第48話
今年から書き始めて、もう残り1ヶ月です。
「終わったのか……?」
魔物の大群により、ほぼ壊滅状態だった親王派の残存兵を討ち取り八坂は呟いた。
負け確実のこの戦が開戦するまでは、死を覚悟していたのだが、まさかの勝利にじわじわと喜びが沸き上がってきた。
「我々の勝利だーーー!!!」
右手の拳を高く上げ、八坂は大声をあげた。
「「「「「「おおーーー!!!」」」」」」
生き残った八坂の兵達と戦姫隊の隊員も、八坂の発言を聞き、歓喜の声をあげた。
「八坂様、我々は篤様と京子のもとに向かいます」
戦姫隊副総長の美代は、八坂に向かって発言した。
「あぁ、あちらから何が起きたか分からんが篤殿の事は頼むぞ」
「かしこまりました。戦姫隊! 篤様と1番隊隊長のもとに向かうぞ!」
「「「「「はいっ!!!!!」」」」」
美代が八坂に声をかけて、戦姫隊は京子達のもとに向かった。
――――――――――――――――――――
「ありがとう、ネグちゃん!!!」
魔物の大群を殲滅し、この戦を勝利に導いたネグロを、小さい頃と同じように京子は撫でまわした。
「ピ、ピーー♪」
京子に誉められ、撫でられ、ネグロは嬉しそうに声をあげた。
戦に勝った喜びと、ネグロの強さの驚きに感情が高まっていた京子だったが、少しずつ冷静になり始め、ネグロを見た時から奥にあった大きな疑問を、意を決して聞く事にした。
「ネグちゃん……」
ネグロの答えを聞きたい気持ちと、その反面最悪の予想が混ざり合い、京子は小さい声になった。
「ピー?」
京子の不安や期待が混ざり合った表情を見て、ネグロは首を傾げた。
「しゅ、俊ちゃんはどうしたの?」
ネグロが生きていたのだから、もしかしたら……、という思いから京子はネグロに聞いた。
「ピッ!?、ピ~⤵」
「!!?」
“ポロッ”
京子の質問に、落ち込んだ表情をしたネグロを見て悟った京子は、声を出さずに涙を流した。
「京子!!」
「!? 美代様!?」
しかし、美代達戦姫隊が現れた為、すぐに気持ちを切り替えられた。
「隊長! 無事で良かったです!」
「桜! 皆! 無事のようですね?」
京子を慕っている桜が、勢いよく京子に抱きつき、それを受け止めた京子は、戦姫隊の隊員を見て多少の怪我と汚れがあるものの無事であることに安堵した。
「隊長! その丸烏は……?」
「もしかして先程の攻撃をしたのは……?」
京子の肩に止まっているネグロを見て、桜と美代が問いかけた。
「この子が魔物達を倒した攻撃を放った丸烏のネグロです」
「ピー!!」
京子の説明と紹介にネグロはどや顔をした。
「この子が……」
「ただの丸烏が……、それよりも……」
「「「「「かわいい!!!!!」」」」」
戦姫隊の隊員はネグロを気に入り、揉みくちゃにされ始めた。
――――――――――――――――――――
「ん!? 婆さん大丈夫かい?」
戦姫隊の隊員達が、京子とネグロに群がっているなか、横になっている篤のもとに1人の男性が現れた。
「ん!? ああ、回復隊員かい~?」
「ん!? まあいいやそれで、取り合えず骨繋げるな!」
“ポワッ!”
「!? 珍しいねぇ~、回復魔法の使い手かい?」
京子の回復薬は傷を塞ぐだけで、折れた骨はそのままである。
日向の国では魔法を使う人間は少なく、更に回復魔法を使う人間はもっと少ない。
篤は八坂の部下の回復隊員に回復魔法を使う人間がいるとは思わなかった。
因みに回復魔法がない場合、骨折は普通に木などで固定して、自然と付くのを待つだけである。
――――――――――――――――――――
「ピ~、ピッ!?」
戦姫隊の隊員に揉みくちゃにされていたネグロが、嬉しそうな顔から何かに気付いた顔をした。
「ん!? どうしたのネグちゃん?」
その事に気付いた京子はネグロに問いかけた。
「ピピー!」
“パタパタッ!”
「「「「「あっ! ネグちゃん」」」」」
京子の肩からゆっくりと飛び上がり、篤のいる方へ向かって飛んでいった。
戦姫隊の隊員達も、もっと撫でたかったのか急に飛んでいったネグロを追いかけた。
“パタパタッ!”“ポスッ!”
ネグロは、篤を回復している男性の頭の上に降り立った。
「……えっ!?」
京子は、ネグロが頭に乗った男性の後ろ姿を見て、思わず声が出た。
「はいよ! もう全部くっついたぞ婆さん」
男性はそう言って立ち上がり振り返った。
「ん!? よっ、京子! 久し振り!」
ネグロが頭に乗った男性は、俊輔だった。
ようやく主人公登場!、作者は天の邪鬼な部分があり、「ピンチに主人公登場!」という形で出したくなかったので、このようなしれっと出る形になりました。
次回から、3章に行くのか?、もう1話書いてから3章にするのか?、3章は自分の中で2つあるルートのどちらにするのか?、未だ未定ですが、今後とも読んで頂けると光栄です。




