第37話
「篤様……」
京子は、篤が2人の男と闘い始めたのを、同竜の城から見ていた。
京子の目から見ても、篤と闘っている2人がかなりの実力を有しているのが分かる。
「心配するな、京子」
「美代様……」
京子の不安が顔に出ていたのか、戦姫隊の副総長の美代が話しかけた。
「確かにあの2人はかなりの実力だが、篤様の方が魔力、技術、経験は上だ」
「そうですね……」
確かに京子も、篤があの2人より上だとは思っている。
しかし、何故か嫌な予感がしてならない。
そもそも何故あれほどの実力の2人が、敵の先陣に現れたのか?
篤が出て来たのを気付いて出て来たにしては、早過ぎる気がする。
京子は答えが見つからないまま篤の闘いを見守り続けるしか出来なかった。
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篤と2人の闘いは、篤が押していた。
「ハッ!」
「くっ!」
“キンッ!”
篤の剣撃をかろうじて刀で受ける清、
「ダリャ!」
清への攻撃をしている篤の背後へ、アルベルトが大剣で横薙ぎの攻撃をする。
「ホッ!」「ハッ!」
“ゴッ!”
篤はその攻撃を下に躱し、直ぐ様アルベルトのがら空きの腹に蹴りを加える。
「グッ!」
“ザッ!”
アルベルトは蹴りの威力に数メートル飛ばされて着地する。
「シャ!」
アルベルトへ攻撃した篤に、清は袈裟斬りをする。
“キンッ!”
「とっ……」
篤は清の攻撃を刀で受け、その勢いを利用して清とアルベルトが視界に入る位置に、距離を取った。
「ハァ、ハァ……」
「フゥ、フゥ……」
肩で息をする清とアルベルト。
「フー、あんたら良い連係しているねぇ~」
清とアルベルトは戦闘を開始してから、片方が攻撃を受けたら、もう片方が死角から攻撃を加えるを繰り返して来た。
しかし、自分たちの攻撃は悉く躱され、篤の攻撃は躱し切れず、所々浅く切られ血が出ている。
「ハァ、全く何て婆さんだよ」
「ハァ、全くですね」
“ブンッ”
「そう思うなら引いてくれないかねぇ~?」
「!?」
息を整えていたアルベルトの背後に、篤が高速で回り込む。
あまりの速さにアルベルトは1拍遅れた。
そこに篤の突きが繰り出された。
『まずっ、間に合わな……』
“ガキンッ!”
「ぐっ!」
対応が遅れたアルベルトを、清がフォローして篤の突きを受け止めた。
「気をつけてください!」
「すまん」
2人は篤から距離を取り、構え直した。
「こっちはこっちで都合があるんでねぇ~、さっさと殺られてくれないかねぇ~?」
そう言って篤は、いままで以上の殺気を放ち2人に向かって行った。
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1方金藤は、親王派の先陣から後方に離れた場所に陣を敷いた。
椅子に座っていた金藤のもとに1人の男が現れた。
「金藤様……」
「トマス、戦況はどうだ?」
「現在、清とアルベルトが藤倉と戦闘中、先陣は半数が倒され、数では未だに勝ってますが勢いは敵方が有利の状況です」
「2人はどんな感じだ?」
「藤倉は思いの外強力でして、かなり押されぎみです」
金藤にトマスと呼ばれた男は、戦闘の状況を端的に伝えた。
「予想通りだな。あの2人にはあいつが向かっている。状況が変わりそうになったらまた来い」
「かしこまりました。失礼します」
そう言って、トマスと呼ばれた男は陣を後にした。




