視野が狭いにも程がある
令和七年五月三日(土)
考え事をすると周りが見えなくなるというか、視野が狭まるというか、昔からそんな癖があるというか、性分というか。本日、次女と二人でイオンで買い物をした帰りに、ケンタッキー・フライド・チキンでランチをした。次女と向かい合わせに座り、ハンバーガーとオリジナルチキンを食べる。先に食べ終わった僕は、ふと昨日の仕事で気になる事柄を思い出し、あれこれ考え始めてしまった。うちの家族が言うところの『意識飛ばしモード』に没入してしまったわけである。それから、食事を終えた次女が立ち上がったので、僕も考え事をしながら立ち上がり、次女が包み紙をゴミ箱に捨てるので、僕も考え事をしながら包み紙をゴミ箱に捨て、次女がトレイを所定の場所に返却したので、僕も考え事をしながらトレイを所定の場所に返却した。ふと見ると、見ず知らずの大人が、先に店外に出た次女と触れ合うほどの近距離で立っている。大柄で白髪の男性が次女に何やら言い寄っている。一瞬そう見えた。これは一大事だ。慌てて店の外に飛び出し――「すみません、うちの娘に何か用ですか?」――果敢に間に割って入り、落ち着いた声音で警告し、相手の顔をキッと睨むと、ただのカーネルサンダースだった。「パパ、どうしたの?」「君が誘拐されるかと」「お人形さんを見ていただけですけど。相変わらず周りが見えていないね。意識を飛ばすのもほどほどに」確かに。我ながら視野が狭いにも程がある




