第44話
申し訳ありません。また遅くなってしまいました。
SSSランク冒険者の金藤慎之丞、親王派を最悪な状況から、現在の皇太子派を追い詰めた張本人である。
「お前があの金藤慎之丞なのか?」
京子は、親王に次ぐ重要人物が最前線に現れたことに、不審を抱きつつ尋ねた。
「あのが、何を指すのか分からねえがSSSの冒険者で、一応親王派の大将の金藤だ」
金藤は何故かどや顔で京子の質問に答える。
「SSSの冒険者がどんな人間かと思ったら、どうやら只の脳筋て訳か?」
金藤は日向の国では有名な人物で、その人物像は色々な噂が流れていた。
金藤の出身地である北の地域の人間でも一部の人間しか会った事が無かった為、南の地域にいる京子達の耳には、噂が多すぎて全く想像がつかなかった。
その為、京子はある程度頭の良い人物を想像していたが、今目の前にいる本人は一間(約180cm)位の身長で筋骨隆々、体の所々に傷跡の残るまさに戦闘馬鹿と言った印象だ。
「失礼な奴だな。あまり人を見た目で判断するなよ」
金藤は京子の率直な言葉に軽く突っ込む。
「まぁ、俺の事はともかく、お前さんは噂通りいい女だな」
金藤は京子の体を上から下まで舐めるように眺める。
「戦闘馬鹿なだけでなく、見た目通りの下品な男のようね」
京子だけでなく戦姫隊の女性達は完全な男社会で生きている為、こういった下品な視線や言葉には馴れている。
しかし、馴れているとはいえ不快なものは代わりない。
「ひでえな。まぁ、これからじっくり俺の良さを教えてやるよ」
“ボウッ!!”
金藤はにやけた顔で話ながら、刀を鞘から抜いて正眼の構えをとり、濃厚な魔力を纏った。
「!!? 腐ってもSSSって訳ね」
“ボウッ!!”
京子はその魔力を見て、金藤が馬鹿は馬鹿でも只の馬鹿でないことに気付き、気を引き締め魔力を纏った。
「腐ってねえよ。全く、取り敢えず言葉遣いから教えてやらねえと、な!」
“バッ!”
金藤は最後の言葉と同時に、京子に向かって飛び出した。
「オラッ!」
“タンッ!“
金藤が唐竹を放つ前に、京子はその場所から横に飛び退いた。
“ズザンッ!!!!!”
「!!?」
京子は、金藤が降り下ろした刀の先の地面が切り裂かれたのを見て、その威力ではなく金藤の技術に驚いた。
何故なら、刀を振り上げた時は、刀に地面を切り裂くほどの魔力を纏ってなかったにも拘らず、
降り下ろした一瞬だけ纏う魔力を強めるという、極めて微細な魔力の制御を、見た目大雑把そうな金藤が、当たり前のようにおこなった為である。
“タンッ!”
「はっ!」
京子はすぐさま、唐竹を放った金藤に向かって魔力を纏った木刀で袈裟斬りを放った。
「おっと!」
“キンッ!”
京子の攻撃を危なげ無く刀で受け止める。
“ギリギリッ!”
「速度特化な動きだな? 怪我したダビドじゃ、そりゃ相手にならんわ」
京子の攻撃を受け止め、そのまま鍔迫り合いになったが、金藤の方が腕力がある為、平然と話した。
「ちっ!」
“タンッ!”
京子は、平然としている金藤の様子に舌打ちをして距離をとる。
“タンッ!”“タタンッ!”“タンッ!”
金藤が言った通り、京子は今まで速度を重点的に鍛えてきた。
その為、京子は金藤に対して速度を上げて撹乱するために右や左にステップを刻む。
“タタンッ!”“タンッ!”
「おっ!」“キンッ!”
「とっ!」“キンッ!”
京子の、金藤の死角へ周っての攻撃を金藤もなんとか防ぐ。
「この速度についてこれるなんて、中々やるわね!」
京子は、かなりの速度でかき回したつもりだが、金藤がついてこれている事に感心した。
「そいつはどうも」
金藤もまだ少し余裕があるように刀を構える。
「でも、私は他にもまだたくさんの数を相手にしないといけないのよ。あんた相手に時間をかけてる暇はないわ」
「そうだろうね。それで……?」
金藤は、京子の言うことにしれっと答え、続きを促す。
「だからさっさと本気で来なさい!」
“ボウッ!”
京子は先程よりも、大きく濃密な魔力を纏い金藤を煽った。
「しゃーねーな!」
“ボウッ!”
「お前は俺の女になるんだから死ぬんじゃねえぞ」
金藤も本気になったらしく魔力を上げた。
「誰があんたの女になるか! あんたはここで死ぬんだよ!」
“シュンッ!”
金藤が本気になったのを確認した京子は、そう言って先程よりも高速で金藤に向かって行った。




