第91話 歓楽街建設がスタートしました! +1000pt
男爵夫人から許可をもらった翌日。
現場作業をしている俺のところに、ガラガラと音を立てて馬車がやって来た。
なんだなんだ。
馬車から、ムキムキの男とお腹の大きな女の人が降りてきた。
女性は栗色の髪を伸ばした、唇が印象的な人だ。
ムキムキはシャツがパンパンにはち切れそうな筋肉の髭面。
夫婦かな?
「ミアンさんですか?」
お腹の大きな女の人が俺を呼んだ。
「はいはい、なんでしょうか」
インビンシブル号から降りて、彼らのところへ行く俺。
護衛としてマキナがついてくる。
「ああ、あなたが! ハーレクイン男爵夫人から紹介されたんです! あなたが新しい街で、色街を作ろうとしているって!」
「おおーっ! ということはあなたが……!」
「はい。ドンナと言います! 私を慕う子たちが働ける場所を作ろうとずっと思ってて。でも、なかなか土地が空かなくて」
「あー、壁の中はスペースが限られてるもんなあ」
ケスタイン王国内は、完全に開発されきっている。
人が集まるところにはみっしり建物があり、その全てに役割がある。
空き家になった家は即座に解体されるし、何か施設を建てたい順番待ちに回されるわけだ。
俺が通路街を作るというのは、そんな都市にとって革命的な事件になる。
だがやっぱり、壁の中よりも外に近い通路街はちょっと怖い。
常識的な人々が尻込みをする中、ドンナはチャンスと見て、男爵夫人の誘いを受けたのである。
「私も元は娼婦なんですけど、娼館の用心棒をしてた彼とくっついて。彼ったら危ない仕事もたくさんしてポイントを稼いで、私を養うってプロポーズしてくれたんです」
「ほほー」
俺がちょっと尊敬の目を大男に向けると、彼は照れて頭をポリポリ掻いた。
「でも、私を慕う子たちがいて、壁の中だと古い設備を使ってる店も多くて、色々大変なんです。だからみんなを助けて快適に仕事ができるよう、新しい店を作るって私は決めてたんです! そのために、ポイントも溜めてきましたから!」
おお、ドンナの目が燃えている。
「やる気に満ちた女の人は強いですからね! 私も強いですし!」
「マキナは物理的に強いよね」
ということで、お腹の赤ちゃんごとこっちにやって来た、ドンナと旦那さんなのだ。
『ウグワーッ! 歓楽街建設がスタートしました! 実績・娯楽は大事だね、解除! 1000pt獲得!』
「?」
よし、ドンナと旦那さんにはチャットボットの声が聞こえないな。
人竜族とヨルカが特別なんだろうな。
「じゃあドンナさん。ここに俺がチャットボットと協力して作った娼館の設計図があるんですが」
「はい、見せて下さい。……えーっ!? こ、こ、これってまさか……」
「そう……。一部屋ごとにお風呂がついています」
「な、なんですってー!」
ドンナが衝撃を受けている。
一般的に娼館は、従業員用の大風呂、客はお湯で体を拭く程度の感じだったようだ。
水はあっても、燃料を使って湯を沸かすのはそれなりのコスト。
大風呂にしてしまうのが一番効率がいいからね。
そのコストを踏み倒せるのが、俺がお買い物で手に入れるこのセントラル・クアユニットだ!
小型のものは我が家の風呂や、作業員用の大風呂に使われている。
これを幾つも集約し、ホテルなどを建設できるようにしたのがセントラル・クアユニット。
つまり、建物の中心に給湯能力、排水能力がある異次元ユニットを設置。
これを取り巻くように部屋を配置し、風呂を用意できるわけである。
「一部屋に一つお風呂があるなんて……!! ゆ、夢みたい……!!」
目をキラキラ輝かせるドンナ。
横でうんうん頷く旦那さん。無口な人だ。
「ということで、早速作っていこう。マキナ、手を貸してくれ。ロボットアームで壁をどかせて、こっちに色街作るから。あ、花街の方がいいのかな?」
『響き的にそちらの方が色々な施設を受け入れやすいですね!』
チャットボットの提案を受けて、花街という名前に変更!
通路街の第二ルートの脇に、出島のようにして最初の花街を建造するのだ。
壁をパコンパコンと建ててもらって……。
「マキナ上手くなったなあ」
「ふっふっふ、イメージでずっと練習してたんです」
イメトレ済みとは!
一時間半ほどで、ちょっとした広さの空間が完成した。
この作業の間に、ドンナからケスタイン王国における娼館についての説明を受けた。
王国では、こういう設備は社会の維持に必要なものとして扱われている。
性欲とかは絶対に消せないものだし、労働者のガス抜きにもなるし、女性も体一つでポイントを稼げるからね。
労働者の体周りのサポートも整っており、定期的な健康診断すらあるらしい。
他人の精神と欲求をケアするお仕事だからね。
で、過去に移民でやって来た一団が、こういう設備を許さない的な宗教を持っていたらしく、色街を排除しようと暴れたらしい。
一度は男爵夫人が話し合って彼らを説得したのだが、すぐに再発。
デマを流したり、嫌がらせをして色街を潰そうとしたので、ここで王国が動いた。
その一団を即座に国外追放にしたそうだ。
彼らは無事、その日の内にシェイプシフターのお腹の中に収まったという。
それくらい、王国はこういう産業も大事にしてるわけだ。
俺の元の世界でも、世界最古の職業って呼ばれてたもんなあ。
入口は幅3mほどの通路。
で、その奥に花街が設置できる。
ここはぐんと広げていって、色々な設備を誘致してもいいだろう。
土地がなくて新しいことが出来ず、くすぶっている人たちを呼ぶのだ。
「では、セントラル・クアユニットを購入します!」
買うと同時に、俺の背後に出現するユニット。
「ひええええ」
ドンナがめちゃくちゃ驚いた。
お腹に障らないようにね……!
「そこに、プレーンな感じの建物を購入。ブロック構造なのでサクサク取り付けられます。形状はまあ、縦に四階建て、横に四部屋連なるくらいで……」
完成!
買って設置するだけだからとにかく早い。
これ、簡易宿泊所を設置するためのアイテムらしいんだけど、それはつまり娼館にも利用できるわけだ。
ベッドなどの設備はせっかくだから、王国で買付をすることを決める。
「俺がポイントを出すので、二人は明日女の子を集めて、みんなでベッドや必要な器材を買い付けてきてね」
「は、は、はい! こんな……こんな凄いことに……。ほわわわわ……」
「旦那さん、ドンナをフォローして頑張って運営してね」
コクコク頷く旦那さんなのだった。
色々なことが一度に起きて、ドンナが目を回しそうだからね。
旦那さんはたくましい腕でドンナを後ろから支えている。
頼れる男だ。
ちなみに建物の一階の一部フロアが、ドンナ夫婦の居室だ。
そして従業員用のアパートを隣に作り、こっちにも大浴場を設置する……。
おお、ポイントが湯水のように溶ける。
だがこれだけやっても一万ポイントで済むのだ。
常識的な設備は安いなあ!
テラフォーミングとかしないからなあ。
『ウグワーッ! 花街の基礎が完成しました! 実績・歓楽街の第二歩目、解除! 1000pt獲得!』
将来的にはここをもっと広げていって、通路街の裏に遊べる第二の街を作りたい気持ちもある……!
この世界だと、反社が存在できない。
何をどうやってもかなり健全になりそうだし。
◎現在のポイント:118720pt
貢献ポイント :145755ポイント(器材買付用にポイントを渡した)
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