第33話
「あの頃が懐かしいねぇ……」
篤は、かつての京子の態度をしみじみと思い出していた。
「篤様、昔の事はそれぐらいにしてもらえませんか?」
京子はかつての事は思い出したくない為、昔の話しをやめるように不機嫌な顔で話した。
「そうだね。真面目な話しをしようかねぇ?」
篤は今までのからかうような表情から一転、真剣な顔に変わった。
「お願いします」
京子も真剣な顔で篤に話しを促した。
「先ずこの戦、皇太子派である我々に勝ち目は薄い」
「SSSが親王派に付いてからと言うもの、あっという間に形勢が変わってしまいましたね」
この戦は、京子が戦姫隊に入って1年経たないうちに当時の天皇が病気にかかった事に始まった。
そこからこの国では不穏な空気に包まれていった。
皇太子派と親王派に各地の大名が割れた。
中には、どちらにつくか情勢を見ている大名もいたが、最初のうちは皇太子派が多かった。
2年前天皇の崩御が合図であったかのように、両派による戦が始まった。
最初の戦いは皇太子派が優勢で、国の中央・南・西の地域は皇太子派、国の北が親王派、残りの東は半々と言った具合に別れていて、このまま皇太子派が勝利を収めると誰もが思ったのだが、半年前親王派が大陸から冒険者をしている日向人を呼び寄せた。
この世界で唯一のSSSランクの日向人の冒険者、金藤慎之丞が親王派に付いてから連戦連勝、情勢を見ていた大名達は全て親王派に付き、半年経った今は皇太子派は同竜・奥電から西の地域しか残されていない。
「親王派は、数でこの城を落としにかかってくるはずだよ。八坂家の戦姫隊以外の部隊で戦い、敵の先発隊を抑えて、敵の後続が来るまでのそのすきに戦姫隊が皇太子を連れて西へ逃走する事に決定した」
「その先発隊を抑える為にも、私が出た方が被害が少なく済むと思うのですが」
「お前は若い、命を粗末にしてはいかん」
2人は、少し前と同じ問答を繰り返す。
「しかし……」
「だからあたしが出ることにした」
「えっ……?」
篤の言葉に京子は驚いた。
「それはいけません! 篤様は戦姫隊の隊員にとってなくてはならないお方です。篤様を欠いた状態では逃げきれる可能性が無くなってしまいます」
「あたしはあんたらをそんな柔に育てたつもりはないよ。あたしの変わりに、副総長の美代があんたらを導いてくれるはずだよ」
「そんな……」
「これは決定だよ! あんたは勝手な事をせず美代の支えになってやりな!」
「…………畏まりました」
京子はあまり納得していない表情で、篤の指示を受け入れたのだった。




