第43話
遅くなって申し訳ありません。
「大将、香取の首取ったぞぉーーー!!」
京子が篤のもとにたどり着く少し前、皇太子派の総大将の八坂英典が、敵軍第1陣の大将首、香取の首を取り高らかに声をあげた。
「おおー、さすが八坂様、我々も功をあげるぞーー!!」
八坂英典が大将首を取った事で、八坂の軍は最初の人数から1000人位に減ったのにも関わらず、士気は上がっていた。
「大将、藤代の首、戦姫隊美代が打ち取りましたーーー!!」
敵先陣のもう1つの大将首を打ち取り、声があがった。
「美代!?」
大将首を取ったのが皇太子の護衛を任せた戦姫隊の美代だった為、八坂は声があがった方に顔を向けた。
「八坂様!! 敵軍第2陣の接近により援護に参りました!!」
美代は八坂のもとに向かい、援護に来たことを説明した。
「京子が直に篤様を連れてきます! それまでどうにか持ち堪えてください!」
「分かった! 何としてでも持ち堪えるぞ!!」
「はいっ!」
八坂と美代は気合いを入れ直し、敵第1陣の残党と第2陣に向かって行った。
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「あんたが戦姫隊の京子だな?」
八坂の軍と戦姫隊が敵第2陣と戦闘を始めた頃、篤のもとに現れた京子にダビドが尋ねた。
「篤様!!」
ダビドの質問を無視して、京子は傷だらけの篤の容体を確認した。
「……げほっ、げほっ……、き、京子かい? なんで、ここに……?」
篤は内臓を痛めているのか、口から血を吐きながら京子に尋ねた。
「本当にすげえ婆さんだよな? 俺の攻撃を受ける直前に、右腕を犠牲にして直撃を躱すなんて……」
ダビドが言った通り篤はダビドの攻撃を受ける直前右腕で体を守ろうとした。
しかしその攻撃の威力は腕だけで抑えきれず、篤の右あばら骨数本をへし折った。
そして直撃を受けた右腕はへし折れ、骨が皮膚から飛び出す、いわゆる複雑骨折により、大量の出血をしていた。
「くっ! 篤様……」
傷だらけの篤を見て、京子はすぐに治療をするため魔法の袋から小瓶に入った回復薬を取り出した。
「篤様! 回復薬です! 飲んでください!」
京子は篤の口に回復薬をゆっくり流した。
「ぐっ!」
篤はただ液体を飲むだけなのだが、苦しそうに飲みほした。
回復薬の効力により体中の傷が塞がった。
「篤様! 回復薬は傷が塞がるだけです! ここでしばらく安静にしていて下さい!」
“スッ!”
「隙だらけだぜ!!」
篤を回復させていて隙だらけの京子に、ダビドは背後に回り魔力を纏った拳を降り下ろした。
“ドゴンッ!!”
“ドサッ!!”
攻撃を受けて吹き飛び、地面に叩きつけられた。
「グハッ!」
攻撃を受けて口から血を吐くダビド。
「傷だらけのお前ごときに、私がやられる訳ないだろ!」
ダビドが背後から拳を降り下ろした攻撃に合わせて、京子は交差法で木刀を胴に叩き込んだ。
「……グッ、ハ、ハハ、こいつは参った。あんた婆さん以上に化け物だな……?」
京子の攻撃で多大な痛みを受けつつも、ヨロヨロと立ち上がるダビド。
「ハ、ハハ、金藤さんの読み通りだったみたいだな……、あんた噂通りだ」
「噂!?」
京子はダビドの呟きに引っかかりを覚えた。
「日向の国で最強の剣士で、見た目もいい女だって噂だよ」
「……敵のあんたらに誉められても嬉しくないね」
ダビドの言葉もばっさり切り捨てる京子。
「ハ、その噂のせいで、色んな意味で最悪な人に目をつけられたけどな?」
「最悪な人?」
京子は、誰の事だか分からず首を傾げる。
「!!?」
しかしすぐ後、こちらに向かって来る強大な魔力に冷や汗が流れた。
「気付いたか? 相変わらずふざけた魔力してるぜ」
“ドンッ!!”
「おおっ! ボロボロだなダビド?」
あっという間に、京子達の前に金藤がたどり着いた。
「もう限界っすよ、予定通り戦姫の京子を引っ張り出したんで、休ませてもらいますね?」
「おうっ! ご苦労さん。清とアルベルトと一緒に休んでな!」
金藤に言われて、清とアルベルトの方にヨロヨロと歩いていくダビド。
「さてと……、戦姫の京子! 俺は金藤慎之丞だ! 勝負しようぜ!」
金藤は、嬉しそうに刀を抜いて京子に話しかけた。
ようやく次回、金藤対京子の闘いにまで持ってこれました。




