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TSローグライクダンジョンへようこそ  作者: ななぽよん
【三章】小麦畑が広がるダンジョン
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71話:グランドエンディング

 次の日。邪竜を倒してグランドエンディングを迎えるべく、再び我が家に集結した。


「で、おれは何すればいいんだ?」


 そしてここに御座(おわ)すは新メンバー! 轟さんじゃ!

 ニッシーの案とは、轟さんの回復魔法であった。

 え? 本当に効くの?


「やってみなきゃわかんねえけどさあ。怪我とかじゃないんだろ?」


 ということで、今日のメンバーは、ショタ精霊姫わち、妹マッチョ、北神エルフ、星野猫人、サイコガンニッシー、聖女轟の6人じゃ。南さんと竹林さんは部屋でお留守番。ダンジョンは基本6人までじゃからのう。

 そして北神エルフは風の魔導書と弓矢を持ってきた。邪竜がラスボスということで遠距離攻撃を装備じゃ。

 タンク、アタッカー、ヒーラー、サポートと良い構成のパーティーメンバーじゃないかの?


「ティルちーはマスコットだけどね」

「や、闇出せるもん……」


 ぶりゅりゅりゅ。黒もやが出せるしピカピカもできる。えへん。

 聖女轟を連れて館へ向かう。そしてプリンセス()に会わせた。


「こ、これアズマか? ネズミー……」

「それ以上いけないのじゃ」


 だめ! めっ!

 聖女轟さんはプリンセス()の両手、左手はサイコガンだが、を握り、ピカピカと身体を輝かせた。


「行ける気がする」


 まじか。まじか!

 プリンセス()の全身が光り輝く。

 変異した部分が光の粒子に変わり、キラキラと部屋の中で飛び散っていく。プラネタリウムの中にいるみたいだ。

 聖女轟さんが汗だくになり、ぐわりと姿勢を崩した。


「ふぅ……」

「だ、大丈夫かの?」

「ああ。腹減ったぁ……」


 聖女轟さんはプロテインバーを受け取り、袋をちぎってもしゃりもしゃりと食べ始めた。めっちゃカロリー消費したようだ。

 プリンセス()の光が収まり姿が見えてくると、ほとんど元に戻っていた。


「成功したな。役立てて良かったぜ」

「う、うむ……」


 ただ一箇所。まだ頭にキノコが生えていた。

 そういえばこのダンジョンの、白い段階で入った頃。元のゲームになったファーミングプリンセスのわちのデータでは、プリンセスの頭にキノコ生えてたんじゃよな……。

 もしかしてこれが元の状態になってない?

 まあそれでも、頭にキノコが生えてるくらい……うーん……。


「これか? むしっちゃえばよくね?」

「あっ」


 聖女轟さんはプリンセス()の頭のキノコを掴み、無理やり引っ張った。

 キノコがしゅぽんと抜けた。

 ええー!?


「これで元に戻ったろ」

「は、ハゲてるのじゃ……」


 プリンセスハゲ。

 ま、まあプリンセス()の身体は元通りに戻った! ばんじゃーい!

 侍女がわちらの前にすすと近づき、頭を下げた。


『皆様の助力で姫様が元通りになりました。深くお礼を申し上げます』

「あ、フラグ立った」


 プリンセス()が侍女の手を借りながらベッドから降り、ドレスの裾を掴み一礼した。んー。動作は優雅なんだけどなぁ! 中身が俺なんだよなぁ!


『わたくしの浄化の力を取り戻しました。これで世界を清浄できます。時が来たらお声掛けくださいませ』


 うむ。これでエンディングに入ると見せかけてラスボス戦に入るんじゃな。南さんからネタバレ聞いた。


「みんな準備は良いかの?」

「おう!」


 妹マッチョは上腕二頭筋を見せ、北神エルフは弓を掲げ、星野猫人は包丁を手にし、ニッシーは左手のサイコガンを構え、聖女轟さんはプロテインバーを囓った。

 今こそ最終決戦の時!

 プリンセス()と共に、館を出た。門のゲートは消えている。もう後戻りはできないようだ。

 外は真っ暗な夜になっていた。

 プリンセス()が小麦畑で両手を挙げると、光が空に向かって走り、黒いもやを突き破った。

 膜が破けるかのように黒いもやは消えてゆき、満天の星空と丸い白い月が現れた。


『これで世界の呪いは払われました。精霊姫。わたくしが人類代表としてお礼申し上げます』


 プリンセス()が小麦畑の中で膝をついた。

 えへへー。


「おかざり精霊姫」

「水を差すのはやめるのじゃ、妹よ」


 いや、油断してる場合じゃない。

 丸い白い月がぶるりと揺れた。そして月は黒く変わり、再び空が闇に覆われていく。


『あっ! 瘴気の根源となった邪竜! そんな! 月に封印されていたはず! み、みなさん逃げてください!』

「ふっ。逃げるなんて選択肢はないのじゃ」


 わちらはそれぞれ距離を取り、邪竜の迎撃に構える。

 しかし暗い。真っ暗の中で何も見えない。灯りの魔導書を持つ竹林伯爵を連れてくるべきじゃったか!


『みなさんの覚悟は伝わりました! 微力ながら協力させていただきます!』


 プリンセス()が光り輝き、小麦畑がそれに呼応する。

 そ、そうか!

