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第183話

「……何だ?」


 イバンの全身を包み込んだ塊に、俊輔は首を傾げる。

 明らかにリベラシオンが何かする気らしい。

 鑑定してみると、どうやら、魔族のように変身する気なのかも知れない。

 中を直接見たわけではないが、リベラシオンから出る黒い魔力によって、イバンの体が内側から作り変えられているように見える。


「な、何だ!? この嫌な感じは……」


「あ、兄者……」


 怪我でその場から動けないでいるシモンは、言い知れぬ不安に冷や汗が溢れている。

 シモンの妹のカルメラは、そのプレッシャーに圧されたらしく、言葉が上手く出ないでいる。


「あの魔力、何だか禍々しいな……」


 何かしようとしているが、黒い塊は何だか気味が悪い。

 奥の手を出してきたということだろうか。


「今のうちに殺っとくか?」


 近付くのは躊躇われるので、俊輔は離れた位置から攻撃することにした。

 俊輔は、悪者が変身するのをわざわざ待つより、変身途中の隙だらけの時に始末してしまえば良いという、特撮物なら御法度のようなことを平気でやるタイプだ。

 木刀に魔力を溜め、俊輔は先端から球状の魔力を発射させた。


“シュン!!”“ボシュッ!!”


「ぬおっ!?」


 黒い塊に当たったと思った瞬間、俊輔の魔力球は吸収されたように消失した。

 そして、その魔力球が強化され間を置かずに塊から発射されて、俊輔へと迫って来た。

 予想外のことに驚いたが、俊輔はその魔力球を咄嗟に躱した。


“ズドンッ!!”


「あ~ぁ……」


 躱したのは良かったが、魔力球はそのままここの邸の馬小屋へと着弾し、爆音と共に吹き飛ばした。

 数頭いたであろう馬も、あれでは生きているとは思えない。

 王都中央から離れているとは言っても、王都に変わりはない。

 この爆音で兵が来るだろうから、俊輔は結果オーライということにした。


「早々に貴様を始末しなければな……」


「チッ! 変身し終ったか?」


 どうやらさっきのやり取りをしている間にイバンの変異が終わったのか、リベラシオンの剣を持った黒いフルプレートアーマーが立っていた。

 一見、シモンのミスリルアーマーに似ているが、なんとなくこちらの方は様子が違う。

 ゴツゴツしたような形をしていて、背が高くなっている。


「ふっ、どれ程ぶりだろうか、この姿になったのは……」


 全身を眺め、リベラシオンは懐かしいものを見たような言葉を呟く。

 イバンの体が見えていた時とは違い、何だか落ち着いたような雰囲気にも見える。

 実質、その通りなのかもしれない。

 さっきまではイバンの感情とリンクしていたからか、それによって感情を制御できていなかったのが、イバンを取り込むことによって、完全に魔剣としての本能が出せるようになったのだろう。


「黒い魔闘術? 近いが何か違うか?」


 鑑定・探知でリベラシオンの全身を分析する俊輔だが、いまいち鎧の本質が分からない。

 俊輔のように魔力を纏っているようにも見えるが、なんとなく嫌な感じがするのが分からない。

 黒い魔力の鎧に包まれているというのが一番近い。


『とりあえず、少し様子を見るか……』


“フッ!!”


「っ!?」


 姿が変わったが、戦闘力の方がどう変化したかまでは分からない。

 最初は様子を見ようと二刀を構えた俊輔より、リベラシオンの方が先に動いた。

 その場から消えたように動くと、いつの間にか俊輔の左側へと現れていた。


「速い!?」


 神だなんだと喚いていた時とは違い、音を消しての歩行術に、見ているだけしかできないシモンは、思わず声に出していた。

 離れた位置で見ているにもかかわらず、リベラシオンの動きが残像のようにしか映っていなかった。


「くっ!?」


 移動してそのまま斬りかかったリベラシオンの剣を、俊輔は小太刀の木刀で防ぐ。 

 急激に早くはなったが、反応できない速度ではない。


「あれに反応しただと?」


 リベラシオンの動きに驚いていたシモンは、今度は防いだ俊輔の方に驚いた。

 俊輔と戦った時に、シモンは多少攻撃が当てられた。

 自分の攻撃を食らうような人間が、何故あの化け物の攻撃に対応できているのか訳が分からない。


「はぁ!!」


 混乱するシモンをそのままに、戦闘は続いていた。

 防がれても特別驚く様子なく、リベラシオンは連撃を放ってきた。

 それを俊輔は、躱したり小太刀で防いだりをすることで、無傷でその場から距離を取る。


「何だその木刀は?」


 変身したことで、リベラシオンの切れ味も上昇していた。

 俊輔が連撃の内の1つを躱した時、床に転がっている瓦礫が、豆腐を切るように真っ二つになったほどとんでもなくなっている。

 なのに、魔力を纏って強化しているとは言っても、所詮はただの木刀に見えるそれで、防いでいることが理解できない。

 封印されて長い年月により知られなくなったが、リベラシオンはその昔、斬れぬ物なしとまで言われた(つるぎ)だ。

 反応して躱すのはともかく、受け止めるなんてことができる物があることに、リベラシオンは驚きが隠せない。


「苦楽を共にしてるんでな……」


 聞かれた俊輔の方は、真面目に答える気がない。

 たしかにこの木刀たちは俊輔の言う通り苦楽を共にしてきたが、それだけではない。

 化け物のような魔物たちの素材を錬金合成し、見た目は木刀、中身は超合金とでも言うような存在に変化している。

 今では、木刀なのに火にくべても燃えないのではないだろうか。


「まぁいい……、所詮貴様はここで消え去る身だ」


「殺れるつもりなのか? さっき程度で……」


 どんなに堅い木刀だろうと、使う本体がいなければ意味がない。

 剣でありながら肉体を操る自分とは、全く立場が違うのだ。

 堅い木刀への興味は失せ、リベラシオンは本体の俊輔の方を始末することへ意識を向けた。

 自分を神と名乗る者がとても馬鹿に見える俊輔は、挑発をやめない。

 決して、ほんの一時でも中二病をこじらせた経験がある自分と同じだと思いたくないからではない。


「……そうだな。では少し速度を上げるか?」


“ギュン!!”


 言葉の通り、リベラシオンが上がる。

 正面から一瞬で俊輔の懐へと詰め寄った。


「死ね!!」


 あっさり懐に入れたため、リベラシオンは俊輔が反応できていないと分かり、無感情に胴を斬り裂きにかかった。


“キンッ!!”


「っ!?」


 胴を真っ二つにしたと思った瞬間、リベラシオンの剣は、俊輔の小太刀によって止められていた。

 速度だけでなく力も先程より込めたはずなのに、吹き飛びもせずに防がれたことで、リベラシオンは信じられないと言ったように声が出なかった。


「お前がな!!」


“ドゴッ!!”


 殺したと思っていたのか、僅かに反応が遅い。

 そこを見逃す俊輔ではない。

 空いてる右手の木刀を振り下ろし、鎧の頭部を思いっきり殴り飛ばしたのだった。



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[気になる点] 舐めプレイ→ピンチの連続でハラハラドキドキというより、主人公のアホさにイライラモヤモヤします。
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