腹が減っては戦ができぬ!
あの神の人さ、「神様がそう仕向けてくれたのかもしれませんね」って言ってたじゃん。でも神様ってずっと温泉入ってるだけで俺らのこと何も見てないって言ってたよね。てことは最初の発言はテキトー言ってただけってことになるよね。神ってけっこうメチャクチャなんだな⋯⋯ってここどこ!? めちゃくちゃすき家あるけど!?
いち、に、さん、し⋯⋯⋯⋯14個!? 見える範囲だけで14店舗すき家ありますけど大丈夫!? 畑もたくさんあるし!
ヤバない? この土地すき家、畑、すき家、畑ってなってんだけど。キモすぎん? キモミルフィーユ?
うわ! 畑で立ちションしてるジジイがいる! こんな広い道で!
と思ったらチンコでラーメン啜ってんじゃん。キモっ。あ、こっち見た。
「⋯⋯⋯⋯くれ」
なんか言ってるし。近づいてみるか⋯⋯
「⋯⋯してくれ」
え? もしかしてエロいこと言ってる?
「ナ⋯⋯マ⋯⋯してくれ」
生で!? 何だあのジジイ!
⋯⋯マジで何て言ってるんだ?
「仲間にしてくれ」
仲間にしてくれだァ!?
公衆の面前でチンコでラーメン啜ってるジジイの第一声がそれなのかよ!
「はやくしろ」
早くとかないだろ。
「はやくワシを仲間にしろ」
マジでなんなんだよ。
「はやくしんと知らんぞ」
何が起こるって言うんだよ。
でもなんか怖かったので仲間にすることにした。
「とりあえずズボン履けよ」
「うん、分かった」
聞き分けいいな。
『ぐぎゅる〜〜〜』
ジジイの腹が鳴った。
「腹減りコプター」
「さっきラーメン食ってたろ」
「あれはワシが食ってたんじゃなくて、ちんちんに食べさせてたんじゃ。猫にエサあげるのと一緒」
「はぁ⋯⋯。で、どうすんの」
「すき家に入ろう。この時間なら朝定食やってるから」
そう言ってジジイは最寄りのすき家に入っていった。ちなみにここはさっき立ってたところから4メートルくらいで、2番目に近いところが8メートルくらいだった。
「はよ来い」
なんでこんなジジイに命令されなきゃならんのだ。チンコでラーメン食ってるジジイに。
店に入ると、ジジイは4人掛けの席に座った。ので、俺は対角線のところに座る。
「ワシ、たまごかけご飯食いたい」
俺は何にしようかな。同じやつにするか。お、牛肉ついてくるやつもあるのか。100円高いけどこっちにしよ。
⋯⋯100円? そういえば俺、金持ってなくない?
「なぁジジイ」
「なんじゃ?」ピコピコン(注文送信の音)
「えっ、もう注文したの?」
「した。お前のも同じやつ頼んだよ」
「俺金持ってないんだけど」
「ワシあるからええよ」
「マジ!? 太っ腹じゃん!」
まさか路上であんなことしてるジジイに奢ってもらえるとは! 絶対金持ってないと思ってたわ! いや、あのラーメンもどっかで買ってきたやつなのか?
「お待たせいたしました〜」
はやっ!
「伝票失礼しますね〜」
安っ! 2人で840円!
「そいじゃ、いただくとするかの」
「いただきます」
2人揃って食べ始める。
「味噌汁からいこうかの」
こうして見ると普通の優しいおじいちゃんだな⋯⋯
「ブクブクブクブク」
味噌汁でブクブクうがいしとる!!!
キモ!!!!!!!!!!
「どうした? 食わんのか?」
「あ、いや、いただきますよ」
奢ってもらうのにキモいとか言えないからな。
よし、たまごかけご飯食べよ。たまごかけご飯用の醤油があるのか、すごいな。
あ、ジジイもたまごご飯食べてる。
んでお茶含んで⋯⋯
「ブクブクブクブク」
キモ!!!!!!!!!!
「ごくん」
キモ⋯⋯
「食わんのか?」
「⋯⋯食います」
それからもジジイは何を食べるにもお茶か味噌汁でブクブクしながら食べていた。咀嚼はしていなかった。もしかしてあれが咀嚼の代わりなのか⋯⋯?
「あー美味かった!」
キモかった。クチャラーよりキツい。
「さ、いくぞ!」
「どこに?」
「どこにってお前、そりゃ冒険だろ」
「冒険!?」
「お前は勇者なんだから」
「勇者!? ⋯⋯そうだ、そういえばそんな話してたわ⋯⋯」
「そういうことじゃ。ゆくぞ!」
「アイアイサー!」
ジジイは伝票を持ってレジへ歩いていった。
<ペイペイ!
まさかのPayPay。
「ご馳走様でした」
「ええよええよ」
良い人だ⋯⋯登場シーンと咀嚼方法がキモいだけで、めちゃくちゃ良い人だ⋯⋯
店を出た俺たちはすき家ストリートを抜け、森に入った。地理どうなってんだよ。
ちなみにすき家は森までに69店舗あった。




