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第53話

 明けましておめでとうございます。今年最初の投稿です。今回から3章になります。

〝ズンッ! ズンッ!……”


 腹に響くような足音が次第に離れていく。


「フー……」


 遠ざかっていく足音を聞き、ようやく安心をして、体を隠していた木に寄りかかり座り込んだ。


「何なんだ此処は……」


 俊輔は度重なる出来事に、思わず愚痴を呟いた。







――――――――――――――――――――


 奥電から官林村へのんびりと向かう道中、京子が話しかけてきた。


「ねえ、俊ちゃん、ネグちゃん」


「ん!?」


「ピッ!?」


 横を歩く京子に俊輔と丸烏のネグロは顔を向けた。


「この5年間どこで何していたの?」


“ピタッ!”


 京子の質問に、俊輔は急に足が止まる。


「? どうしたの?」


「いや~、ちょっと昔を思い出して……」


「ピ~!」


 俊輔とネグロは、苦虫を噛み潰したような顔をしつつ答えた。


「官林村まで1週間はかかるんだから、時間あるし教えてよ」


 はっきり言って、俊輔とネグロだけならば今日中に官林村に帰る事が出来るのだが、急ぐ旅でもないのでのんびり帰る事になった。


「え~、仕方ないな~」


 俊輔は渋々、官林村を出た後の事を話始めた。







――――――――――――――――――――――


〝ザーー……、ザーー……”


「うっ……」


 5年前のあの日波に飲み込まれ、上下が分からぬまま気を失ってしまった。

 そして、俊輔は流れ着いた海岸で目を覚ました。


「ゲホッ! ゲホッ!」


 俊輔は大量の海水を吐き出した。


「う~、気持ち悪い~」


 海水を吐き出したが、まだ気分は優れず、砂浜で大の字になり空を見上げた。


「…………何なんだよあの野郎」


 俊輔は、船の上で見た海面に立っていた男を思いだし、じわじわと怒りが込み上げてきた。


「…………あっ!」


“ガバッ!”


 俊輔はあることを思いだし、勢いよく起き上がった。


「ネグ……! ネグロー!!」


 俊輔は、一緒にいたネグロが見あたらない事に気付き、周りを見渡した。

 しかし、俊輔同様流れ着いたのは、船の残骸だけでネグロの姿は見つからない。


「居たっ! ネグ!!」


「……ピ、……ピ~」


 俊輔は探知魔術を発動して、船の残骸に埋もれた場所でネグロを発見した。

 ネグロは俊輔の声に弱々しい声で返事をした。


「ネグロ!! 大丈夫か!? 今助けるぞ!!」


 俊輔は、ネグロの上に乗っている船の残骸をどかして、ネグロを助け出した。


「…………ネグ、翼が………」


 助け出したネグロの左の翼が、根元から無くなっていた。


「…………ピ~」


 ネグロも片翼が無いことに気付き、弱々しい声で鳴いた。


「くそっ! 翼が無くても気にするな……って言っても無理か、取りあえず回復薬だ」


 腰に付けていた魔法の袋は、流される事なく腰に付いたままだった為、中から以前つくって置いた回復薬を取りだし、ネグロに飲ませた。


「大丈夫か? ネグ、取りあえず懐に入って安静にしてろ!」


 俊輔はそう言って、回復薬によって傷が塞がったネグロを懐に入れた。

 因みに、昔の日本のような国の日向で育った俊輔は、現在作務衣を着ている。


「ところで此処は何処なんだ? 日向の国に戻されたのか? それとも大陸に着いたのか?」


 頭に浮かんで来た疑問を、思わず独り言のように呟いた。


「取りあえず……」


 先ず、この周辺の地形を探知魔術で調べてみた。


「ん~、この周辺に人は居ないな?」


 探知魔術に引っ掛かる生物はいなかった。


「海岸を歩きながら探してみるか?」


 俊輔はそう呟いて、海岸を歩いて見て回る事にした。

 最初3章は大陸編を書こうとしたのですが、俊輔とネグロの5年間を先に書いて置こうと思います。

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