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第36話

 親王派の先陣を任された藤代、香取の2人の背後から現れた2人、1人は日向の国の特徴である黒髪黒目の長髪細身の男、もう1人は大陸でよく見る茶髪碧眼の短髪小柄の男の2人である。


「お、お主等は確か金藤殿が連れて来た者達だったな?」


「な、何をしに来た?」


 藤代、香取が2人が現れた事に気付いて、現れた理由をたずねた。


「金藤様がもしかしたら藤倉が出て来る可能性に気付いた為、我々が藤倉を抑える役割を受けて来ました」


 細身の男が2人の質問に答えた。


「おお、左様か?、ならば早速藤倉の事を任せるとしよう」


「お主等が藤倉を抑えている間に我々が他を蹴散らして見せよう!」


 現在、完全に押されている元凶である篤を、どうすることも出来ずにいた2人は嬉々として提案に乗っかった。


「それでは我々は戦場に向かいますので失礼します」


「…………」


 全て細身の男が話をして、小柄の男は無言で話を聞いていた。

 細身の男が藤代、香取に断りをいれて小柄の男と戦場に向かい出した。


「……たくっ、なにが「蹴散らして見せよう」だ。無能共が……」


「まあ、そう言ってやるな。どこの国にも馬鹿なお偉いさんてのは、多かれ少なかれいるもんだよ」


 小柄の男が無言でいたのは、あの2人が数の有利で油断していて、この状況になっていると言うのに、何もせず人任せな作戦に飛び乗った事に腹がたっていた為だった。

 日向出身の細身の男は、あの2人が名ばかりとは言え大大名である為、丁寧に対応していただけで、内心では小柄の男と同じ気持ちだった。


「それにしても、金藤様は無茶言いますね」


「全くだ、あの婆さんまともに行ったら俺達が殺られるぞ」


「そうですね。まあ何とかやってみましょう」


 2人は簡単な打ち合わせをして戦場を駆けていった。






――――――――――――――――――――


「ふぅー、さすがに老体にこの数は疲れるね~」


 戦場で一騎当千の活躍をしている篤だが、ようやく相手の数を半分近くに減らせて一息ついていた。

 開戦してから、力任せと言った感じで完全に流れをこちら側に引き寄せた為、魔力の消耗は大きい。


「思っていた以上にあの2人は無能だったみたいだね~」


 篤は藤代、香取は親王派に乗り換えるまで一緒に闘っていた為、2人の能力が低いことは知っていた。

 彼等は篤の事を、女性であると言うだけで下に見ている態度が透けて見えていた。

 その為、戦姫隊が手柄をあげても評価する事は無く、むしろ自分たちのお陰だとでも平気で言う奴等だった。

 そのくせ自分たちは、常に安全な場所で口を出すだけと言った奴等だった為、親王派に乗り換えたと言っても、圧倒的に数で有利な今回の戦でもきっと油断すると思っていた。

 しかし篤の予想では、相手の3割を最初に削れれば良しと思っていたのだが、そのまま何の対応をせず、ずるずると半分も削れた事は予想外の幸運だった。


「このまま奴等が無能っぷりをさらしてくれてると有り難いんだけどね~」


 篤は、数ではいまだに劣っているが、この勢いなら何とかなるかもしれないと、一筋の光が見えてきた気持ちになっていた。


“ピクッ!”


「どうやらそう上手く行きそうに無いね~」


“スタッ”“スタッ”


 篤の前に細身の男と小柄の男が現れた。


「どうも、藤倉様お初にお目にかかります。私、金藤様の配下で(シングル)ランクの冒険者の(せい)と申します」


「俺は金藤さんの仲間で同じく(シングル)ランクのアルベルト・ボディアだ」


 細身の男の清と、小柄の男のアルベルトが篤に向かって名乗りあげた。


「へぇ~、婆さん相手にこんなとこまで良く来たね~、せっかく来てもらって悪いんだけど、帰ってもらえないかね~」


 篤はこの2人の立ち振舞いから、ただ者では無いことを感じ、少々焦っていた。

 しかし、長年の経験からその焦りを顔に出さずに対応した。


「さすが戦姫隊総長藤倉様、我々が相手でも余裕の表情ですか?」


「婆さん、金藤さんに頼まれたんでな。悪いんだけどくたばってくれや」


“ボッ!”“ボッ!”


 清とアルベルトが魔力を纏って、清は腰に付けた刀を、アルベルトは魔法の袋から取り出した大剣を構えた。


「やれやれ、楽させてもらえないかね~」


“ボッ!”


 篤もぼやきながら、魔力を纏って刀を構えた。

 一瞬の静寂の後、篤対清・アルベルトの闘いが始まった。

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