第31話
また遅くなってしまいました。申し訳ありません。次回はなんとか日付が変わる前に投稿したいと思います。
同竜城南西の一角は、篤が率いている戦姫隊の居住区になっている。
そこには修練所や食堂、書庫など最低限教育に必要な施設が備わっている。
「篤様、副長美代です。失礼いたします」
「あいよ」
返事をした篤は、読んでいた書物を閉じた。
「まず今日おこなった戦闘訓練の結果がこちらです」
美代は、篤に戦闘訓練の結果が書かれた書類を手渡した。
「そちらに書かれているように、相変わらず奈津と舞の二人が上位の結果を出しています」
「ん~、ところで京子はどうしてる?」
「……京子は変わらず修練も学問もやる気が感じられません。食事ですらあまり口にしていません」
「……は~、困ったねぇ……」
現在京子が同竜に着いてから1週間がたった。
しかし、同竜に向かう途中の奥電で、ある瓦版を読んでから京子は無気力な表情になってしまった。
官林村や月和村では、大きな事件などは数日後に伝わる為、日向の西地区最大の街奥電に入るまで分からなかった。
俊輔が乗った船が沈没した事件である。
何故俊輔が乗っていた事が分かったかと言うと、行方不明者の名簿に乗組員と乗客の特徴が書かれていて、その中には丸烏を頭に乗せた少年と書かれた一文があった。
その一文を目にした京子は、その日からずっと光を失ったような目になり、篤が話しかけてもあまり反応しなくなった。
奥電から2日の道のりを、篤が手を引いてどうにか同竜に連れてきたのだが、1週間たった今でも変化がない。
食事も少ししか口にしない為、痩せ細り学習と修練はどんどんひどい成績になっていた。
「どうしたら良いでしょうか?」
「あの状態だと村に帰す事も出来ないしねぇ……」
「隊員の中には、篤様直々に見いだされたのに結果を出さない京子を快く思わない者もいるようです」
「何だいそりゃ?」
「私も良く分かりませんが、どうやら篤様に崇拝に似た感情を持つ者がいるようです」
「……どうしたもんかねぇ」
「「はぁー」」
二人は揃って溜め息をついた。
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その時京子は修練所にいた。
「あんたいい加減にしなさいよね!」
「…………」
京子と同じく今年隊に入った、京子より2つ年上の少女、梨花は京子に対して苛立ちをぶつけていた。
しかし、梨花に対して京子は無反応だった。
「構えなさい!!」
京子の態度に怒りが頂点に達した梨花が、京子に対して稽古用の木刀を構えた。
木刀といっても怪我をしないように、布を数枚巻いてある刀の長さの棒である。
しかし、梨花に何を言われても京子は、ただ稽古棒を持ったまま構えようとしない。
“バッ!”
「たぁーー!!」
構えようとしない京子に向かって、梨花は突きをくりだした。
“ドカッ!“
京子はその突きをまともに左肩に受け、吹き飛ばされた。
「…………」
京子はまともに攻撃を受けて、肩の骨が折られても無反応のまま倒れていた。
「全く、何であんたみたいな雑魚が篤様に期待されているのよ!!」
「…………」
梨花が、倒れている京子を見下ろしながら呟いた。
梨花は篤の藤倉家の下働きをしていた女性の子供で、藤倉家で良くして貰った母に、小さい頃から藤倉家への忠誠を躾られてきた為、篤への期待に答えようとしない京子が苛立たしくてたまらなかった。
「んっ?」
梨花は倒れている京子の腰に、魔法の袋が付いている事に気付いた。
「へぇー、あんたみたいな雑魚が生意気に魔法の袋なんか持ってるんだ?」
”ピクッ“
梨花のその言葉に京子は、梨花が気付かない位のわずかな反応をした。
「どうせあんたはもうすぐ隊から追い出されるんだろうから、その魔法の袋は私が貰ってあげるわ。」
そう言って梨花は京子の腰に付いている魔法の袋に手を伸ばした。
その瞬間、
”スドーーーーーン!!“
梨花は、修練所の壁を突き破って吹き飛ばされた。




