第34話
同竜の隣の町、長水の町に、親王派の軍勢は集まっていた。
長水城の一室に、各地の特に戦力の高い4人の大名達が、鎧を着た状態で左右に並んで座っていた。
そしてその大名の家老達が、その下座に横並びで座っていた。
図で書くと下のようである。
上座
○ ○
○ ○
● ● ● ●
※○は大名
●は大名の家老
総勢8人のいる部屋に泉談親王が、SSSの金藤慎之丞を引き連れて入室する。
親王が上座に座り、その少し下座に金藤が座る。
北の羽田家、東の池島家、南の香取家、西の八坂家、中央の藤代家、この5つの大名家が5大大名と呼ばれている。
しかし、金藤は北の大名家の家臣の中の、下っ端の下っ端と言って良い家柄のしかも4男、そんな家柄の人間が、親王の最も近い位置に座るのは大名達からすれば不愉快極まり無い事である。
だが、皇太子派に絶対絶命の状態まで追い込まれた親王派を、ここまで盛り返したのは北の羽田家当主、羽田雅之慎が直々に大陸から呼び寄せた、金藤の力だと言うことを理解している為、北以外の大名達も渋々この状況を受け入れている。
「皆の者、ここまで良く朕に仕えてくれた。敵の戦力も残りわずか、最後の仕上げを頼むぞ」
「「「「ははぁー」」」」
親王の言葉に、全員が頭を垂れた。
「では金藤、後はよしなに……」
「畏まりました」
その一言を残し、親王は部屋を去っていった。
親王が去った後、金藤を上座にこれから同竜を攻める戦略を話し合う事になった。
「中央と西の大名家を先陣に、俺が連れて来たSS、Sランクの奴等と東の大名家が第2陣、親王様と俺と北の大名家が最後尾に攻め込む事で良いんじゃないですかね?」
親王がいない今、4大名を前にして家柄的には最下位の金藤が軽い態度で提案した。
「金藤殿、そなたが親王様に信頼されている事は理解しているが、いささか態度が大き過ぎやしないか?」
「左様、我々は代々受け継がれてきた大名家、辺境の1家臣の4男に過ぎない者の態度としては相応しくないですな。」
中央の藤代家、南の香取家が金藤の態度に、抑えていた苛立ちをぶつけた。
「香取殿、辺境の大名とは私の事を仰っているのですかな?」
「い、いや羽田殿を蔑むつもりで言ったのではございません。お気に障ったのでしたら申し訳ありません」
最初から親王に付いてきた北の羽田家は、それまで5大大名の中でも最下位の様に扱われて来たが、金藤の力も在り、ここに来て最上位の大名にのしあがっていた。
「私は金藤殿の考えに賛成です。相手は恐らく先陣を抑えて、さらに西へ逃げ、場合によっては大陸まで逃げるつもりかもしれません。藤代、香取の両家と他の大名達による数で攻めれば、とてもではないが逃げきれまい。」
今まで様子を見ていた東の池島が、金藤の考えに賛成した。
「私も賛成だ」
北の羽田も賛成し、他の2家も苦々しい表情で金藤の作戦に賛成した。
「そう言えば、確か八坂家には戦姫隊とか言う女部隊が有るそうですね?」
「はい、それが何か?」
金藤のいきなりの発言に、池島が質問をし返した。
「いえ、ちょっと気になった物で……」
金藤はそう言って、下卑た笑みを浮かべた。
その表情を見て大名達と家老達は、下っ端の家臣が良く話していた内容を思いだし、金藤の事をさらに不愉快に思うのだった。
下っ端の家臣達が話していた事とは、敵を早々と倒して、戦姫隊の女達を好き勝手に弄ぼうとする下卑た考えである。
大名達と家老達は、金藤も所詮下っ端家臣の人間なのだと、改めて理解したのだった。




