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第99話

パソコンの調子が悪く、時間が無くなり急いで書く事になってしまいました。

「ここだな……」


 昨日の事でへそを曲げたアスルの機嫌が直るまで相手をした俊輔は、昼食を食べた後、京子とネグロを連れて冒険者グレミオに向かった。


“ガチャ!”


 グレミオの建物の中に入ると、この時間では他の冒険者は依頼をこなしに行っているのか流石に少なく、とても静かな様子だった。


「すいません!」


 俊輔たちは受付に行き、書類を整理していた女性に声をかけた。


「はい! 本日はどのような御用でしょうか?」


「出来ればマエストロに会いたいんだけど……」


 女性にAランク冒険者だとタルヘタ(カード)とルナグランデのグレミオのマエストロに書いて貰った紹介状を見せて、マエストロとの面会を求めた。


「…………確かにルナグランデのマエストロの印が押されていますね。少々お待ちいただけますか?」


「はい」


 女性はタルヘタと紹介状の印を確認した後、俊輔たちに一声かけて奥の部屋に入って行った。




「どうも、君たちが魔族の情報を聞きに来た冒険者かい?」


 少しの間受付の前で佇んでいた俊輔達の前に、魔導士風の衣装を着た、中肉中背の細目で茶髪の男性が先程の受付にいた女性を連れて奥から現れた。

 どうやらこの男性がマエストロらしい。

 俊輔たちは今までの経験から、グレミオのマエストロと言ったら脳筋のイメージだったので、対照的な印象の男性が出て来たので、意外な思いを若干していた。


「ん? 何だいその反応は……」


「いや……、何か今までのマエストロの印象とは違ったので……」


 俊輔達の表情に疑問を持った男性が、不思議に思ったらしく問いかけて来たので、俊輔は言葉を濁しつつ返事を返した。


「タルヘタに記されたマエストロ認定の印を見る限り、アリバカンポとルナグランデのマエストロと比べたのかな?」


 ここのマエストロは見た目や話し方などから知的な印象が感じられたが、その印象通り、少ない情報から的確に推理してみせた。

 Sランクに昇格する為には、3都市以上のマエストロの認定が必要である。

 マエストロの認定はタルヘタに印が記入されているので、見たらすぐ分かるようになっている。


「えぇ……、まぁ……」


「あの夫婦はちょっと脳筋ぽいもんね? ……いや、()夫婦だったか?」


 ルナグランデのマエストロのバネッサから聞いていた通り、どうやらこの男性は元夫婦の脳筋マエストロたちと昔パーティーを組んでいた仲間だったようで、納得の表情と共に軽くディスっていた。


「おっと……、話がそれたね。取り敢えず私の部屋に来てくれるかい?」


 立ち話をしていた事に気付いた男性は、俊輔たちを奥にある執務室に案内してくれた。


「名乗るのが遅れたね。私はこの町のマエストロのフィトと申します。どうぞよろしく」


「Aランクの俊輔です」「妻の京子です」「ピピピ、ピー!」


 執務室のソファーに全員が腰かけた後、男性事フィトが自己紹介してきた。

 それに対し、タルヘタを見せたので分かっていると思ったので、俊輔たちは簡単に自己紹介したのだった。

 いつも通り俊輔の頭の上に乗っているネグロも一緒になって名乗ったが、当然フィトには伝わらなかったので、俊輔が通訳してあげた。


「さてと……、紹介状にも書いてあったけど要件を聞いていいかい?」


 面会するために持ってきた紹介状を見せたので、内容を知っているはずだが、フィトは改めて本題に入った。


「ルナグランデのマエストロから聞いたんですが、ここの町の近くに魔族のアジトらしき物が在ったらしいのですが?」


 要件を聞かれた俊輔は、この町に来た要件の一つである魔族の情報を聞く事にした。


「あぁ、その事ですか……、確かに少し前までは近くに魔族がいたのですが、冒険者たちによって追い払われたので今は何も居ませんよ?」


 どうやら確かに魔族が居たらしいのだが、フィトが冒険者を集めて討伐を依頼したらしい。

 それによって、魔族は冒険者の接近に気付き逃げて行ってしまったとの事だった。


「そうですか……、まぁ、一応見に行って見たいので、場所を教えてもらえますか?」


「分かりました。行くのは良いのですが、あそこら辺には変異種が多いので注意してください」


 魔族の退治は観光のついでなので、居ないのならば別に構わないのだが、せっかく来たのだから一応現場を見に行く事にした。

 魔族のアジトが在った場所には元々魔物の変異種が多かったらしく、結構危険な地帯らしい。


「ついでに素材採集の依頼も受けて行く事をお勧めしますよ」


 変異種の素材は、同じ種類の魔物よりも丈夫な事が多いので価値が高い。

 今は何もない所に行くのだから、タダ行くのではなく素材採取もついでにする事を勧められた。


「分かりました。そうします」


 フィトの勧めを素直に受け、俊輔たちは執務室から出て行こうとした。


 その時、


“ガチャ!”


「うぃ~す。フィトさんいる?」


 一人の男性が、ノックもせずに軽い口調で部屋に入ってきたのだった。


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