第49話
今回で2章終了する予定だったのですが、ちょっと長くなってしまい、途中の感じで終わってしまいました。
昔の面影を残したまま、5年の月日によって背が伸び、京子が見上げる形になった俊輔が立っている。
「俊ちゃん……?」
京子は、まるで幽霊でも見るような目で俊輔を見つめる。
「おう、久し振り」
俊輔は、京子に軽い返事で返す。
「ん!? 何だその反応?」
俊輔の事を見つめたまま固まったようにしている京子の反応に疑問の声をかけた。
「だって……、ネグちゃんもさっき……」
先程ネグロに俊輔の事を問いかけた時、落ち込んだ表情をしたネグロの事を思い出した。
「ピー、ピピピー、ピピー!」
「えっ? あっ、あぁ~」
従魔契約をしている俊輔とネグロは、念話で会話をする事によって、ネグロのさっきの反応の理由を聞いた。
「ネグちゃん何だって?」
ネグロとの念話の事を京子が聞くが、俊輔は言いにくそうな顔をする。
「いや……、お前が大変な時だって言うのに俺がさ……」
「俊ちゃん……が?」
俊輔の歯切れの悪い話を、京子は真剣な顔で聞く。
「……寝坊したって言いづらかったってさ」
「………………えっ!?」
京子は俊輔の言ったことを、頭の中で何度も回転させると、じわじわと怒りが沸き上がってきて思わず低い声が出た。
「……いや、……その、俺にも色々あってさ……」
京子の醸し出す怒りのオーラに、俊輔はますます歯切れの悪い口調になる。
「……京子! 詳しいことは後回しだ! 取り合えず城に戻るよ!」
2人が話をしてるのを遮って、篤が指示を出した。
「…………はい! わかりました」
京子は俊輔に聞きたい事が山程あったのだが、仕方なく篤の指示に従った。
取り合えず会話が中断した事に、俊輔は密かに胸を撫で下ろした。
「小僧!! あんたにゃ聞きたい事がある。その丸烏と一緒について来な!」
「……へいへい」
篤について来るよう言われた俊輔は、面倒臭そうに返事をし、大人しくついて行った。
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生き残った八坂の隊と戦姫隊は、同竜城に戻って戦の勝利を皇太子に報告した。
報告には、魔物を殲滅した張本人であるネグロと、その主人として俊輔も加わった。
俊輔はただ座っていただけで、ほとんど何も話さずにすんだ。
そこで今回の戦によって、親王派の大大名である南の香取、中央の藤代は八坂と戦姫隊の美代が討ち取り、東の池島は魔物の群れに飲み込まれ、北の羽田はトマスと呼ばれる冒険者によって死亡した事が報告された。
更に斥候の調べによって、泉談親王もトマスによって殺されていた。
これによって、長く続いた戦は終了を迎え、条遼皇太子が次期天皇として即位する事が決定した。
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皇太子への報告後、頭にネグロを乗せた俊輔は、同竜の城の篤の部屋に呼び出された。
篤の部屋には篤の他に、京子が不機嫌そうな顔をしながら座っていた。
「まあ~、そこ座りな」
「はいよっ」
俊輔は篤に指示された座布団に座った。
「んで? 婆さん何が聞きたいの?」
この国において重鎮とも言える篤に対して俊輔は、軽い感じで質問した。
「ちょっと俊ちゃん! 篤様に向かってその言葉使いは駄目だよ!」
「別に構わんよ京子、最近こんな感じで受け答えする小僧は新鮮で気分がいいねぇ~」
篤に対して軽い俊輔に京子が注意するが、篤は機嫌が良さそうに制止した。
「さて、たしか俊輔だったねぇ~、5万の魔物を一瞬で吹き飛ばす丸烏なんて聞いたことないねぇ~」
「鍛えた」
篤が真偽を確かめる為に、真剣な顔で俊輔を見ているが、俊輔は短い言葉で返した。
「鍛えたって、言ったって限度ってもんがあるだろ~?」
「すげー頑張った」
「俊ちゃん!! 真面目に答えてよ!!」
「ええっ!? 真面目に答えてっけど?」
篤の質問に答える俊輔だが、その内容がふざけているように聞こえた京子が俊輔を注意する。
しかし、俊輔としても真面目に答えてるつもりだ。
その態度に京子は更に不機嫌になっていった。
「で!? 寝坊ってどう言うこと?」
我慢も限界に来たのか、京子が低い声で俊輔に聞いた。
次回に続きます。




