第26話
ちょっと短くてすいません。
俊介は官林村から出て、南の月和村に俊輔は向かっていた。
「全く魔物が出ないな……」
ここら辺の魔物は夜行性の方が多いので、一応ある程度の探知魔術を発動させているのだが、全然反応を示さない。
「ピピピッ?」
「あぁ、ホセのヤツがここら辺の魔物も、あの襲撃の時呼び寄せたんだろう……」
村襲撃の時、ホセはかなりの数の魔物を呼び寄せていた。
それを倒し尽くしたからだろうか、普通だったらあり得ないくらい安全に進めていた。
「これだと日が昇る前に月和村に着いちゃいそうだなぁ……」
10才の子供がたった独りで日が昇る前に着いては、ちょっと都合が悪い。
子供が夜中に独りで出歩いているだけでもおかしいし、場合によっては理由を聞かれ、その確認の為に村に拘束される可能性がある。
「しょうがない、月和村に寄らないで反倉の町に向かうか……」
魔物の出現などを考えると普通官林村から月和村で1日、月和村から反倉の町まで1日掛けるのだが、魔物が出ない今の現状なら1日で反倉の町に着いてしまいそうだ。
「大陸かぁ……、楽しみだなぁ……、なぁネグ!」
「ピー♪」
ーーーーーーーーーー
朝になり官林村では、いつものように俊輔に会いに京子が来ていた。
「…………えっ?」
「……ごめんなさいね、京ちゃん……」
俊輔が夜中の内に村から出て行った事を俊輔の母の静江に聞かされ、京子は訳がわからず放心状態に陥っていた。
「…………なっ、なんで……?」
「……これ、俊輔から京ちゃんに……」
そう言って静江は、俊輔からの手紙と1つの袋を京子に渡した。
俊輔は家から出て行く前に、家族全員と京子に1通ずつ手紙を書き残していた。
京子は茫然としたまま、静江から手紙と袋を受け取り、よく俊輔と来ていた村の近くの丘にふらふらと歩いて行った。
「…………」
丘に着いても京子は、しばらく茫然としたままでいた。
そしてようやく俊輔からの手紙に目を通し始めた。
『京子へ、いきなりいなくなってごめん。色々考えてみたけれど、やっぱり学校行って仕官してこの国に縛られるのは嫌だ。ペドロやニコラスとも約束したし、俺は世界の色々んな所を見てみたい。だからこの村から出て行く、いつかまた村に帰るからそれまで元気でな。』
俊輔の手紙の1枚目にはこのように短い文章が書かれていた。
『その袋の事だけど、俺のお古で悪いけど、持ち主を京子に設定しといたから、魔法の袋良かったら使ってくれ。』
魔法の袋は、設定したい持ち主の髪の毛や血液と一緒に魔法陣で錬成すると、持ち主以外使用出来なくする事が出来る。
俊輔は出て行く事を決めた時、2つある魔法の袋の1つを京子に渡すため、京子から髪の毛を1本もらっていた。
「……、なんで……?」
手紙を全部読んだ京子はポロポロと涙を流していた。
「髪を1本渡した時には、もう出て行くって決めてたんでしょ……?」
京子は泣きながら、ここにはいない俊輔に尋ねた。
「私も一緒に連れていって欲しかった……」
そう言って京子は、日が暮れるまで魔法の袋を握りしめ膝を抱えて泣き続けた。




