第90話 営業許可を得ました! +1500pt
男爵夫人のお屋敷に向かう。
貴族の住まいは王国中に点在しているんだなあ。
彼女の屋敷は、歓楽街の中心にあった。
伯爵の邸宅は無機質な四角い家をデコったやつだったし、子爵はどうやら工場の上に家を作って住んでるらしいし。
なんなら畑での生産も彼の担当なので、遠方の畑にも子爵の家があるらしく。
そういう個性的な屋敷なのかなーと思って訪ねてみたら、なんとびっくり。
それ系のお店がみっちり入ったビルみたいなのが三つ連なっていて、その最上階が繋がっていたのだ。
そこだけやたらと豪華な作りになっていて……。
「あれが男爵夫人のお住まいだ」
デリアが指さしたので、なるほどーと納得してしまった。
彼女は歓楽街の中心で、ビルの上を繋げて住んでいたのだ。
こういう建物みたいなの、地球の海外に無かったっけ?
どこのビルからでも男爵夫人に会いに行けるらしく。
入口で客引きしているお姉さんやお兄さんをどうにか振り切り、俺はビルの中に入ったのだった。
「エレベーターがある」
「因子稼働エレベーターだな。ポイントを支払い、ここに手を触れると動く。大体の客は金がもったいなくて階段を上がるらしいが、店の女にいい顔をしたい男が支払って使用するぞ」
「デリアはこういうところも詳しいなあ……」
「移民がよく歓楽街で働いているからな」
なーるほど。
彼女の管轄だった。
「じゃあ俺はみんなにいい顔をしたいので、エレベーターで行こう。みんな、乗って乗って」
「やったー! 乗ってみたかったんです! お邪魔しまーす」
「私が思うに、マキナの尻尾が邪魔じゃないか?」
「なんですって! こうやって巻けば全然平気です!」
「わしはミアンにくっついていれば平気じゃな」
「あーっ、ヨルカずるいですよー!!」
『ポッピポッピ』
ぎゅうぎゅうと四人と一匹で乗り込んだが、幸いエレベーターの重量制限……あるのか?……には引っかからなかったようだ。
ポイントは貢献ポイントを100ほど。
なるほど、普通の人には結構な出費だ。
エレベーターは外向きに窓がついており、ぐんぐんと登っていくと歓楽街を一望にできる。
上っていく速度自体はゆっくりめだから、結構じっくりと遠景を楽しむことができた。
そして最上階。
というかエレベーターが到達できる一番上のフロア。
ビルで言うと六階になる。
そこに男爵夫人の屋敷に繋がる扉があった。
「こんにちはー」
扉をノックすると、扉の一部が開いて仮面を被った使用人が顔を出した。
女の人の声がする。
『どなたでしょうか。男爵夫人へのアポイントはお取りでしょうか』
「ああいえ、アポは取ってないんですけど、都市計画のために許可をいただきたいことがあって来ました。ミアンと言いますー」
身分証明のために、移民の証である腕輪を見せる。
使用人の目から赤いレーザーが出て、腕輪を読み取った。
『ミアン様ですね。王太子殿下、公爵、侯爵、伯爵、子爵にも認められている人物であるとの情報を収得しました。少々お待ちくださいませ』
使用人が引っ込んだ。
「はえー」
デリアが変な声を出しているな。
「どうしたんだ?」
「いや、普通はアポイントなしじゃ絶対に会えないんだぞ。それがミアンなら会えるんだなあと思ってな……。やはり持つべきものはコネ」
「ミアンは圧倒的な実績で、そういうの勝ち取りましたからね! えっへん!」
「まあ、マキナは内助の功みたいなもんじゃからな。威張ってもいいんじゃないかのう」
『ポピポピ』
わいわいおしゃべりしながら待っていると、すぐに使用人が戻ってきた。
『夫人が会われます。お通り下さい』
扉が開いていく。
使用人は頭全体に仮面を被ったメイドだった。
人間じゃないんだろうなあ。
さっき目からレーザー出してたし。
真っ暗だった通路の中に光が灯る。
伯爵のアンティークな内装と異なり、こちらは派手な電飾、何色もの瞬く光、そしてなんか黒塗りのヌメッとした光沢がある硬い床。
クラブか何かみたいだな……?
果たして、こんなところに住んでいる男爵夫人はどんな人なのか!
いかなるアバターを使っているのか。
例によって一本道なのだが、それがスロープになって緩やかに上へとカーブする廊下。
ひたすら歩いていく内に男爵夫人の部屋に到着した。
『夫人、お客様です』
『お入んなさい』
扉が開いた。
その奥には、真っ赤なソファがある。
壁一面に色とりどりの酒瓶が並び、あるいはきらびやかなアクセサリーの数々がケースに入れられて掛けられている。
ソファに座っていた人物が立ち上がった。
肩の出た黒と赤のストライプなドレス姿の女だ。
髪の毛は白黒ストライプ。
左右の目が赤と緑で違う色だった。
『噂は聞いてるわよ。あんたがミアンね? あたしはハーレクイン男爵夫人。よく来てくれたわね』
「どうもどうも。あの、いきなり本題から切り出してもいいですかね」
『もちろん。あんたはあたしたちの実体を知っているでしょう? 前置きはいらないわ』
「ではでは。通路に娼館を建てたいんで、許可をいただきたいんですが」
『いいわよ』
一瞬で許可が出た!
『ウグワーッ! 営業許可を得ました! 実績・通路街の色街、解除! 1500pt獲得!』
「精査しなくていいんですか?」
『チェックは殿下と侯爵がやったでしょぉ? あんたの人柄も見られてるし、これまで果たしてきた実績も見られてるわ。それに気象竜を倒すような傑物なんだから、下手に扱って心象を悪くするよりは友好的にやっとくのが利口だわ』
他の貴族の方々と全然キャラが違う。
恐るべしアバター。
『そこであたしからお願いなんだけど。色街は作っていいわ。で、そこは専用のスペースを設けてほしいわけ。通路からこう、ぴょこっと飛び出る感じでね。その周りに、賭場とか遊技場とか、どんどん広がっていくと思うわよ』
「なるほど、通路街に歓楽街を作るわけだ。後で設計図送って下さい」
『いいわよ。もう作らせ始めてるし。帰る頃には渡せるわ』
「さすがに早い」
「何気にこれまで見たAI貴族たちの中で、もっともAIらしいと言えるのう」
「ヨルカだってそうでしょ」
「わしは長いこと存在してて、AIらしさがなくなったからのう!」
『用事はそれでおしまい? おしまいね? じゃあ帰んなさい。あたしはこう見えて忙しいの。ああ、店に勤める女の子ね? これから独立しようって子が一人いたから、その子とスタッフをまとめて送るわ。明後日くらいまで待ってなさいね』
話がはやーい!!
『ウグワーッ! 色街の段取りが完了しました! 実績・あとは箱を作るだけ、解除! 500pt獲得!』
「今回の俺、話しかしてないような……」
「あれ、絶対にミアンが来る事を先読みして準備してたやつじゃな」
「ミアンはすっかり大物だな……。私の目に狂いはなかった」
「でしょー。ミアンは凄いんですから!」
『ポピピー!』
『イチャイチャすんなら外でやってくんない?』
◎現在のポイント:126720pt
貢献ポイント :155755ポイント
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