第128話
遅くなってしまいました。申し訳ありません。
「…………」
何も考えず、黙って歩き回る俊輔。
半信半疑で始めたダウジングだが、何の反応も示さないでいた。
チラッと京子の方を見るが、同じように黙って歩き回るだけで反応を示す様子はないようだ。
「ふ~……」
何となくで始めた事だが、何も反応がない事が続くことに俊輔は飽きて来た。
とは言っても、真面目にダウジングをしている京子を見ているとやめるのも気が引けるので、仕方なくまた源泉の捜索を始めた。
『本当にこんなんで見つかるのかね?』
ダウジングなんて前世でもやった事が無いせいか、時間がかかるにつれてどんどんこのやり方が正しいのか分からなくなってきていた。
「あっ!?」
「ん? どうした?」
少しの間捜索を続けていると、京子が声を上げた。
それにつられ、俊輔は京子の方に向かって行った。
「俊ちゃん! 何かここ反応したみたい!」
言われて京子の手に持っている糸に吊るされた分銅を見てみると、確かに少しの反応を示していた。
『本当に見つけられるんだ……』
自分で言い出しておいてなんだが、この反応を見てようやく俊輔はダウジングの事を信用した。
「どうやらここら辺にあるみたいだから、周辺でもっと反応する場所がないか探ってみよう」
「うん!」
確かに京子のダウジングが反応しているが、若干弱い。
源泉としてしっかりとした湯量が湧き出るとは思いにくいので、きっと近くにもっと反応を示す場所があるはずだと思い、二人はそこを起点にまた捜索を開始した。
「あっ!? こっちがどんどん反応強くなってく!」
分かれて捜索していたら、またも京子の方が正解だったようだ。
京子が反応を確認しながらゆっくり歩くと、振り子の反応が強くなっているのがわかった。
『半信半疑でやってたからか?』
俊輔の方は歩き回っても弱い反応のままで、次第に弱くなっていくばかりだった。
真面目にやっていた京子が見つけたのは、当然かもと内心納得しながらも、全く良い所なしの結果に俊輔は少し落ち込んでいた。
「ここが反応強いよ!」
京子が指さした場所を、俊輔も念のためダウジングで反応を調べてみると、言った通り今日一番強い反応を示した。
「どうやらここの下に何かあるのは確かみたいだな……」
「元の場所からは大分離れているから大丈夫だったのかな?」
二人で半日近くかけてダウジングしていたら、元々の源泉の場所からは大分離れていた。
村の北東の防護壁近くの、周囲に何も無いような場所で反応していた。
以前の魔物の襲撃でも何もなかった為に、もしかしたら平気だったのかもしれない。
「まぁ、まだ何があるのか分からないけどな?」
確かにダウジングでは反応したので、この地下に何かがあるのかもしれないが、まだ温泉が流れているとは限らない。
ここからは俊輔の出番だ。
「ハッ!!」
手の平を反応が強かった場所に向け、俊輔は魔力を放って探知術を行い始めた。
いつものように地面に薄く広く魔力を伸ばす時と違い、地下に向けて伸ばす魔力は結構な抵抗を受ける。
しかも、それが地下のどれくらいの距離にあるのか分からないので、結構な範囲を調べて行った。
「……結構きついな」
反応が強かった場所の半径5mの周辺の地下に向けて魔力を流すが、感覚的に1000m程深くまで魔力を流すが何も見つからない。
抵抗によりいつもの何倍もの魔力を消費する事に、現在では魔力が化け物になっている俊輔でも疲労を感じて来た。
「どこまで……、あっ!?」
探知に反応がないので、どこまで行けばあるのかと愚痴ろうかと思った矢先、俊輔の魔力に反応があり思わず声が出た。
「あったの?」
俊輔の声に京子も反応し、笑顔で問いかけて来た。
「あぁ、温泉みたいだ。ここの地下660間(1200~1300m)ってところかな?」
「ずいぶん深いね?」
京子が言うようにかなりの深さだが、見つかりさえすればこちらの物だ。
「大丈夫! ハッ!」
京子に一言告げると、俊輔は地下に放っていた魔力をそのまま変換し、土魔法に変えて土を変化させていった。
「京子! ネグ! ちょっと離れてろ!」
「うん!」「ピー!」
そのまま土を筒状に引っこ抜こうと思ったが、穴を開けた瞬間に高温のお湯が噴き出してきた場合の事を考え、京子と今まで俊輔の頭の上でのんびりしていたネグロに離れるように言った。
「よしっ! それじゃあ、いっせーの!」
京子とネグロが離れたのを確認した俊輔は、一気に土を引き抜いた。
“ブシュー!!”
俊輔によって筒状の通り道が出来た事で、お湯が一気に噴き出してきた。
「やった! 沸きだした!」
「ピー!」
京子とネグロは、その光景に喜びの声を上げた。
俊輔は、このままでは周辺が水浸しになってしまうので、近くに流れる川までの排水を魔法を使って整えた。
「いや~……、大分苦労したけどようやくここに来た目的が果たせそうだ」
最初よりも勢いは弱くなったが、止まる事無くお湯は沸き続けている。
その光景に俊輔は満足げな表情で呟いた。
「おぉっ! 温泉が湧いた!」
温泉が湧き出た事による音に反応して来たのか、俊輔たちの側に村長がやって来て、驚きつつも嬉しそうな表情をしていた。
「これでまた観光客が戻って来るわい! すぐにでも人を集めて風呂を作ろう!」
昔のように賑わっていた村を思い出したのか、村長は慌てて風呂を作るための人員を集めに向かって行った。
「……いっちゃった」
「まぁ、後は任せればいいだろ?」
俊輔の魔法ならすぐに風呂を作る事が出来るが、どこにどう作れば良いかなどは村の人が決めた方が良いと思い、俊輔は湧き出るお湯をそのままにして一休みする事にしたのだった。
※間(尺貫法で1m=0.55)です




