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第19話

「……これは予想外ですね」


 今まで余裕の表情だったホセが、こんな田舎に魔闘術を使える人間、しかも少女がいた事に驚き、冷や汗をかきながら呟いた。


「やー!!」


“ズバッ!”


“ズバッ!”


 迫り来る魔物を紙でも切るかのように倒して行く京子、そして田茂輔が倒した魔物と合わせて、残りの魔物が少なくなってきたのが見てわかるようになってきた。


「ちっ、こうなったら……」


 ホセは魔法陣を発動して何かをし始めた。


「ぐっ……、てめー、まだ何かしやがるつもりか?」


 ホセの行動に少し回復して、膝をついた状態になった田茂輔が気付き問いかけた。


 すると他の方角から攻めて来ていた魔物達が、こちらに向かって集まり出した。


「このお嬢ちゃんを消しさえすれば、他は相手にならないですからね」


 そう言ってホセはまた余裕の表情を浮かべた。


「ぐっ、この野郎……」


 田茂輔はなんとかして京子を援護しようと体を動かすが、疲労と怪我で何もできずにいた。


「「父ちゃん!」」


 そこに龍之介輔と虎之輔が向かって来た。

 二人は体にたくさんの怪我を負いながらも、田茂輔の方に向かった魔物と戦うためこちらに来たのだが、動けなくなっている田茂輔を見つけて顔を青くしている。


「龍、虎お前ら大丈夫か?」


「あぁ、俺も虎も一応大丈夫だ」


「そんな事より、どうして京子が戦ってるんだ? しかも、あれ、魔闘術だろ?」


「どうしてかは知らんが、俺が生きてるのは京ちゃんのおかげだ、何とかして援護したいが俺は無理そうだ、お前ら動けるなら代わりに援護してやってくれ」


「分かった、虎行くぞ!」


「あぁ!」


「そうはさせませんよ」


 龍と虎が京子の方に向かおうとしたところに、ホセが魔物に邪魔をさせた。


「てめーがかかってこいや!」


 虎之輔がホセに向かって吠えた。


「生憎、僕自身は非力なもので……」


 ホセは虎之輔の言葉を適当にあしらい龍之輔と虎之輔に魔物達を向かわせ、少し離れた場所で戦う京子の方に近づいていった。


「お嬢ちゃん、たしか京子ちゃんだったね?」


「はぁ、はぁ、そうよ」


「たしかに魔闘術が使えるのは驚きましたが、この量の魔物を相手ではいつまで使え続けられますかね?」


「はぁ、はぁ、あなたが集めた魔物達も残りわずか、全部倒してあなたを倒すまでは大丈夫よ」


 そう言って京子は魔物を葬っていった。


「それは素晴らしい」


「えっ?」


 ホセがまだにやけながらいる事に、京子は疑問を持った。


「確かにこの村の周辺で集めた魔物は倒されるでしょうね。ですので……」


 ホセは、また魔法陣を発動させた。


「魔物のおかわりをさせていただきますね」


 新しい魔法陣から、大型犬の大きさの蟻達が沸き始めた。


「巨大蟻!?」


「この村ではあまり見ないでしょうが、大陸で手にいれた蟻でして、女王を支配するだけで兵隊蟻達が使えるので、僕には便利な魔物です。数はこの村で集めた魔物と同じぐらい出てきますよ」


「へー……」


 さっきまでにやけながら話していたホセの隣に、1人の少年がしれっと立っていた。


「…………」


 その事にホセも理解できず、無言になった。 



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