第10話
「はい! この尻尾の兎でいいんだよね?」
そう言って二人に兎を渡した。
「おぉ、よく見つけられたな」
「えへへ、まぁね」
見つけられたのは、はっきり言って偶然だった。
探知術を使って兎を探していて、兎の巣を見つけられる事は見つけられるのだが、尻尾の色まで違いが分からずに仕方なく諦めかけた時、ペドロ達が言っていたある事を思い出し、もう一度探知術を使って幾つかの巣を確認した。
「二人が言ってたように、この兎だけ守られるように、1羽だけ他の兎より巣の奥にいたんだ」
そう、幾つかある巣の中で、1つの巣にだけ違いがあった。
1羽だけが奥に潜んでいる巣があり、その巣の奥の方を探したら、目当てのこの黄色い尻尾の兎を捕まえる事ができたのだ。
「これで魔法の袋が作れるね」
二人の目的は兎を捕まえてその皮で魔法の袋を作る事であり、そして俺の目的は、作り方を教えてもらう事を密かに企んでいたのである。
「うーん……」
俺の言葉を聞いたニコラスが何故か渋い表情をした。
「? どうしたの?」
なにか問題でもあるのだろうかと、俺は首を傾げた。
「確かにこの兎の皮を使えば、魔法の袋は作れるけれど、今から作ると隣の村に着くのが、日が暮れるぎりぎりになっちまうんだ」
「えっ、それでも……」
日が暮れるぎりぎり位だったら、別に二人なら大丈夫だろうと俺が言おうとした。
「それだけが理由じゃなくて作るには大量の魔力が必要になるんだ」
「作るのはニコラスなんだが、魔法の袋を作って魔力の回復を待ってからだと、集合予定日に間に合いそうにないんでな」
「えー! 作る所は見れないの?」
「残念ながらそう言うわけだ」
「魔力が必要ってどういう事なの?」
「錬金術で作るからだよ」
残念な気持ちで話をしていたのだが、聞き捨てられない単語が出てきた。
「錬金術?」
俺はこの言葉に好奇心が溢れて来た。
「あぁ、だから残念だけど……」
「僕がやる!!」
俺はニコラスの言葉に被せるように提案した。
「「えっ?」」
二人は揃って驚いた。
「僕が作り方を教えてもらって作れば、問題ないよね?」
今日中に安全に隣の村に行くのであれば、魔力を使いたくないのは分かったが、二人が帰ってしまっては錬金術を覚えられない為、俺は二人に提案した。
「……よし! 俊坊! 作ってくれ!」
「おい! ペドロ!」
「兎を捕まえてくれたのは俊坊なんだ、だったら任せて見てもいいんじゃねえか?」
「……そうだな。俊坊は魔力も多そうだしなんとかなるかもな! 俊坊俺が錬金術を教えるから作ってくれるかい?」
「やった! 僕全力で頑張るよ!」
粘った甲斐もあり、錬金術の使い方をニコラスに教わり、とうとう魔法の袋を作る事になった。
そして、いざ作成となり、
「いいかい? さっき教えた通り錬金術はそれほど難しい事はないんだ」
そう言ってニコラスは色々と用意していった。
「まず、必要なのは魔法陣」
そう言ってニコラスが魔法陣が書かれた布を取り出した。
「そして、この魔法陣の中に今回魔法の袋を作る為の兎の皮と、袋を開け閉めする為の兎の皮で作った紐、そして後は魔石を乗せる」
魔法陣の上に材料を乗せていった。
「こんな大きな魔石じゃないと駄目なの?」
そう、魔法陣の上に置いた魔石はかなり大きめの魔石だった。
その為、この大きさなら売った方がいいんじゃないかと思った。
「別に大きな魔石じゃないといけない訳じゃないけど、今回は奮発してこの魔石を使う事にしたんだ」
「この大きさの魔石、売ったら1年は楽できるぜ」
『まじで、いいのかよそんなの俺が使って……』
心の中でそう俺が思っていると、
「この大きさの魔石がない場合は、量で代用する事になるね」
「なるほど……(それなら森で魔物を狩れば大丈夫か……)」
頭の中でこれからの事を考えてわくわくして来た。
「さあ後は始める訳だけど、いいかいこの魔法陣に魔法の袋の完成品を想像しながら、おもいっきり魔力を流すんだ」
「分かった!!」
確かに言われると簡単そうだが、よく魔法は想像力が大事だと聞いていた為、俺は魔力を高めながら完成品を強く想像する為に集中していった。
“ビリッ……”“ビリビリ……”
「……おいおい」
「……まじかよ?」
ペドロとニコラスは俊輔が放つ魔力の凄さに度肝を抜かれていた。
「凄いとは思っていたけど、まさかここまで凄いとは思わなかった」
「あぁ、魔力量だけならAランクの冒険者、いや下手したらSランク冒険者位まで行くんじゃねえか?」
そんな二人の話も耳に入らない位集中した俺は魔法陣に魔力をおもいっきり流し込んだ。
「ハァー……」
“…………ピカーーーーー!!!!!”
魔力を流して少したってから、まばゆい光が辺りを包んだ。
そして光が収まった後、魔法陣の上には1つの袋が残っていた。




