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第27話

またしても遅くなって申し訳ありません。色々足していたら遅れてしまいました。

 俊輔は村から出て1日も経たず、日向の国最西の街反倉の街に着いた。

 街の入り口で門番の人に色々聞かれたり、身分を証明するものがない為、どうしようと街に入る為の列に並んでいたが、少しの入場料ですんなり入る事が出来た。

 ちなみに弱小とはいえ魔物のネグロだが、この国でも大陸でも魔物を使役する職業はある為、特に何も言われ無かった。

 しかしやはり最後に、魔物が問題を起こしたら使役者の責任だとちゃんと注意をされた。


「あっ、見えた! 海だ!」


「ピー♪」


 この世界では初めての海が目の前に広がり、俊輔は気分が上昇した。

 いつものように俊輔の頭に乗っている丸烏のネグロも、初めての海に嬉しそうな声をあげた。


「そう言えば、前世では崖から落っこちて死んだんだよなぁ……、俺の死体とかどうなったのかな? もしかして海の藻屑?」


「ピー?」


「まぁいっか調べようもないし、知ってどうなる訳でもないし……」


 この世界に転生して、俊輔は赤ん坊の時にこの事をよく考えていた。

 なぜこの世界に転生したのか、なぜ前世の記憶が残っているのか、他に自分と同じように転生した人間がいるのか等、寝ているだけで何もする事が無かった為考え込むが多かった。

 しかし、前世からの性格なのかいつも最終的には『まぁいっか』で済ませてしまって終わる。


「そんな事より大陸行きの船場を探すか……」


 たくさんの船が停泊しているが、どう見ても漁業船で大陸行きの船には見えない。


「あっ、あった」


 しばらく海沿いを歩いて行くと、大陸行きの船が2隻停泊していた。

 大陸行きの船券売り場があり、時刻表が貼られた掲示板もあった。


「やっぱり今日はもう最終便は出ちゃったみたいだな……」


「ピー……」


 子供の足でたった1日で着いた事でも速いが、さすがにもう夕方の為大陸行きの便はない。

 その為、俊輔とネグロは上がっていた気分が下降していた。


「まぁいっか、明日のお昼の便で行けば……」


「ピー」


 いつもの『まぁいっか』で、俊輔とネグロは気持ちを切り替えた。


「じゃあ今日泊まる宿屋でも探すか?」


「ピー♪」


「その前に宿代を作らないと……」


 俊輔が持っていた資金は街に入る為に使ってしまった為、現在はほぼ無一文である。

 持っていた資金は官林村に月に数回来る行商人に、ひそかに魔石を売って手に入れていた資金である。


「どっかで魔石を売って資金を手に入れよう」


 船着き場から街の商店が建ち並ぶ方面に向かい、ようやく目当ての店が見つかった。


「すいませーん」


「あいよ。おっ、坊主何か用か?」


「あの、ここって魔石売ってますけど、魔石の買い取りってしてもらえますか?」


「買い取り? あー、やってるぞ。売りに来たのか?」


「はい、小さい魔石ですけど売れないと宿に泊まれないので……」


 そう言って俊輔は小袋から村に居た時に集めていた小さい魔石を数個取り出した。


「なるほど、この大きさだと宿代だったら20個くらいだな」


 ここに来るまでに見つけた幾つかの宿屋はどこも5000両(この国の通貨単位は円ではなく両である)だった為、1個250両で売れる計算だ。


「たしか船代の3000両と、食事代も合わせて40個買い取ってもらえますか?」


「おっ、おう。しかし、小さいとはいえ坊主ずいぶんな数の魔石を持ってるんだなぁ?」


「えっ? まっ、まぁね……」


 店主が言うように、大量の魔石を子供が持っているのは少々違和感がある事に俊輔は気付き、取りあえず笑ってごまかし資金を受け取った。

 理由を突っ込まれたら何となく面倒くさいと思い、足早に店から離れ1番近くの宿屋に入った。

 その宿は1階に食堂があり、今日は1日携帯食しか食べていなかったので、そこでネグロと一緒に夕食を頂いて部屋に行き、ぐっすり眠りに着いた。





――――――――――――――――――――


「すいません子供1枚下さい」


「はいよ」


 翌日俊輔は船着き場の、船券売り場で船券を買い船に乗り込んだ。


「いよいよだなネグ!」


「ピー♪」


 ちなみにネグロは小型の魔物であった為、船代が掛からず、無料で乗れた。


『大陸行きの船出発しまーす』


 船員の号令とともに船は離岸し始め、少しずつ日向の国から離れて行った。






――――――――――――――――――――


 俊輔が乗り込んだ船を、遠く離れた海の上で眺めている人物がいた。


「あれ~? あの子……」


 そう言って男は望遠の魔道具に魔力を流し、俊輔の姿を確認した。


「やっぱり~! ホセちゃんをやっつけた少年だ~!」


 官林村を襲撃した犯人のホセ、そのホセの上司でホセからエステと呼ばれた男である。

 その姿は黒のローブに包まれていて、顔は隠れている。


「ちょうどいいや~、そろそろ仕事しないといけない事だし、ついでにホセちゃんの敵討ちも出来るし~、あの子の船にし~よお!」


 そう言ってエステは、海の上に少し出ていた足場を右足でトントンと踏み叩いた。


「あの船をいつも通り、あそこに向けてよろしくね~……」


 エステがそう言うと足場が動き出した。


「リヴァイアサン!」


 動いていた足場は龍の頭部であり、エステの指示により俊輔の乗った船に波を送り始めた。






――――――――――――――――――――


「なんだ? 何か波が少しずつ高くなって来てないか?」


 俊輔の乗った船で、一緒に乗った客達が荒れだした波に慌て出した。


「皆さん落ち着いてください。海ではこの程度の波は良くあることです。落ち着いてください」


 慌てる客達に、船員の1人が落ち着かせようと必死になっていた。


“ピクッ”


「何だ?」


「ピー?」


 その時俊輔は、遠く離れたある方向から違和感を感じ、その方向に探査術を発動させた。


“スー……”


 探査術を発動させて視界が違和感に近づいて行く。


“バッ”


「何なんだありゃ?」


 違和感の正体に俊輔は思わず呟いた。

 そこには海面から顔の出た龍と、その上に立つ1人のローブを被った男だった。





――――――――――――――――――――


「おや~? やっぱりすごいな~、あの子こっちに気付いたみたい」


 エステは俊輔の探査術で自分が見られたことに気付いた。

 気付かれた事に気付いて、被っていたローブから顔を晒した。





――――――――――――――――――――


 俊輔は探査術で見つけた男の足下の龍が、この船に波を送り出している事に気付き、どうにかして止めなければと思った。

 そのとき、龍の上の男がローブから顔を晒した。

 そしてその男の顔を確認して口元を読み取ると……


「バイバ~イ」


 そう言っているのがわかった瞬間、俊輔達の乗った船は巨大な波に飲まれ沈没した。



 この事件は突発的な天候不良による海難事故として、この船に乗った乗客、乗員の死亡が日向の国全土に配られている瓦版(新聞)の一面に載り、大々的に報道された。

ここまでを思い付いて、この作品を書き始めました。色々足したり消したりしたい所ですがようやくここまで来れました。次回からは第2章になります。

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