第16話
「おじちゃん! みんな集会所に集まったよ!」
昼間外で畑の仕事をしていた人が多く、いち速く魔物が出た事に気付いた人が他の人達を集めていた為、かなり速く全員が集会所に集める事が出来た。
「よし! 全員無事かい?」
それを聞いて、京子は少し俯いた。
「俊ちゃんだけ見つからないの……」
「何だって!? この大事な時にどこに行きやがったあの馬鹿!! まさかあいつ……」
田茂輔の頭の中に、俊輔が森の中で魔物に殺されたという最悪の予想がちらついた。
「俊輔ならきっと大丈夫だ! 京ちゃんも集会所に避難していてくれ!」
根拠は無いが、自分にも言い聞かせるように、田茂輔は京子に言った。
「うん! わかった!」
「龍、虎ここから1匹たりとも集会所に魔物を近づけるなよ!」
京子が集会所に向かって行ったのを確認して、田茂輔は龍之輔と虎之輔に指示を出した。
集会所の周辺には田茂輔、龍之輔、虎之輔がそれぞれ数人の男達を率いて魔物の撃退しようと待ち構えた。
「どうも、どうも皆さんお疲れ様で~す」
田茂輔の達の前に、魔物の群れを率いたホセが軽口をたたいて現れた。
「てめえ、これはどういうことだ!?」
ホセの姿を見て、田茂輔は怒りがこみ上げてきた。
「どうも田茂輔さん、この村はこの国で動く拠点にちょうど良さそうでして、なので頂いてしまおうと思いまして……」
「この国で? てめえこの国でなんかしでかそうってのか?」
「えぇ、まぁ皆さんが知る必要無いことです。皆さんここでお別れなので……」
笑顔でそう言って、ホセは魔物に手で攻撃の合図を送った。
「ふざけんなよ! この餓鬼が!!」
田茂輔は、今まで飾りのように床の間に置いておいた刀を抜いて、魔物に向かって行った。
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その頃俊輔は、
「ピー♪」
「たくさん取れたな、ネグ」
たくさん竹の子を掘り起こして、機嫌良く丸烏のネグロを頭に乗せて、村に向かって歩いていた。
「それにしても、俺もネグも泥だらけで真っ黒だな、母ちゃんに怒られるかもな?」
「ピッ、ピーーー!」
ネグロは怒った母ちゃんを想像して、プルプル震え出した。
以前父ちゃんをボコボコにしていたのを見て以来、ネグロは母ちゃんに従順である。
「嘘だよ、これだけの竹の子見せれば大丈夫だって」
「ピ~?」
「本当かって? まぁ大丈夫だろ」
村の異変に全く気づかず、そんなことを呑気に話していた。
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「だりゃー!」
“ドサッ!”
田茂輔の1振りで、2,3匹の魔物が肉片に変わる。
田茂輔の周辺には、たくさんの魔物の死体が山積みになっていて、その周辺では村の男達が、1人1人確実に魔物を倒していた。
「いや~……、皆さん頑張りますね~、でもまだまだ一杯魔物はいますからね、それと……」
「あぁ? 何だ? まだ何かあんのか?」
「僕がこの村で集会所に住んでいた事覚えてます? あそこに何も用意して無いと思います?」
その言葉を聞いて、田茂輔達は顔から血の気が引いた。
「誰か、何人か集会所に向かってくれ」
「無茶言うな、皆今手一杯だよ」
「くそっ!! どうしたらいいんだ!?」
田茂輔が魔物を倒しながら、苦悶の表情を浮かべた。
「どうやら策はないようですね……」
田茂輔達の表情に、愉悦の表情を浮かべながら、ホセは手のひらに魔力を集めて、1つの魔法陣を作り発動させた。




