第32話
今回は日付が変わる前に投稿出来ました。
戦姫隊総長篤は、副総長の美代を連れて戦姫隊の鍛練所へ向かっていた。
隊員から、梨花が京子を鍛練所に連れて行ったことを聞いた為である。
「全く梨花の奴は何を考えているのかねぇ~? はぁー」
篤は廊下を歩きながら、軽い溜め息をついた。
「梨花は家柄もあって、篤様を慕っておりますので……」
「今の京子に稽古なんて意味がないことぐらい分かるだろうに……」
もうすぐ鍛練所に到着するといった時、それは起こった。
“スドーーーーーン!!!”
“ドサッ”
梨花が、鍛練所の壁を突き破って吹き飛ばされて篤達のそばに落ちて来た。
「何だい!?」
「梨花……?」
「何だって? じゃあ京子が……?」
梨花が飛んできた方向へ、篤達は目を向けた。
「…………」
空いた壁から京子が姿を現した。
しかし、その表情は最近の無表情ではなく、憤怒の表情をしていた。
その表情に篤達が気付いた瞬間、京子は梨花に向かって突進した。
「!?」
その行動の速度に、副総長の美代は反応が遅れた。
『まずい!!』
美代は腰に差していた刀を抜いて、京子と梨花の間に入ろうとしたが、間に合いそうに無い事に歯噛みした。
“ガキンッ”
しかし、美代より速く反応した篤が、京子の木刀を抜刀した刀で抑え込んだ。
「篤様!!」
「美代、あんたは梨花を守ってやりな」
篤は京子に対しながら美代に指示を出した。
「分かりました。しかし、京子の様子が……」
美代が言った通り、京子は怒りで我を忘れている状態である。
「狂乱状態だね……」
「狂乱状態……ですか?」
「怒りで肉体と自我の制御を切り離して、一時的に戦闘力が上がった状態になる事だよ」
「どうしたら止められるのでしょうか?」
「こうなっちまったら気絶させるか、息の根を止めるしか止められないよ!」
“キンッ”
京子と篤が鍔迫り合いから距離を取った。
「あの状態の京子だと美代じゃ手加減出来ないだろうねぇ?」
「!! それほどですか!?」
戦闘力が上がったとは言え、1週間ろくに食事をしていない10才の少女が、自分に匹敵するほど強い事に美代は驚いた。
「それに早く止めてあげないと、あの子の体がもたないからねぇ~」
篤が言ったように狂乱状態の京子は、魔闘術の魔力が常に全開の状態で放出されていた。
「京子にゃ悪いけど、ちょっと痛い目にあってもらうよ」
“ボッ”
そう言って篤は魔闘術を発動した。
「…………がー!!!」
呻き声のような声を出して、京子は篤に向かって行った。
ーーーーーーーーーー
翌日、戦姫隊の医務室で京子は目覚めた。
「…………ここは?」
京子は、自分が何故ここに居るのか分からなかった。
「目ぇ覚めたかい?」
京子が目を覚ました事に、近くに座っていた篤が問いかけた。
「私、……痛っ!?」
「まだ動かん方がいいよ。取り敢えず折れた骨は回復薬と魔法でくっついたみたいだけど、魔力が枯渇寸前まで放出されていたからねぇ~」
「そうですか……」
自分の体の状態を聞いて、また京子は横になった。
「聞いたよ……」
「……何をですか?」
篤の言葉が分からず京子は問いかけた。
「これさ……」
そう言って篤は京子の魔法の袋を取り出した。
「!!? 返して!!!」
自分の魔法の袋を見て京子は取り返そうと起き上がった。
「!! ……ぐっ!?」
しかし、体の痛みで上半身を起こすことが精一杯だった。
「だから、寝ときなって言っただろう?」
「いいから、それを返して!!」
京子は篤の忠告を聞かず、袋を取り返そうと手を伸ばした。
「その様子だとこの袋がよっぽど大事なんだねぇ?」
「…………」
「あんたが自暴自棄になって1週間、何を言っても反応なかったのに、この袋はその原因になった坊主が作ったんだろう?」
「…………」
篤の質問を京子はただ黙って聞いていた。
「魔法の袋なんてもんまで作っちまうなんて、とんでもない坊主だねぇ……」
篤は奥電までの道中、京子に本来試験を受けるはずだった少年の事を聞いていた。
「これを返した所で、あんたはまた無気力に逆戻りするだけだろうねぇ?」
「!?」
「この袋はあんたが私より強くなるまで預かっとくよ」
「そんな……、それは私が俊ちゃんから貰った大事なものだ、返せ!!」
「私に向かってまた随分なめた口利くねぇ? さっきも言ったように私に勝てたら返してやるよ。体治してちゃんと飯食って体調整えたらいつでもかかってきな、時間があったらいつでも相手してやるよ!」
「…………分かった。絶対返して貰う」
「それじゃあ、この袋は預かっとくよ頑張って取り返しに来な」
そう言って篤は医務室から出ていった。
次回も今回同様日付変更前に投稿出来るよう頑張ります。




