第24話
俊輔が本性を表したホセを倒した所を、村付近の森の上空から見ていた人間がいた。
「あらら……、ホセちゃんやられちゃったよ」
昨夜ホセと村の襲撃の事を話していたエストと呼ばれていた男である。
エストはワイバーンの背に乗って上空から一部始終見ていた。
「まぁいっか、あの子頑張り屋さんだったけど、あまり役に立たなかったからな……」
ホセが倒された事を、あまり興味無さげに呟いた。
「ちょっと面白かったし、そろそろいつもの仕事に戻らないとセントロがうるさいからな。おいワイバーン行くよ」
「グワッー!!」
エストはそのままワイバーンに乗って、西に向かって飛んでいった。
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ホセを倒した後、田茂輔達は集会所の村長に魔物の討伐完了を伝えた。
集会所に集まっていた老人や女性、そして子供達は歓声を上げて喜びあった。
戦闘に関わった男達の中には重傷を負った者もいたが、命に別状はなく、死人が出なかった事が更に村人達に喜びを与えていた。
「家が壊された家族もいたが、村人全員で修理に当たれば大丈夫じゃろう」
「そうだな……、畑もまだ種植えする前で良かった。それにあれだけの魔物の肉や素材があるんだ。しばらく金や肉に困らないんじゃないか?」
「そうじゃな、怪我の軽い者達で素材や肉を捌いて置かなくてはな。腐ったりして死人化せぬようにしないとなぁ……」
村長と田茂輔が今後の事を話し合い、子供達や老人達と、怪我の軽い男達は魔物の後始末へと向かい、女達は集会所で男達が運んだ魔物の肉を調理する準備を始めた。
魔物の退治を祝って、今日は宴会をする事になった。
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「「「がははははっ!」」」
魔物の後始末が終わり、夜になると村人達は集会所で宴会を開いていた。
「いやー、それにしても田茂さんが倒された時はもう駄目かと思ったぜぇ!」
「全くだぁ!」
田茂輔と一緒に戦った者達は、焼いた魔物の肉を肴に酒を飲み、今日の戦闘の話で盛り上がっていた。
「それにしても、あの俊輔が魔闘術を使うとは思わなかったなぁ?」
話題はすぐに俊輔の話に変わっていった。
「田茂さんは知っていたのかい?」
「いや、全く知らなかった」
「それよりも俊輔を奥電の学校に行かせるんだろ?」
日向の国にある5つの国立学校の1つ、この村から東に数日行った西の最大都市、奥電にある学校、国立学校から大名に見いだされ仕官するのがこの国の平民の人々の夢である。
「年齢が若いけど魔闘術が使えるんだから、試験なんか絶対大丈夫だろう?」
「村長が奥電の役人に掛け合ってみるような事言ってくれてはいたが……」
俊輔が知らない間に大人達は学校に入れるかどうかの話に変わっていき、更にはどこに仕官するのかと言う話に向かって行った。
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襲撃から3日後
「俊ちゃん!」
「ん?」
いつもと同じように村近くの森で遊んでいたら京子に呼び止められた。
「俊ちゃん奥電の学校に行くんでしょ?」
「……はっ? なんの事?」
「だっておじいちゃんや村の人達がそう言ってたよ。もうすぐ奥電の役人さんが迎えに来るって……」
「……何だって!?」
いつの間にか自分の進路が決まりつつあることを、俊輔はようやく知ったのだった。
次回ようやく村から出て行く予定です。




