おまけその1 勝流、ゲレート809/810にたまげる
タイトル通り、おまけです。
なので、できれば本編を読み終わったら……というのが作者からのお願いです。
主人公の喋り方とか、そもそも文の書き方というか、テンションが違ったりするので……作者のお試し、的なことも含んでいます。
だから、↑のようなお願いを、ということですね………
………それと、書くか迷いましたが……おすすのBGMは機動戦です。
知ってる人にしか、まず伝わらないだろうなぁ、と思いつつ。
これは、勝流がアルデルトに憑依する前のお話。
勝流は、相も変わらず軍事史の探求に没頭していた。
そんな中、実に興味深い兵器を見つける。
概要をサラッと読むだけで、勝流は声を上げた。
「なんじゃあこりゃああ!!??」
勝流はまさに、たまげていた。
その兵器の名前は……
Geschützwagen Tiger für 17 cm Kanone 72 (Sf.)
そしてもうひとつ。
Geschützwagen Tiger für 21 cm Mörser 18/1 (Sf.)
である。
日本語に直訳すると「17cmティーガー自走砲」と「21cm ティーガー自走砲」と呼べる。
この時点で凄まじい香りがする。
更に資料を読み込むと、勝流は言葉を失くした。
開いた口が塞がらない、というのはこのことであろう。
辛うじて出た言葉は……
「……ドイツ驚異のメカニズムか……」
1942年1月、総統アドルフ・ヒトラーは、ドイツが理想とする自走砲開発に乗り出した。
この新型自走砲は、最低限の防御力を備えれば可とされ、可能な限り既存の車両を用いることが条件であった。この中には、開発中のティーガーⅠすら含まれていた。
この要求に従って、ドイツ国内の有数な兵器会社がこぞって開発を開始、実戦に用いられた。
その中で、最大級ともいえる自走砲が存在した。
ゲレート809/810である。
「ゲレート」というのは、ドイツ軍においては兵器の秘匿名称に用いられる。
ドイツ語で「機器」「装置」「道具」「器具」などを意味する。
ゲレート+番号。
この場合、809機材、と呼べるし、機材番号809、とも呼べる。
大問題はその仕様要求である。
第一に、主砲は17cmカノン砲、もしくは21cm臼砲を車載。
これはまだ理解できる。
頑張れば、やれんこともないだろう。
第二に、主砲は車体から降ろして射撃を行えるように「着脱式」とすること
「???????????????????????」
勝流は頭を抱えた。
「ちゃ、ちゃく、ちゅくだつ、着脱式……はぁ……なるほど」
確かに、着脱式の自走砲は他にもあるが、主砲が17cmカノン砲という巨大なものであるため、果たしてどうやって着脱式にするというのか。
仕様要求がこれだけならまだ良かった。
そう、まだあるのである。
第三に、従来の自走砲のような限定旋回式ではなく、全周旋回を可能とすること
そう、全周旋回可能。
この大重量を、である。
勝流は、こんな荒唐無稽な仕様を満たせるはずがないと思った。
しかし、資料を読み進めて行くうちに、身体に変な汗が流れる。
勝流はその恐るべき「事実」に震えた。
「ゆ、夢かぁ……!?」
なんと、このばかb……恐るべき計画は試作車輛まで進んでいたのだ。
車体長だけでいえば、「某少女が戦車に乗って戦うあのアニメ」でも出演した超重戦車「マウス」の10mをも超える、驚異の13m。
主砲を含めれば、もっと長くなるだろう。
見つけた写真も、車体長が長すぎて一枚の写真に収まらなかったらしく、複数枚はっつけている始末である。
車内も快適な広々空間が広がっているようだ。
ニ○リやIK○Aの家具も容易に置けるだろう。
「試作車体だけなんだろう、流石に!HAHA」
この時点で勝流はお腹一杯だったが、次に見た写真に恐怖することになる。
「えー……」
これは何かというと、主砲を載せる機構である。
ゲレート809/810に要求された「着脱式」を実現するべく開発された代物らしい。
嘘か真か。
なんとこの搭載機構……
「えぇーと、砲撃の際には主砲が……え?……スライドし、射角を確保できる砲撃形態に移行する……だと……!?」
なんとあろうことか、当時の開発陣は、なんとしても仕様を満たすべく、創作の世界も真っ青な「変形砲撃機」を「「「マジで、大マジで」」」作ろうとしていたのだ!
「野心的にも程があるだろうが!!こんなのが実在したのか!?」
何故か諸性能が載っており、確かな情報か不明なものの、この際あまり気にならない。
総重量は60t。
乗員は8名。
車長、操縦手、残りは全員砲手。
エンジンは「マイバッハ HL 230」で、恐らくティーガーⅡなどに用いられた物と同じか。
最高速度は45km……本当か?
装甲は最大30mm。
しかしながら、流石に全周旋回は満たせなかったようで、限定旋回に留まっていた。
これで満たしていたら、というか完成していたら、もしかしたら「某少女が戦車に乗って戦うアニメ」にも出演できていたのかもしれない。
残念なのか、それとも当然とも言えるのか、ゲレート809/810は完成を見ることなく終戦を迎えた。
歴史というものは、時に我々の想像を軽々と超えてくる。
それがどのような形であれ、こうして過去を知ることができるのは、当時の人々が記録を残してくれたからこそ、である。
「これだから探求はやめられないんだ……」
そう、想像を超えてくる。
まさかこの時に得た知識が、本当に活かされる瞬間が来るとは、夢にも思っていなかったのであった。




