第45話
話をちょっと先に進める為、京子vs金藤の戦闘が短くなってしまいました。本当はもうちょっと長く書きたかったのですが……
「はぁー!」
京子は、最初の様子見から一転して一気に加速し、金藤に斬りかかった。
「ハッ!」
“キンッ!” “キンッ!”
京子の速度を上げた攻撃を金藤は、止めることだけに集中する。
「どうした? 守ってるだけでは私には勝てないぞ?」
京子は守り一辺倒の金藤に攻撃をしながら問いかけた。
“キンッ!”
「うるせえな! てめえの速さに馴れるまで待ってろ!」
金藤は、ほんの少しずつだが京子の速度に馴れてきたのか、京子に反論した。
「待つ訳ないだろ馬鹿!」
京子はボクシングで言うところのヒット&アウェーで攻撃をしていたが、そのリズムを少し変えた。
“キンッ!”“ドカッ!”
「痛っ!」
京子は、木刀の攻撃と足技による打撃をする事で、金藤にダメージを与えるように変えた。
“キンッ!““バシッ!”
「痛っ! たくっ、足癖の悪い女だな!」
金藤は、木刀の攻撃は防いでいるが打撃にはついていけないでいた為、受け続けていた。
『堅いな……、打撃が当たっても少ししか効かないみたいだな?』
京子は金藤に打撃を当てまくるのだが、金藤の防御力が高く、効果が少ししか無いことに内心焦っていた。
八坂の軍と戦姫隊は篤の援護を期待しつつ待っている、と言うよりそれしか希望がないまま懸命に戦っている。
篤が戦えない状況の今、自分が篤の分も補わなければと思っていた為、金藤を一刻も速く倒したい。
『さっさと決めないと……』
京子はこのままでは時間がないと、金藤がまだ自分の速さについて来られない内に勝負を決めようと思った。
“スッ!”
京子は金藤から間合いを取り、居合い体勢になり、魔力を高め出した。
「はぁ、はぁ、おっ! 何かやる気か?」
金藤は京子の攻撃を防ぐ為に体力を使い、息切れしつつ、京子が何かしてくると分かり何故か笑顔になっている。
“フッ!”
京子が金藤に向かって走り出した。
今まで以上のあまりの速さに、金藤には消えたように見えた。
「瞬連殺!!!!!」
“ガガガガガガガッ!!!!!”
金藤の懐に入り京子は技を放った。
京子の瞬連殺は、自分の速さを生かし相手に接近して、魔力を込めた木刀を、まず居合いで相手の右脇腹を打ち、返す刀で左脇腹、次に右腕・左腕、更に右足・左足、最後に鳩尾に突きを叩き込み吹き飛ばす、京子の必殺技である。
“ドサッ!”
京子の攻撃をまともに受けた金藤は、その威力に数メートルほど飛ばされ仰向けに倒れる。
「はぁ、はぁ、はぁ、篤様、皆のもとへ行きましょう」
大量の魔力を消費し息切れしつつ、勝利を確信した京子は、篤に向かって歩き出した。
「ガハハハ、ハハハッ!」
「!!?」
急に、仰向けに倒れた金藤が大声で笑い出し、京子は慌てて金藤の方に振り向いた。
「なっ!?」
金藤が笑いながら、ゆっくりと立ち上がった事に京子は驚いた。
自分の攻撃をまともに受けたはずなのに、死ぬ訳でも、気を失う訳でもなく立ち上がれる金藤に得体の知れない汗が流れた。
「はぁ、はぁ、痛てててっ、あばらがやられちまったな。痛っ! 左腕もヒビ入ってるかな?」
金藤は自分のダメージを確認するように、体を動かした。
「はぁ、はぁ、あんた化け物か?」
かなりの痛手を与えたはずなのに、あばらと左腕だけにしか痛手を負っていない金藤に、京子は思わず呟いた。
“パンッ!”“パンッ!”
