第30話
「何だい? この嬢ちゃん」
「京子!? 失礼なことを言うな!!」
京子の発言に村長は真っ青になった。
「申し訳ありません。出ていった子と、この子は仲良かったので……」
それを聞いて篤は、京子の態度に何となく理解した。
「嬢ちゃん、八つ当たりなら他に行きな」
“ピクッ”
篤は特に何の気なしに発した言葉だったが、京子はその言葉に怒りを覚えた。
“バッ”
その瞬間京子は魔法の袋から木刀を取り出し、篤に向かって突きを繰り出した。
“カキンッ”
しかし篤は、京子の突きを腰に差していた刀で難なく受け止めた。
「……嬢ちゃん、いい加減にしておきな!」
篤は京子に対して少しだけ威圧した。
「……………」
“バッ!”
篤の威圧を受けても京子は怒りが収まらず、追撃を開始した。
京子は唐竹、逆風、袈裟切り、左切り上げ、逆袈裟、右切り上げ、右薙ぎ、左薙ぎと繰り出すが全て余裕を持って受け流される。
「……嬢ちゃん、なかなかいい筋してるけど、あたしの相手にゃまだまだだね」
「……………だったら」
“バッ!”
京子はこれまで同様正面から向かって行った。
「やれやれ、懲りないねぇ」
京子の実力を把握した篤は、その行動にため息をついた。
“ボッ!!”
京子が篤にかなり近づいた瞬間魔闘術を発動した。
『貰った!』
“ズドン!!”
京子が不意討ちに成功したと思ったその直後、京子の腹部に衝撃を受けた。
「まさか魔闘術まで使うとはねぇ、ヒッヒッヒ」
「グッ……」
腹を押さえて蹲る京子の顔の前には、篤の剣先が突き付けられた。
篤は京子が魔闘術を発動したすぐ直後に魔闘術を発動させ、攻撃を躱して交差法で左拳を腹部に打ち込んだのだった。
「嬢ちゃん、気が済んだかい?」
「……クッ」
京子は、実力の違いに唇を噛んだ。
“キンッ”
「村長!!」
京子を見据えながら剣を鞘に閉まった後、篤は村長を呼んだ。
「はっ、はい!」
村長は京子が篤へ、数々の無礼を働いた事でどんな処罰を受けるのか戦々恐々とした。
「村長、この嬢ちゃん気に入ったよ。今までの事を目をつぶる代わりにこの嬢ちゃん貰って行くよ」
「えっ? しかし、京子は女ですし、確か学校は男子しか入れないのでは?」
この国は昔の日本同様男性優位である為、入学資格も男子のみで、女子は入る事は出来ない。
「学校なんかにゃ入れないよ。あたしの部隊で面倒見てやるよ」
「誰が……」
京子は、篤の部隊への入隊を拒否しようとした。
「おっと、嬢ちゃんあんたには拒否する権利はないよ。どうしても嫌だって言うなら……」
「嫌だ!!」
京子が聞く耳持たず拒否した瞬間
“シャキーン”
篤が空気を切り裂くような音と共に、剣を京子の首筋の皮一枚ほど手前で止めていた。
「どうしても嫌だって言うならあたしより強くなる事だね。ヒッヒッヒ」
「…………あんたに付いていけば、あんたより強くなれるの?」
「口の減らない小娘だねぇ。そんなのあたしゃあ知らないよ。あんたが面白そうな娘だから連れてくだけだよ。取り敢えずあんた次第って事しか言えないねぇ~」
篤は途中から真剣な顔をして、京子を見据えた。
「……分かった。あんたに付いていく」
「京子……」
「おじいちゃん、私この人に付いていく」
こうして京子は、篤に付いて同竜に向かう事になったのだった。




