第55話
すいません。遅くなってしまいました。
どうにか魔物に会う事無く、俊輔は岩場にたどり着いた。
「どっかに洞窟でも無いかな?」
まずはこの島で生きて行く事を最優先の目標にした俊輔は、雨、風が凌げる洞窟を探した。
島を一周して気付いたのだが、ここの岩場は海にも近い為、魚を捕まえるのに良さそうだった。
その為、拠点にするならここだと真っ先に思い付いた。
「おっ?」
岩場を探していたらちょうど良い洞穴を見つけた。
「ここなんか良さそうだな……」
中に何か魔物でもいたらまずいので、俊輔は入口から探知魔術をして中を調べた。
「どうやら中に魔物はいないみたいだな」
洞穴の中に生物の反応は無かったので、俊輔は中に入っていった。
奥に行くと4畳位の広さの場所に行きついた。
「これだけの広さがあれば十分だな。後は竈と煙突を作るだけだな」
外で煮炊きしている時に魔物に会ったら最悪なので、中で煮炊きできるように竈を作る事にした。
「はっ!」
密閉されたこの空間で火を炊いたら煙を吸い込むこと間違いないので、少し光が漏れている場所に土魔法で煙突を作り、更に簡単な竈を煙突の下に作った。
「これでよし、ここを拠点に少しずつ島を探検しないと……」
飲み水は魔法で出せるし、近くの海で魚を取ればしばらく大丈夫だろう。
「そうだ!、魔物が来ないように入口を閉めとくか……」
“ゴゴゴゴゴッ!”
先程見たギガンテスは大きさ的には入ってこれないだろうが、他にどんな魔物がいるか分からないので、覗き穴と空気が出入りする程度の隙間を作って入口を土魔法で閉じた。
「ふ~、そうだ、大丈夫かネグ?」
懐にいれていた丸烏のネグロに、俊輔は話しかけた。
「ピ~……」
俊輔の作っていた回復薬で傷は塞がっていたのだが、ネグロは片翼を無くし元気のない声を出した。
「脱出方法と、魚以外に食料を探すのと、ネグの翼を治さないとな?」
今現在、俊輔の回復魔法では無くなったネグロの翼を再生させることは出来ない。
しかし、昔村に来たペドロとニコラスに教わった基礎魔法と、後は独学で魔法を訓練してきたので、魔法は創造力と魔力次第で大体の事は可能にできると思っている。
赤ん坊の頃から増やしてきた魔力と、前世の知識を使えば、再生魔法も使えるようになると俊輔は考えている。
“ドンッ!”
「!!? 何だ!?」
洞穴の外から大きな音と振動が伝わってきた。
俊輔は開けておいた覗き穴から外の様子を眺めた。
「ギガンテスだ! 他の魔物と戦ってる!」
先程のギガンテスかは分からないが、ギガンテスが鹿型の魔物と戦っていた。
普通の鹿の3倍近くでかい大きさの鹿で、立派に生えた角の先は、刃物を思わせるほど鋭利に尖っている。
「げっ! あの鹿も化け物じゃねえか?」
覗き穴から巨大鹿を鑑定したら、ギガンテス同様赤を通りすぎ白く見える。
今の俊輔では、まともに戦ったら恐らく勝てないレベルの魔物のようだ。
「ガーー!!」
ギガンテスが巨大鹿に向かって棍棒を降り下ろす。
“ズンッ!”
しかし、その攻撃を巨大鹿は躱す。
ギガンテスの棍棒は地面を叩き地を揺らす。
「ギャー!!」
棍棒を交わした巨大鹿は自慢の角でギガンテスの腹を突き刺しに行く。
“ブシュッ!”
角攻撃を躱したギガンテスだったが、躱しきれず左の横っ腹を裂かれ、血が吹き出した。
「グガー!!」
傷を付けられた怒りに任せて、ギガンテスは直ぐ様反撃に棍棒を振り回す。
“ブンッ!”“ブンッ!”
ギガンテスの単調な攻撃は巨大鹿には通じず、ことごとく躱される。
「ギャー!!」
ギガンテスの大振りの攻撃の隙間をついて、巨大鹿はギガンテスの体にじわじわと攻撃を加えて傷を負わせていく。
「グガガ……」
ギガンテスは切り刻まれ、次第に弱っていった。
「ギャー!!」
“ザクッ!”
巨大鹿は、とどめとばかりにギガンテスの腹に角を突き刺さし、貫いた。
「グガーーー!!!」
“ガゴンッ!!!”
巨大鹿の角を腹に突き刺さしたまま、ギガンテスは棍棒を降り下ろした。
その1撃で鹿の首がへし折れ死亡した。
“ドサッ!”
首がへし折れた鹿は、力無く地面に崩れ落ちた。
「グガー……」
“バタッ!”
勝ったはずのギガンテスも体中を傷だらけにし、角で貫かれた腹の穴から血が吹き出し前のめりに倒れ、息絶えたようだ。
「とんでもねえ戦いだったな……」
一部始終見ていた俊輔は、冷や汗をかきながら呟いた。
「あっ!! ネグ、ちょっとここで待ってろ!」
ある事を考えた俊輔は、ネグロを寝床に置いて、魔法で入口を開いて飛び出した。
「鹿肉♪、鹿肉♪」
俊輔は首の折れた巨大鹿の死体を捌き、鼻歌を歌いながら魔法の袋に入れた。
「魔石♪、魔石♪」
そして、倒れてるギガンテスの体から魔石を取り出し、これも魔法の袋にしまった。
「漁夫の利♪、漁夫の利♪」
自分自身が戦っていたら倒せたか分からない2匹の魔物の素材が、苦もなく手に入り俊輔はニコニコしながら寝床に帰った。
「ネグ! 夕飯は鹿肉料理だぞ!」
洞穴に帰り、入口を閉めて、寝床にいるネグロに、俊輔は捌いた巨大鹿の肉の塊を見せて微笑んだ。
「ピ~♪」
ようやくネグロも笑顔になり、嬉しそうな声をあげた。
「よっしゃ! 旨い料理食わせてやるからな!」
少し元気になったネグロに嬉しくなり、俊輔は魔法の袋から自家製の調味料を取り出し、調理し始めた。
まずい、このペースだと3章がめちゃくちゃ長くなりそう・・・