「はぁ、はぁ、それはお互い様だろ? さっきの攻撃にどんだけ魔力込めてんだよ? 痛てっ……」
金藤は、服についた埃を落としながら反論した。
「はぁ、はぁ、あと少し魔力を高めるのが遅かったら、こんなもんじゃ済まなかっただろうな?」
金藤は京子の瞬連殺を受ける直前、体に纏う魔力を一気に高め、ダメージを無理やり押さえ込む事に成功したのだった。
しかし、京子が込めた魔力もかなりの量であった為、それまでに受けた足技による打撃のダメージが残っていた場所にかなりの痛手を負ったのだった。
「はぁ、はぁ、魔力がごっそり無くなっちまったじゃねえか!」
京子が攻撃に魔力を大量に使ったのと同様、金藤も防御の為に魔力を大量に使った為、息切れしている。
「はぁ、はぁ、仕方ない!」
“スッ!”
本当はこれ以上魔力を使いたくないのだか、それ以上に時間がない。
その為、京子はもう一度瞬連殺の体勢に入った。
「はぁ、はぁ、おいおいっ、さっきと同じ技をまたやろうって気か?」
金藤は、京子の体勢を見て少し焦ったような声を上げた。
“フッ!”
魔力を高めた京子は、また消えたように金藤に向かって行った。
“ニッ!”
それを見て金藤は、片方の頬をつり上げた。
“ズンッ!”
「!!?」
金藤の懐に入り瞬連殺を開始しようと最後の一歩を踏み込んだ瞬間、踏み込んだ部分の地面が陥没し、京子が体勢を崩した。
「滅殺斬!!」
隙が出来た京子に向かって金藤は莫大な魔力を纏った刀で左切り上げを放った。
京子は技を中止して、金藤の攻撃を防ぐ為に木刀を構えた。
“ドーーーン!!!”
「がっ!!!」
“ドンッ!”“ドサッ!”
京子は吹き飛び、地面に叩きつけられ弾んだ後半回転して、うつ伏せに倒れた。
金藤の攻撃を受け止めた木刀は、へし折れて真っ二つになってしまった。
「はぁ、はぁ、まさかここまで魔力使うとは思ってなかったぜ!」
そう言って金藤は京子のもとに歩き始めた。
「はぁ、はぁ、おいおいっ、死んでねえよな? 折角峰打ちにしたんだからよ。それにしても予想通り魔法の攻撃を警戒しないなんてな?」
金藤の言った通り京子が懐に入るタイミングで初級の土魔法で地面を陥没させ、京子の体勢を崩し峰打ちで攻撃をしたのだった。
「はぁ、はぁ、全く同じ技を放ったら、そりゃ、そうなるって……、おっ!?」
“ズッ……”
“ズズズッ……”
「ぐっ……! ま…まだだ、私は……貴様を倒して……、皆のもとへ……」
京子は折れた木刀を支えにしながら、ボロボロの体で立とうとする。
しかし、自慢の足は左足が折れていて、とても闘える状態ではない。
「はぁ、はぁ、良いね。そのしぶとさ」
顔をにやけつつ金藤は、ボロボロになりながらも闘おうとする京子を見ていた。
“スッ!”
「金藤様!」
京子との決着がついたこのタイミングで、トマスが金藤の近くに現れた。
「はぁ、はぁ、おおっ! トマス来たか?」
「はい、もうすぐ到着するはずです」
「おうっ、報告ご苦労」
金藤とトマスの言葉に嫌な感覚がして、京子は思わず質問した。
「何が…だ?」
“ニッ!”
「はぁ、はぁ、見てみな嬢ちゃん……」
京子に笑顔を見せて、金藤はある方向を指差した。
「そん……な……」
京子は金藤が指差した方向を見て絶望した。
「第3陣のお出ましだ!」
そう、金藤が指差した方向から何かが土煙を上げて向かって来ている。
しかし、その方角は敵が陣を敷いていた方角、つまり敵の援軍でしかない。
その事が分かった為、京子は絶望したのである。
「ハァーハハハ、残念だったな嬢ちゃん。だが安心しな、他はともかくお前は俺が可愛がってやるからよ! ハァーハハハ」
金藤は、京子が絶望に打ちひしがれた表情をした事に高笑いをする。
“ザクッ!”
しかしそこで、金藤は刀で背後から貫かれた。
そして訳が分からず金藤がゆっくりと背後に顔を向ける。
「なっ……!? 手、手前! トマス……、ぐっ……!」
金藤は血液が溢れ出す傷口を押さえつつ、トマスを睨み付ける。
「金藤様お疲れ様でした。ここまで良く私の思い通りに動いてくれました」
そう言って、トマスはにこやかに微笑んだのだった。
次回いよいよ……




