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第54話

「1周したみたいだな……」


 海岸を歩いて1周した俊輔は、独り言を呟いた。


「そう言えば俺達以外の船員や乗客はどこ行ったんだ?」


 ネグロを探した時、船の残骸の中には人の気配はなかった。

 気配どころか遺体すらなかった。


「ん? 何だ?」


 海岸から沖を見たらなにか違和感を感じた。

 なにか透明な壁のようなものが、海岸から100m位沖にずらっと立っているのに気付いた。

 その壁は上空にも張り巡らされているように見える。


「ドーム状になってるのか?」


 落ちていた石ころを拾って、魔力を纏わせ、その壁目掛けて全力投球した。


“ガンッ!”


 魔力を纏わせた石ころは、2・300㎞近い速度が出ていたと思うが、全く意味がなかった。


「結界か? って事はここはもしかして……」


 昔村長の家で読んだある本の内容を思い出した。

 しかし、それはないだろうと心のなかで否定した。


「ちょっと試してみるか?」


“ボッ!”


 俊輔は今度は魔闘術を発動して壁に向かって全力でキックをかました。


“ドガンッ!”


「ぐっ!? やっぱ駄目か?」


 どうやら壁は壊せそうになかった。


「どっか壁が無いとこないのか? このままじゃ島から出て行けないじゃん」


“ク~……”


 朝から歩きまわって島を1周した為、とっくに昼は過ぎて現在は3時位だ。


「腹減ったし魚でも食うか?」


 魚も壁の外から入って来て、壁にぶつかり外に出れなくなっている。

 その魚を捕まえて、船の残骸を薪にして、火魔法で火をつけ、魚を焼いてネグロと食べた。


「もしこの島全体がダンジョンなら……」


 思い出した本の内容は、島全体がダンジョンになっている島の事である。

 俊輔は、まさかと思いつつ試してみることにした。

 簡単な実験、食べ終えた魚の骨を地面に置いて放置した。


“スッ!!”


 約15分位たった頃一瞬にして魚の骨が消えた。


「消えた!? って事はやっぱり……」


 この現象が起きた事によって、島全体がダンジョンになっていると言うことが証明されてしまった。


“ガサッ!”


 これからの事を考えていたら、遠くの草むらの方からなにかが草を揺らす音がした。


「魔物か!? !!?」


 音が鳴った方を見た瞬間、俊輔は火を消して、音をたてないようにその場から離れた。


“ズンッ! ズンッ!……”


 腹に響くような足音が、さっきまでいたところに近づいていく。

 どうやら魔物に気付かれなかったみたいだ。


『おい、おい、あれギガンテスじゃねえか!?』


 俊輔は心の中で突っ込んだ。

 大きめの木で身を隠しつつ覗き見ると、そこには前世のゲームで良く見た、1つ目で緑色の肌の巨人が、片手に大木を削った棍棒を持って立っていた。

 大陸ではラ・プリメラ・ギガンテ(1つ目巨人)と呼ばれているAランクの強力な魔物だ。


『でも何か……、!!?』


 違和感を感じ、鑑定術でギガンテスを見てみたら化け物だった。

 この世界の鑑定術はサーモグラフィーのように見えるのだが、俊輔自身を基準にして強弱が分かるようになっているのだか、俊輔以上を示す赤を通り越して真っ白に見える。

 ここまでの強い魔物を、俊輔は見たことがない。


『何なんだ!? あんなの戦ったら即死亡だっての。』


 ギガンテスは魔物辞典を見た時、Aランクと書いてあったはずだが、今までに何度か見たことのあるAランクの魔物と比べて強さが全然違う。


“ズンッ! ズンッ!……”


 そして、前回の冒頭の通りギガンテスが去っていった。


「何なんだ此処は……」


 俊輔は、冷や汗を大量に掻きながら、木に寄りかかり呟いた。


「こんなところにいたらまずいな……、取りあえず安全な寝床を確保しないと……」


 いつまたギガンテスに会うか分からないし、この島から出て行く策を考えるにしても、安全な場所を探さないといけない。

 俊輔は寝床を探しに、なるべく音をたてないように岩場の方へ向かって行った。

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