表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
149/320

第148話

今回から新章です。

「なんか……、1年でだいぶ発展してんな……」


「温泉パワーかな?」


 魔の領域と呼ばれているダンジョンから脱出することができた俊輔たちは、1年半前に自分たちが引き当てた温泉の村へ向かうことにした。

 ダンジョンの最終守護者の玄武との戦いで、俊輔は片手を失ったままなので、とりあえずはゆったりと片手の再生をおこないたかったからだ。

 一番近いこともあったが、村に着くまで村が残っているかの不安は少しあった。

 しかし、村に辿り着いてみると、かつて老人ばかりで廃村寸前だったような所だったのが、とんでもなく発展を遂げていた。

 高い建物や色々な店が新しく建てられていて、沢山の人間で賑わっている。

 どうやら、温泉に浸かりにきた観光客のようだ。

 俊輔たちが掘り当てた温泉によって人が集まり、1年半の間で活気が溢れる村に変化したみたいだ。

 もう村といって良いのかも疑問だ。


「まぁ、まずは宿屋でも探そうか?」


「うん!」


 1年半前に、温泉と共に俊輔たちが土魔法で作り上げた村を覆う防壁は、補強されてより強固なものになっている。

 高さ的には俊輔たちなら飛び越えてられるのだが、村の入り口となる門の前には入村するための人々でかなりの列が出来ている。

 その列を見ると、飛び越えて入ってしまうのは、後々バレた時に面倒なことになりそうなので、しっかりと列に並び順番を待った。

 昼に並び始めたのにもかかわらず、時間的には夕方と言ってもいい時間までかかってようやく俊輔たちは入村できた。

 村に入るまでに待ちくたびれたのもあるが、人で溢れている村の状況を見ていると、部屋が空いている宿屋があるのか疑問だ。

 なので、入村した俊輔たちは早々に宿屋探しを始めた。


「いらっしゃいませ!」


 しかし、俊輔たちの疑問はあっという間に解消された。

 最初に入った宿屋が丁度良く空いていて、そのまま1週間滞在することを告げた。


「どうぞこちらの部屋をお使いください」


「ありがとうございます。しばらくご厄介になります」


 だいぶ前に魔物の魔石を売り資金を手に入れたので、俊輔たちは資金において心配はない。

 それもあって、少し大きめの部屋でも良いから空いてないかと尋ねたら、女将は上客と判断したのか、良い笑顔で部屋まで案内された。


 この宿屋は大浴場があり、それが売りになっている結構人気のある宿屋らしい。

 しかも、俊輔たちが止まる部屋はセミスイートになっていて、小さいながらも部屋風呂付になっており、かなり広くて3人(正確には2人と1羽)で泊まるには持て余してしまうようにも感じる。

 俊輔の従魔のアスルは図体がでかいので一緒の部屋に泊まるのはやはり駄目らしく、残念だが厩舎に預ける形になった。

 1人別なのでアスルはしょんぼりしていたが、そのうち玄武が使っていたような変化の術でも使えるようになってもらうしかない。

 食事は食堂があるのでそこで食べるか、頼んで部屋まで運んでもらうこともできるらしく、宿泊料とは別料金が発生するらしい。

 飲食店が並んでいる通りがあり、そこで食事を取る宿泊客がいるからだとのことだ。


「いってらっしゃいませ」


「どうも……」


 俊輔たちもその飲食店通りが気になったので、夕食はその通りのどこかの店で取ることにした


「すごいな……」


 宿屋の女将に教わっていた通りに着き、俊輔は思わず呟きをもらした。

 その通りには高級そうなレストランもあれば、こじんまりとした大衆食堂のような店もある。

 その中でも多いのはやっぱりバル。

 バルとは、簡単にいうと軽食堂兼居酒屋といったところだろうか。

 居酒屋といっても日本のものとは違い、ビールやワインとともに、色々な食材を楊枝に刺した一口料理のピンチョス、そしてタパスと呼ばれる小皿料理をつまみとして出すお店だ。

 客はピンチョスなどをつまみとして酒を飲み、すぐに違う店へいって同じように酒を飲んでと、何軒もはしごするのが普通らしい。

 なので、立ち飲みの店も結構ある。

 今日はあまり酒を飲む気分でもないので、俊輔たちはちょっとシャレた感じのレストランで食事をとることにした。

 というより、従魔も入店可の店がなかなか見つからなく、みつかったのがここだったからだ。

 高級店などは貴族でも来店することがあるからなのか、従魔は駄目だという店はよくある。


「それにしても1日5食はちょっと慣れないよね?」


「そうだな……」


 コース料理を堪能した俊輔たちだったが、食べ終わると京子が日向とこの大陸の食習慣の違いのことを話してきた。

 大陸にきてだいぶ経つが、食習慣の違いに少し戸惑った事を1年半ぶりにまた思い出していた。

 前世のスペインとかなり似た文化を持つこの大陸の人間は、日本と同じように1日3食の日向とは違い、1日5食が普通なのだ。


・デサジューノ 朝食に当たり、7時~8時頃に甘めのコーヒーやホットチョコレートとチュロスなどを付けて食べる。


・アルムエルソ 午前のおやつで、10時~11時頃にボカディージョ(スペイン版バケットサンド)などを食べる。


・コミダ 昼食にあたり、14時~16時頃に仕事の間の休憩でだいぶゆったりと時間を取る。お酒も飲む人もいるらしい。1日で1番がっつりとしたものを食べる時間帯だ。


・メリエンダ 午後のおやつで、18時~19時頃にボカディージョなどを食べる。


・セナ 夕食にあたり、21時以降と日本からするとかなり遅いようにも感じる。昼にしっかり食べるので夕食は軽めの人が多いらしく、スペイン風オムレツやサラダ、腸詰類を食べる。


 上記に示したように、昼がっつり、他は軽く食べるのが基本らしい。

 昼の12時頃などはレストランなどは閉まっている場合が多い。

 最初どこも毎日閉まっているので首を傾げていたのだが、昼食の時間が違うからだと聞いて納得したものだった。

 1年半の間京子たちだけと一緒だったので、普通に1日3食の習慣に戻してしまっていたので、大陸にきた当初と同じように、違和感を感じるように戻ってしまったのも仕方がないかもしれない。


「またしばらくすれば慣れてくるさ」


「そうだね」


 閉じ込められていたダンジョンから脱出することが出来たのだから、また以前のように観光旅行が出来る。

 そんな思いを込めて俊輔が笑顔でいうと、京子も嬉しそうにうなずいたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【転生したので旅行ついでに異世界救っていいですか?】
ダッシュエックス文庫にて発売中です。
お買い求め頂けるとありがたいです。
よろしくお願いします!

小説家になろう 勝手にランキング

cont_access.php?citi_cont_id=167178503&s

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