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第113話

“ドスッ!!” 「ふぐっ!?」


“ドゴッ!!” 「ぐえっ!?」


“バキッ!!” 「ぐはっ!?」


 何度も何度も襲い掛かってくるネストールを、俊輔は木刀でカウンターを食らわし、難なくボコボコにしていた。


「…………何なんだよ」


 何度も殴られ、はじき返され続けたネストールは、体中を痣だらけにしながら独り言のように小声で呟いた。


「ん? やっと諦めたか?」


 一方的に打ちのめしていた俊輔は、ようやくネストールが自分との実力差に気付いたのだと思い、一息つきつつ問いかけた。


「何でこんな強い奴がここにいるんだよ……」


 魔族として本来の姿に変身しても、アマンドに壊された右腕が治る訳ではない。

 その為片手での戦闘を余儀なくされたのだが、それでも自分が人間なんかに負けるとは思ってもいなかった。

 しかし、いざ戦ってみたらあまりにも一方的に打ちのめされて、体はまだまだ動きが鈍る程のダメージは受けていないが、精神の方のダメージは耐えきれなかったようである。 


「リンドブルムを捕まえてくるように言われただけなのに……」


「ん?」


 ブツブツと小声で愚痴を呟くネストールの言葉が、偶々俊輔の耳に届いた。


「何だ? お前、地下にいたリンドブルムを捕まえに来たのか?」


 その呟きが聞こえた俊輔は、何も考えずネストールに問いかけた。


「あぁ、そうだ。…………ん? 地下?」


 問いかけられたネストールは、素直に答えを返した。

 しかし、俊輔が発した言葉を思い返して、ネストールは疑問が頭に浮かんだきた。

 リンドブルムは、確かに研究所の地下に閉じ込められていると伝えられてここに来た。

 捕まえるとなると、リンドブルムと同等かそれ以上の実力がなければならない。

 今魔族の組織の中で、この任務に動けるのはネストール(自分)だけだった。

 安全を確保するために部下も数人連れてきた。

 しかし、いざここに辿り着いたら高ランク冒険者たちが居て、戦闘になり片付ける手間になったのは仕方がない。

 その後に現れたこの男は想定外だった。

 幾ら片手が使えないとは言っても、ここまで一方的にやられるなんて思ってもいなかった。

 ここまでの実力差は、自分が尊敬する上司以外に感じたことがない。

 そしてこの男の実力は、その上司に匹敵するのではないだろうか。

 そこまでの男が、研究所の地下のリンドブルムの事を知っていた。

 それによくよく考えたらこの男が現れた方角は研究所の方からだった。

 つまり、リンドブルムは……


「リンドブルムなら俺が倒しちまったぞ?」


 グルグルと混乱する頭の中で、その答えが丁度導き出されたところで、俊輔からその言葉が告げられた。


「……………………ハッ、ハハッ…………」


 その言葉を聞いて、ネストールは膝から崩れ落ち乾いた声で笑い出した。


「ハーハッハッハッ…………!」


 ネストールは、そのまま狂ったように笑い続けた。


「………………ハハッ」


「……ようやく収まったか?」


 ようやくネストールの笑いが止まり、俊輔は取り敢えずネストールを捕まえる為、跪いたままのネストールに近付いて行った。


「大人しく捕まって貰おうか? 最近お前ら魔族はちょっと暴れ過ぎなんだよ。お前らが何を企んでいるのか分からないが、お前が知ってる事を洗いざらい喋ってもらうからな!」


 研究所の地下で手に入れた資料もある事だし、SSSランクのアマンド以上の実力を持つこの男からも話を聞けば、魔族の考えている企みの解明が出来るだろう。

 魔族が大人しくしてくれないと、世界観光の旅がスムーズに進まなくて迷惑である。

 迷惑を受けた国やグレミオがどう思い、魔族をどう扱うかという事は、俊輔にしたら興味がない。

 観光の邪魔にならなければそれだけでいいと言うのが、俊輔の本音である。


「…………さてと」


 二刀の木刀を魔法の袋に収納して、跪いて俯き、全く動かなくなったネストールに向かって魔力を使って拘束をしようとした。


「…………………………死ね!」


「!!?」


 俊輔がネストールに向けて手をかざした所で、動かないでいたネストールが、いつの間にか左手に黒い水晶玉を持っていて、一言ボソッと呟くと、いきなり強力な魔力に包まれた。


“ズゴーーーーーン!!!!!”


 その魔力が強烈な光を発し、至近距離の俊輔を巻き込むように大爆発を起こした。






◆◆◆◆◆


“ズゴーーーーーン!!!!!”


「「「!!?」」」


 俊輔に言われたように、気絶したアマンドを連れて遠くに離れていた京子達は、俊輔が戦っているはずの方角からの巨大な爆発音に、驚愕の表情をして固まったのだった。


「あっちって……?」


 あまりの大爆発に、最悪の考えが浮かんだ京子は一気に顔を青くした。


「ピピッ……」


 パタパタと京子の近くを飛んで浮いていたネグロも、さすがの大爆発に表情を固まらせて小さな声を出していた。


「………………俊ちゃん?」


 京子は表情を固まらせて呟き、


「俊ちゃん!!!」


 大きな声を上げて爆発を起こした方角に向けて走り出してしまった。


「ピピッ!?」


 俊輔の安否が気になり、爆発が起きた方角に向かって走り出してしまった京子に、慌ててネグロは追いかけ始めたのだった。

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