 わちも、うぬぬぬぬと能力を起動! ぴかぴかー!

 金色に光り輝く小麦が空へ舞う。真っ暗な闇の中を明るく照らした。

 そして、黒いもやを発する邪竜が金の小麦を払いながら、わちらの前でホバリングした。


「みんな戦闘準備じゃ!」

「おう!」


 遠距離攻撃を持つのは、星野猫人の投げ包丁と、北神エルフの弓と、ニッシーのサイコガン。

 特にニッシーのサイコガンは強力な手段だ。

 これにさらにパワーアップの巻物で強化し、地面に叩き落とす。

 そこへ妹マッチョが乗り込み止めを刺す。

 これがラスボス戦の攻略プランだ。


『貴様は余を月に封印した、聖女の末裔だな』


 聖女といっても聖女轟さんの事ではない。プリンセス()の事だ。


『邪竜よ。封印から目覚めたばかりで力が弱っているのはわかっています。今のわたくしならあなたを消滅させることができるでしょう』

『くぁっくぁっくぁ! 我が身は滅びぬ。脆弱な人間め……グォォオオオオ!!』


 突然、闇の中に強烈な閃光が走り、会話中の邪竜の頭が消し飛んだ。

 え、ニッシー? ニッシーがやったの?

 ちらりと見たら、「俺、何かやっちゃいました?」という顔でサイコガンを構えていた。

 ニッシー!?


『ば、ばかなぁ! この身が滅びるなどぉ!』


 いや、ラスボスさん。まだ死なないよね?

 邪竜の身体が光の粒子となって闇の空へ散らばった。

 まだこれからだ。きっと邪竜さんは第二形態を残しているはず!


『お・の・れ・お・ぼえ・て・お・け。闇の月がある限り……我が身は……』


 それっぽい台詞を吐くんじゃない!

 まだやれる! やれるって邪竜さん!

 本気だせよ! もっと熱くなれよ!

 空に満天の星空と、白い月が戻った。空を舞っていた輝く小麦は、ふわりふわりと畑に落下した。


『終わりましたね。精霊姫さま』


 お、終わったぁー!?


「おいニッシー!」

「やっちゃったぜ」

「ニッシぃー!」


 わちはニッシーのお腹を殴った。お腹を殴ったつもりだったが、身長差のせいでちんこに当たった。ニッシーは膝をついて前のめりに呻いた。


「あ、すまん。つい」

「う、うぐぐ……」


 みんなぽかんとしている。

 作戦もクソもなかった。パワーアップの巻物を使ったニッシーが強すぎた。この物語はニッシーが英雄として後世まで讃えられることであろう。


 完。


「ニッシー! あたしにも出番くれよぉー!」


 妹マッチョの殺人タックルがニッシーを襲う。ニッシーは死んだ。


「あ、しまった殺っちまった。脆弱な人間め……」

「ラスボスみたいなこと言うな」


 まあちょうどいいか。ニッシーは死んで、リアルで男に戻っただろう。

 さて。


「プリンセスよ。わちと共に来てくれるか?」

『はい! どこまでもお供いたしますわ! 精霊姫さま!』


 ううむ。わちの身体は元に戻ったものの、中身がプリンセスなのじゃよなぁ。

 これ、精神が入れ替わるとかしないと、わちが元に戻れないのじゃが。んー?


『どうかなさいましたか? 精霊姫さま?』


 うーむ。そもそも、NPC化してるんじゃよな。要するにモンスターと同じじゃ。ということはゲートくぐれないんじゃよなぁ。

 なんか、こう、能力でピカピカしたらなんとかならんか。

 わちはプリンセス()の手を握った。そして能力発動! ピカピカ!

 視界がぐわりと揺れる。

 あ、これは。しまった。ゲート移動の効果……。


 いつもより長く感じるめまいの中で、わちは原因を考えた。

 ダンジョン内ダンジョンで3階でボスが現れたと考えていたが、あそこは小麦畑を含めると実質4階だった。

 そしてラスボス戦の夜空の小麦畑が別のエリアだとしたら、あそこは5階だ。

 そういえば館の門の出口となるゲートは消えていた。

 だから、このエリアからの脱出方法は、わちのピカピカだったのだ。


 しゅた。

 ここはわちの部屋だ。わちの部屋に戻ってきた。

 なんかいつもより視線が高い気がする。


「おかえり。あ、アズマくん? 元に戻った、の? あれ?」

「まじか! まじじゃ!」


 部屋の姿鏡に映ったわち、じゃなかった俺の姿! 男子高校生の俺! いや慌てるな! ちんちんチェック! ちんちん付いとる! 元に戻ってる! やったー! ばんじゃーい!


「アズマくんと、ティル様?」

「うん?」

「うん?」


 俺は隣のちんちくりんを見た。

 そこにいたのは、さらさら銀髪ロングで、赤眼釣り眼で、ぷにぷにほっぺは朱色に色づき、小さくも高い鼻がちょこんと真ん中に付き、生意気そうな口からは八重歯が覗き、唇はぷるっぷるで艶つややかな、均整の取れたお人形のような美少女だった。


「わちがおるー!?」

「俺がいるー!?」

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[一言] 増えたー!!
[一言] やったぜ
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