を発見した。


「あれっ? なんかこの薬草……」


 見つけた薬草は、実家の村でよく見た薬草と姿形は同じだが、鑑定魔法で調べると魔力が、倍近く内包されているように見える。


「こんなのが普通に生えているって、この島どうなってんだ?」


 薬草はちょこちょこと生えているが、その全てが先程見つけた薬草同様高い魔力を内包しているようである。


「取りあえず持って帰って回復薬とか作るか」


 俊輔は、ある程度薬草を摘んで魔法の袋に入れた。


「!? 魔物だ」


 俊輔はかなりの範囲に探査魔法をかけていたので、遠くの方にいる魔物に見つかる前に、木の影に隠れた。

 その時見つけたのは、巨大な牙を持った猪だった。


「乙〇主かよ!?」


 まさにジ〇リの、もの〇け姫に出てきた乙〇主に似ている猪が歩いていた。


「しかも、また化け物かよ!」


 遠くにいる乙〇主を鑑定してみたら、これまた赤を通り越して真っ白に見えた。


「でも猪は良いな……」


 薬草のついでに手に入れた野草と、昨日の鹿肉があるので食料はあるが、できれば色々な食材を手に入れておきたい。


「そのうちたらふく食ってやるからな!」


 今現在では倒せそうもないので、木の影に隠れながら密かに誓った。


「ふ~、行ったか?」


 そして、猪が離れていったのを確認して俊輔は拠点の洞窟に帰った。


「たいして探索出来なかったな……」


 俊輔は昼食に、鹿肉と野草を使った料理をネグロと食べ、午後も洞窟の周辺を探索し、夕方になると洞窟に帰り、夕食をネグロと食べた後、回復薬を錬金術で作った後、ネグロの翼を再生する魔法を放って魔力枯渇で気を失う事を繰り返した。

 その毎日を繰り返しているうちに俊輔は、自然と魔力量がぐんぐんと増えて行っていた。

 なかなか進まなくてすいません。

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